元野犬の「福」に片思い? 「お外は楽しいよ大作戦」は根比べ
月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんは、3年前に保護犬「福」を迎えました。福は、小林さんにとって初めての犬であり、また元野犬でもあります。さて、小林家の保護犬ライフはいかに?
いとおしくて大好きで
今回からはじまる「とーさんの保護犬日記」では、元野犬・福(推定3歳女の子)と、とーさんことわたくしの日常についてつづります。福がとーさんの家にやってきた経緯は先日、こちらsippoに寄稿させてもらいましたが、驚いたことに、たくさんの人に読んでもらえました。いわゆるバズるっていうのでしょうか。そんな貴重な体験は感動ものでした。
そして、このたび、そのバズりのご褒美なのか?あるいは罰ゲームなのか??こちらに月1回保護犬ライフのレポートをさせてもらうことになったのです。保護犬を救うというより、保護犬に救われたとーさんの日記の始まりです。
とーさんはとにかく福がいとおしくて大好きで、いつも気になっています。一方の福はというと、犬語ができるとするならば「もう少しほっといてほしーんですけど」って感じなんですね。片思い?みたいなものでしょうか。
だって、ほら公園なんかいくと飼い主と犬が楽しそうに遊んでいたり、じゃれあったりしてるじゃないですか。とーさんだってそういうことがしてみたい、いつもそう思っているのですが、わが家の福は元保護犬、それも元野犬なのです。野犬というのは言うならば野生動物なのです。
とにかく気配に敏感。うちにやってきた時から福は犬らしくじゃれついてきたり、鼻を鳴らしてみんなに愛嬌を振りまいたりなんてことはまったくなく、とーさんたち家族の目にふれないように、常に息を潜めて部屋のすみっこで丸くなっている、そんな感じでした。もうね、本当に心を開かない。かたくな。人間のことを信頼していないオーラがばりばりに出てるんです。
首輪をつけるだけで一仕事
福が我が家に来て一番最初に手を焼いたのはお散歩に連れていくことでした。まずは首輪をつけさせてくれない。追いかければ、追いかけるほど逃げていく。見てませんよー、あなたのこと気にしてませんよーって顔をしながら、じりじり近づいていこうとしても、とーさんの魂胆はお見通し。もう毎日散歩に行く前にこの一仕事だけでぐったり疲れてしまうのでした。
そしてやっとこさ首輪とリードをつけてお散歩に出れば、今度は脱兎のごとく(犬ですが)駆け出して、暴れて、もうしっちゃかめっちゃか。道路の真ん中に飛び出していって、おまけにうんちまでして!タスケテーって感じなのです。
家に戻ってきて足の裏を見れば逃げ出そうとしてアスファルトに擦れた肉球に血がにじんでるのです。ふーーっ。釣りにキャンプにアウトドアスポーツが大好きなとーさんが描いていた、犬連れキャンプ、犬連れレジャーなんて夢のまた夢、何万光年先って感じです。
頭の中のイメージを塗り替える
日頃いろいろアドバイスをもらっているドッグトレーナーの先生によると、犬というのは普通であれば生後三カ月くらいまでに、いろんな体験をして社会化ができているそうなのですが、福の場合は生まれてすぐに巣穴から捕獲されてしまったのでまったく社会化ができてないことが原因とのこと。ちょっとした物音や気配におびえすぐにパニックになってしまうのです。そこで「外=楽しいこと」と、福の頭ん中のイメージを塗り替えてあげる必要があるというのです。
その日からとーさんの「福ちゃんお外は楽しいよ記憶塗り替え大作戦」が始まりました。その第一歩として毎朝、毎晩、ご飯を外で食べさせることにしました。やることといえば大騒ぎして首輪をつけて、マンションの外に連れて行ってフードを食べさせる…。
書いてしまえばたったこれだけのことなのですが、これが食べないんですよ。餌で釣られるなら簡単ですが、福は本当に警戒心が強く今でもちょっとでも気になることがあるとフードやトリーツに口をつけなくなるんです。頑固すぎる…
いったい福は何世代目の野良犬なのだろう、捕獲しようとする人間たちのわなをかいくぐり、生き抜いてきた知恵と本能がDNAにしっかりと組み込まれている、そう感じずにはいられませんでした。
へっぴり腰でフードに口を
ここからは根比べ。おなかがすけばどんなにいやでも食べるに違いない、ということで、毎日食べるまで1時間でも、2時間でも外でじーーっと待つ日々。2月の寒空が骨身にしみました。
そして、ついに…おそるおそる、そーっとへっぴり腰でドッグフードに口をつけてくれたのは作戦開始してから何日目だったでしょうか…うれしかった。
「えらいぞ、えらいよ福!!おめでとう!!!」
そう喜びを伝えようと、近づこうとしたら、途端に異常を察知した福はまた逃げ出してしまったのでした。とほほ。
そんなとーさんと福の日々はまだまだ始まったばかり。この先も前途多難なのでした。
◆小林さんが発行人を務める月刊誌『天然生活』のサイトはこちら
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