腎臓病の猫「ぽんた」が再び抗議 点滴の間じゅう叫び続けた 

 慢性腎臓病のぽんたが、はじめて動物病院での治療に「抗議の表明」をした日、血液検査の結果はあまり芳しくなく、血液中のリンの量が増えていた。

(末尾に写真特集があります)

 リンの含有量をおさえた療法食を食べさせ、リンを体外に排出させる吸着剤も毎日与えているのに、とがっかりした。しかし体重は落ちておらず、なによりぽんたは元気なので、しばらくはそのまま様子を見ることになった。

 ところが、それから数日経つと、ドライフードをあまり食べなくなった。ウェットフードをトッピングして出すと、なんとか1回分は完食するが、ドライフードだけだと数粒しか食べない。体調が悪くて食欲がない、という感じでもない。フードを保管している棚の前に座って私の顔をじっと見上げたり、シンクに伸び上がって「何かないか」という様子でのぞきこんだりする。

 療法食は、猫にとってはそれほどおいしいものではないらしい。たんぱく質と塩分を制限しているというから、わからなくはない。だしも塩気もきいていないみそ汁みたいなものだろうか。もともとは嗜好性の高いものを好むという猫が、味に面白みのない同じフードを毎日食べさせられ続けたら、飽きるのも無理はない。

「今日もほえるぞ」(小林写函撮影)
「今日もほえるぞ」(小林写函撮影)

 そこで、同じ療法食でも種類が変われば食べるようになるのではと考え、ペットグッズショップに出かけた。ぽんたがまだ食べたことのないメーカーの療法食を偶然みつけたので、少量サイズを1袋購入し、さっそく与えてみた。

 ぽんたは、食器をチャリンチャリンと鳴らしながら猛烈な勢いで食べきり、満足そうに顔を洗った。

 多少は味が目新しくなり、気分も変わったのか、ぽんたはそのフードをよく食べた。しかし2週間ほどたち、買い足した2袋目が半分なくなったころには、また食べ方がにぶってきた。今度は、ウェットフードをトッピングしてもあまり食べない。私は心配になり、1カ月後の定期検査を待たずに、ぽんたを動物病院に連れて行った。

 前回は点滴の際に院長先生に牙をむき、治療に支障をきたしたことから、エリザベスカラーの装着を余儀なくされたぽんた。だが、血液検査のときは問題ないはずだ。採血は一瞬で終わるし、看護師さんにしっかりと脚の付け根を押さえられてしまえば、抵抗はできない。

「このエリザベスカラー、ワンコ用なんじゃないの?」(小林写函撮影)
「このエリザベスカラー、ワンコ用なんじゃないの?」(小林写函撮影)

 今回、ぽんたを保定してくれるのは、初めて会う青年だった。新卒の獣医研修生かなと、私は思った。

 その青年がぽんたの脚を握るが、どこかぎこちない。先生がぽんたの後ろ脚を消毒し、針を刺した瞬間、ぽんたは「あーーーー!」と耳をつんざくような声を上げた。

 先生は緊張した様子でさっと針を抜いた。注射筒には無事、血液が採取されていた。

 続いて、点滴の準備だ。診察台から降りようと、からだをくねらせもぞもぞ動くぽんたを青年が押さえ、先生がエリザベスカラーを装着する。それでも立ち上がろうとし、「シャー」とか「あーうー」とかぽんたは騒ぐ。

 青年は無言ながらも必死で保定を試み、ぽんたのからだをがっちりと押さえ込んだ。私と、一緒に病院に来ていたツレアイは、かわるがわる頭をなでながら「ぽんちゃん、いいこでね、おとなしくね」と声をかける。

 点滴がはじまると、ぽんたは「うー」と低い声でうなり、やがて「あーあーあーあーあーーー!!!」と段階的に声のトーンを上げ、最後には悲鳴にも近いような高い声で叫び続けた。

 いつもは、先生と雑談をしながら穏やかに過ぎる5分間の点滴が、この日はひどく長く感じられた。叫び声は、待合室にも響きわたっているだろう。「気難しい猫ちゃんがいるのね」と思われているに違いないと考えると、身の置き所がなかった。

 背中から注射針が抜かれ、消毒が終わると、ぽんたは吐き捨てるような「シャーッ!」を発したが、キャリーバッグに入れられると噓のようにおとなしくなった。

「網戸の穴、修理しないと蚊が入るよ。俺が開けたんだけどさ」(小林写函撮影)
「網戸の穴、修理しないと蚊が入るよ。俺が開けたんだけどさ」(小林写函撮影)

 帰宅後、ぽんたは待ってましたとばかりにキャリーバッグから飛び出し、ローテーブルの下にもぐった。

「あの新人の先生、保定に慣れてなくて、無理に押さえられてぽんたは窮屈だったんじゃない?」

 と言うツレアイ。

 そうかもしれない、と私も思っていた。でも、点滴の注射針が刺さっていたところを、届かないのに必死でなめようとしているぽんたを見ながら、それだけではないような気がしていた。

【関連記事】 おとなしい腎臓病の猫「ぽんた」 この日初めて人間に牙をむいた

(次回は10月4日に公開予定です)

宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。

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猫はニャーとは鳴かない
ペットは大の苦手。そんな筆者が、ひょんなことから中年のハチワレ猫と出会った。飼い主になるまでと、なってからの奮闘記。
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