あえて成犬を引き取って一緒に暮らす 「穏やかで癒やされる」
ペットショップで買われるのは子犬や子猫ばかり。その一方で、保護された成犬や老犬を選び、引き取って飼う人たちもいる。むしろ歳をとった犬は穏やかで癒やされるという。
神戸市に住む田中さんは、子どもも巣立ち、いまは「もー」と「ジェイド」という2匹の元保護犬と暮らしている。
山中に遺棄された犬たち
2012年10月、六甲山で10匹ほどの犬が一度に遺棄されているのが見つかった。その中に1歳ほどのもーちゃんがいた。
田中さんは神戸市にある保健所で、犬の散歩や犬舎のそうじのボランティアをしていて、その犬に出会った。
「保健所の人に勧められて、うちに迎えたんですが、若かったせいかやんちゃで、家族には噛みついてくることもありました」
田中さんはそれ以前にも保健所から犬を引き取って飼い、看取った経験もある。犬種や性別、年齢に関係なく「みんな我が子のように可愛い」という。
そんな田中さんの温もりに触れ、もーちゃんも次第に人や先住の犬に馴れていった。いまでは田中さんが話しかける言葉も理解するようになったそうだ。
放浪していた老犬
田中さんは2018年3月、家で飼っていたメッタちゃんという元保護犬を亡くした。
ちょうどその頃、徳島市内を放浪していて保護されたのが、ジェイドくんだった。すでに推定13歳の老犬。友人の手をかりて、その日のうちに田中さんのもとにやって来たという。
「家に来た時は、ガリガリにやせていて、目やにがいっぱい。動物病院に連れていったら、フィラリア陽性、僧帽弁不全、前立腺肥大と診断されて、前立腺肥大は薬で良くなったのですが、慢性腎不全になったので、毎日、私が家で点滴していました」
ケアのかいあって、ジェイドくんは6キロだった体重が10キロに増え、まだ散歩もできるという。
田中さんがこれまで引き取った犬8匹のうち、もーくんを除く7匹はみんな老犬。晩年を一緒に過ごし、見送ってきた。もーくんと暮らした日々が心の支えになったという。
「老犬は病気を持っていることもあるし、家族に迎えてから、すぐに病気になることもある。マイナスのイメージがあるかもしれませんが、老犬って、いろんな経験をしてきているので穏やかで、癒やされます。たとえ病気を持っている子でも、穏やかに暮らすことができるんです。それに、成犬や老犬でも接し方によって変わるんです。保健所にいた子は苦労しているので、愛情を感じられて安らげる家が大好きでした。成犬でも家になじめるんですよ」
歳をとった成犬は保護されても、引き取り手がなかなか見つかりにくいのが現実だ。田中さんは「日本でも保護犬を引き取って育てる文化が根付いてほしいですね」と温かい眼差しを向けている。
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