認知症になった老犬と、寄り添い支える猫 2匹の“愛”の記録

   認知症になった老犬。その犬が大好きな猫は、介護をするように寄り添った――。インスタグラムで人気を博した2匹の生活をまとめたフォトブック『くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ』(辰巳出版)が発売された。その姿は見る者を温かな気持ちにさせてくれる。

(末尾に写真特集があります)

 著者は広島県在住の晴さん。登場する2匹は独身時代の晴さんが保護した飼い犬「しの」(メス)と飼い猫「くぅ」(オス)だ。

「しの」は2011年、路上を逃走している時に晴さんが発見し保護した。推定10歳以上。「くぅ」は翌年、子猫時代に保護した。2匹とも病気やけがをしており、当初はひどい状態だったが、晴さんが手厚いケアで快復させた。

手作りのサークルに入るくぅ(左)としの(辰巳出版提供)
手作りのサークルに入るくぅ(左)としの(辰巳出版提供)

大好きな老犬に寄り添う

   2匹は初め、庭の犬小屋と室内で別々に過ごしていたが、ある時、室内にいた「くぅ」が、屋外にいる「しの」を見かけて、一目惚れ。じっと見つめるなど、気にする様子を見せていた。

   晴さんの結婚を機に「しの」も室内飼いになり、「くぅ」と一つ屋根の下で一緒に生活するようになった。「くぅ」は「しの」の後をついて歩き、寄り添うようにして暮らした。

   だが、少しすると、「しの」は家具のすき間に挟まったり、円を描くようにぐるぐる歩いたり、認知症の症状が出はじめた。

   すると、「くぅ」は、大好きな「しの」を介護するようなしぐさを見せはじめる。

   弱った「しの」を背中や頭で支える。ぐるぐる回れば横にぴったりとくっついて誘導。「しの」のペースに合わせて、歩いたり止まったり。ひとりで動ける時は、そっと見守った。

しのに寄り添って歩くくぅ(辰巳出版提供)
しのに寄り添って歩くくぅ(辰巳出版提供)

犬と猫の「奇跡のような関係」

「くぅ」の行動について、晴さんはこう話す。

「“介護する”というようなことは、まったく想定していませんでした。寄り添って幸せそうに寝ているふたりの姿にはとても癒されましたし、食事介助の時、『くぅ』が『しの』のごはんを横取りする“ごはんドロボー”は、私を笑顔にしてくれました」

   認知症の進行とともに表情が乏しくなり、衰えていった「しの」だったが、「くぅ」が側にいるのがわかると、ふっと穏やかな顔になったという。そんな様子に晴さん自身、癒やされ、たくさんの写真で記録した。

くぅのぬくもりが一番の眠り薬(辰巳出版提供)
くぅのぬくもりが一番の眠り薬(辰巳出版提供)

   本書は発売2週間で重版。辰巳出版の本田真穂さんはいう。

老犬ならではの愛おしい姿やしぐさ、介護猫くぅちゃんが寄せる真っ直ぐな愛情、そしてこの奇跡のような関係をたくさんの人に読んでほしいです。動物は豊かな感情を持っていることが分かると思います。種の違いなど関係なく、ふたりの愛情はしっかりと伝わることを知ってほしいです

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『くぅとしの 認知症の犬しのと介護猫くぅ』
発行:辰巳出版
著者:晴
体裁:A5変型判、112ページ、オールカラー
定価:1200円+税
藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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