夜中に突然「あーうー」 元野良猫「ぽんた」尋常でない鳴き声

 セカンドオピニオンを受けたその日、午後の診療時間開始に合わせて再び隣町の病院に行くと、すぐに診察室に入ることができた。

(末尾に写真特集があります)

「1日に2度も来ていただいて、すみません」と恐縮している院長先生に、「いえいえ、こちらこそ、家で相談をして、やはり検査をしていただきたいと思いまして‥‥‥」と私は言い、キャリーバッグからぽんたを引きずり出して、診察台にのせた。

 先生はぽんたの腹部を触り、

「膀胱に尿がたまっているので、カテーテルを入れておしっこを採り、尿検査をしましょう」

と言った。

 尿道に管を入れて採尿するなど、考えただけでおなかの下がむずがゆくなってくる。ぽんたが嫌がって暴れるのではないかと心配したが、先生と看護師さんの手にゆだねられたぽんたは、おとなしくされるがままになっている。

「ふ〜。暑っついね」(小林写函撮影)
「ふ〜。暑っついね」(小林写函撮影)

 続いて、超音波(エコー)検査だ。診察台には、合皮素材の黒く細長いクッションを2つ横につなげたようなものが用意され、ぽんたは仰向けの状態で中央のくぼみに寝かされた。看護師さんに前脚と後ろ脚をがっちりとつかまれ、目をまん丸に見開いている。

「震えている、かわいそう。怖いよね、でも痛いことはないからね」

 と声をかける看護師さん。鳴きもわめきもしないぽんただが、目的も知らされず、次々と不愉快な行為を受ける身にとって、その恐怖はどれほどのものだろうか。

 超音波検査は、臓器の内部構造を見るために行う。正常な腎臓は、ソラマメに似た楕円形で、中は空洞が黒くぽっかり空いている。今、モニターに映っているぽんたの腎臓はゆがんでおり、空洞の様子もはっきりしない。

「腎臓が悪いことは間違いないですね。でも石や腫瘍は見当たらない。血液検査の数値が上がったのは、ほかの病気ではなく、慢性腎臓病が進んだからでしょう」

 超音波をあて、自分の内臓を見た経験は私には一度しかない。動物に対しても人間と同じような高度な検査をすることに驚き、感心した。それを口にすると、

「動物は、自分から“ここが痛い”と僕たちに伝えてはくれないから、できるだけ負担にならない範囲で検査をして、体の状態をみてあげることが必要なんですよ」

と先生は言った。そして

「はい、よく頑張りました、えらかったね、ぽんちゃん」

とぽんたの頭をなでた。

「暑けりゃ脱げばいいって?ほっといてくれ」(小林写函撮影)
「暑けりゃ脱げばいいって?ほっといてくれ」(小林写函撮影)

 尿検査の結果が出るまでには数日かかるという。今後の治療方法はそれから決めることになり、病院を後にした。

「とりあえず、検査だけでも」という気持ちで隣町の病院に戻ってしまったが、この流れだと、今後はここで治療を受けることになりそうだ。

 それで問題ないとは思うが、それでも、今まで通っていた病院が気になる。自転車で片道3分というのも捨て難い。この距離に比べると自転車で15分の隣町の病院は遠い。今回は1日に2往復したから特別だとはいえ、頻繁に通院することを考えると近いに越したことはない。

 それに、ぽんたは、保護した日と、その後にも1回、「片道3分」の病院のペットホテルに預けたことがあった。2回目は特にフードをよく食べ、排泄にも問題なく、看護師さんや先生にも愛想を振りまいていたと聞いた。

 今後また、出張などで家を留守にすることもあるだろう。慣れた病院に宿泊させたほうがストレスが少ないのでは、という気もしていた。

「お向かいさん、赤い車でお出かけだ」(小林写函撮影)
「お向かいさん、赤い車でお出かけだ」(小林写函撮影)

 それから数日が経ち、夏の終わりのある晩のことだった。ツレアイは出張で留守、私は一人、自室で仕事をしていた。ぽんたは、照明を落とした部屋の私のベッドの上で、丸くなっていた。

 夜中に突然、ぽんたが立ち上がり、「あーうー」と高い声で鳴いた。ベッドの上をしばらくウロウロしてから部屋を出て、今度は廊下で「あーうー」と尋常でない鳴き声を上げた。

 トイレに入ったらしい音が聞こえたので様子を見に行くと、用を済ませたぽんたが脚についた猫砂を払いながらトイレから出てくるところだった。そのまま部屋に戻るかと思いきや、くるりと向きをかえ、再びトイレに入って排尿のポーズをとった。

 恐る恐る、ぽんたが用を足した跡をのぞく。丸い尿の塊の上に赤いシミがついていた。血だった。

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(次回は4月26日に公開予定です)

宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。

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この特集について
猫はニャーとは鳴かない
ペットは大の苦手。そんな筆者が、ひょんなことから中年のハチワレ猫と出会った。飼い主になるまでと、なってからの奮闘記。
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