愛猫の健康のために、自宅でもオシッコの確認を習慣化しよう
猫と暮らしている飼い主さんなら、猫が泌尿器系の病気になりやすいことを聞いたことがあるという人もいるでしょう。しかし、猫は不調を隠しがちだったり、病院へ行くのが苦手だったりして、なかなか動物病院を受診しないのも事実。そこで、キャット・フレンドリー・クリニックにも認定されているひがしやま動物病院の東山哲先生に、飼い主さんに気をつけて欲しいことを伺いました。
シニア猫の3匹に1匹は腎臓病に!
猫は祖先が砂漠に暮らす動物だったため、少ない水分を無駄なく利用できる体の仕組みになっている。そのため、濃い尿を出すが、それに伴って尿に結晶ができやすかったり、腎臓に負担がかかったりするなど、泌尿器系の疾患を起こしやすい。
「猫の泌尿器系の病気といっても、腎臓病のほか、腎結石、尿管結石、尿道閉塞(へいそく)、感染症など様々です。高齢期に入ったら腎臓の機能が落ちていく猫も多く、高齢期の猫の3匹に1匹は腎臓病になると言われています。腎臓の病気は、飼い主が気づかないうちにサイレントに進行していく病気で、高齢の猫は勿論、若い猫でも注意が必要です」(東山先生)
人は排泄物(はいせつぶつ)を自分の健康のバロメーターの一つにするし、親は赤ん坊のオムツを交換する時に、オシッコやウンチの状態を気にするはず。一方で、猫のオシッコやウンチをチェックしている人は少ないという。
「まずは猫が普段どんなスタイルでオシッコをしているか、知っておくことが大切です。特に多頭飼いの場合には、どの子がどのトイレを使っているか、どんな習慣や方法で、また、どんなオシッコをしているのかを把握することが、病気の発見にもつながります」
量・色・ニオイなど変化があったら病院へ
自宅でオシッコをチェックする際は、朝一番のものがいいという。健康なオシッコの色は、一般的にうすい黄色。個体差もあるので、普段の状態を把握したうえで、普段と比べて、色が薄かったり、赤みがかっていたり、また、状態が濁っていたり、キラキラしたりしているなどが見られたら、病院での診察が必要だ。また、量やニオイがいつもと違うと問題があるので、変化に気づけるように普段のオシッコを把握しておきたい。
「動物病院での尿検査は、膀胱穿刺(ぼうこうせんし)かカテーテルで行います。病院での尿検査のハードルは高いと思われがちですが、それは誤解です。私たちの病院では、猫の負担が少ないように、膀胱穿刺なら猫をキャリーに入れたまま十数秒で終わらせることもできます。また、自宅で採尿したものを持ってきていただいても構いません。その場合はできるだけ新しい尿(理想はオシッコの後30分以内)をお持ちください」と東山先生は言う。
自宅で採尿する際は、おたまや、棒の先にオシッコを吸い取るスポンジがついている専用の道具などを猫のお尻と砂の間に入れてキャッチしたり、オシッコをはじくタイプの砂を使って、スポイトや針なしの注射器で採ったりする方法などがある。
ただ、猫によっては嫌がることもある。その点、システムトイレの利用は便利だ。オシッコを吸収するシートやマットを引き出し部から外しておけば、簡単にオシッコを採ることができる。ただし、砂の交換時期など砂やトイレの汚れが少ないときにすること、また、砂がオシッコの成分に影響するケースがあるので、成分に影響しない砂を選ぶことが大切だ。
猫の飼い方についての認識を改めよう
猫は体調の悪さや症状を隠しがちな動物。そのため「おかしい」と気づいた時には症状が進行して深刻になっているケースも少なくない。
東山先生は指摘する。「どんなに若くて元気な猫でも、最低でも半年に一度は動物病院で健康チェックを受けましょう。また、オシッコの変化によって判ることは、沢山あります。年齢に関わらず、飼い主さんがオシッコに対する意識を高め、チェックを習慣化することも重要です。例えば、システムトイレを利用している場合には、砂を替えるタイミングで必ずチェックするというのは1つの方法でしょう。猫ちゃんを病院に連れてゆけなくても、オシッコだけでも病院に持参し、普段から獣医さんとのコミュニケーションを定期的にとることが大切なのです」
- 東山哲
- 山口大学農学部獣医学科卒。2006年に東京都杉並区にひがしやま動物病院を開設。JSFMねこ医学会副会長、CFC理事、キャットフレンドリー研究会 代表、日本獣医腎泌尿器学会 会員。「猫にやさしい動物病院」の普及に努めている。
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