犬猫はこの病気で死に至る 腎臓病/犬で第3位、猫で第2位

原因と対処法を学ぶ

犬や猫の死因の多くを占めるがん、心臓病、腎臓病。
ほとんどの飼い主が直面することになる、死に至る病――。
原因と対処法を知っておけば、予防や症状を抑えることも可能だ。
長く健康寿命を保つために。いざという時の覚悟をするために。
それぞれの病気の専門家から、学んでおこう。
文=石原美紀子


 

尿検査で気づける病気 食事に気をつけ早期治療を

 川崎市に住む女性(47)が飼う、おっとりした性格の6歳の猫トラジが、「ギャッ、ギャー」と、トイレで悲鳴をあげた。

 2年前の冬のことだ。トイレでオシッコの体勢は取っているのに、オシッコが少ししか出ない。尻尾をけいれんさせて、尋常ではない痛がりようだ。

 動物病院が開いた午前9時、トラジを連れて行った。

「下部尿路疾患ですね。『尿路結石症』で、石が尿道に詰まっています。すぐに措置しないと、尿毒症で死ぬ怖い病気です」

 獣医師はすぐに手術にとりかかった。血液検査と尿検査をすると、トラジは「急性腎不全」になってしまったことがわかった。慢性腎不全に移行しないよう、しばらく投薬と通院による経過観察が必要だという。腎臓病の怖さを思い知った。

 腎・泌尿器系疾患は犬の死因の第3位(7%)、猫の死因の第2位(23%)となっている。死につながる主な腎臓病には、トラジがかかった尿路結石症や急性腎不全のほか「慢性腎不全」「たんぱく漏出性腎症」などがある。

(図7)シュウ酸カルシウム結晶
食事から過剰に摂取したミネラルや、代謝異常により排泄されるミネラルが増加して濃くなった尿が膀胱内に長時間溜まると結晶化し始める

 

尿路結石症と急性腎不全

 まず尿路結石症だが、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)のどこかに小さな石ができる病気だ。石が尿路に物理的な刺激を与えて炎症を起こしたり、尿管や尿道などに詰まって排尿が困難になったりする。

 猫の下部尿路疾患は年齢に関係なく発生する。オスは症状が重症化する危険性が高く、若い犬や猫でも注意が必要だ。

 症状は、どこに石ができるかで変わる。尿管や尿道に石が詰まると死んでしまう場合もあり、緊急性が高い。

 トイレで排尿の体勢を取っているのに尿がほとんど出ない、排尿時に痛がって鳴くなどの症状がある場合、すぐに動物病院へ連れて行こう。病院で石などを取り除いた後は、症状に合わせて投薬治療や食事療法を続けることになる。

 何らかの原因で腎臓の機能が75%以上失われた状態が「腎不全」だ。腎不全は、完全に治る可能性がある急性腎不全と、臓器移植以外では完治が望めない慢性腎不全の二つに分けられる。

 急性腎不全のほうは、早期発見が何より大切。措置が遅れると、深刻な健康障害を引き起こしたり、慢性腎不全になって生涯の通院が必要になったりし、救命率も下がる。

 犬は特に、ブドウやレーズンに要注意。これらを食べて急性腎不全を発症するケースがよく見られるという。

 腎・泌尿器系の疾患が死につながる割合は、猫のほうが高い。そのうち猫が最もかかりやすいのが、慢性腎不全だ。

(図8)シュウ酸カルシウム尿石
シュウ酸カルシウムが結晶化し始めてからさらに時間が経つと、結晶が集まって尿石となる。カルシウムを多く含んだ食物を摂ると尿のカルシウム濃度が増加するため、シュウ酸カルシウム尿石ができやすくなる

 

症状のないまま進行する慢性腎不全

 5、6歳を過ぎた猫は、ほとんどが腎臓に何らかの問題を抱えていると考えていい。腎臓の働きが悪くなると慢性腎不全になるが、飼い主からわかる症状がないまま、ゆっくりと進行するのが怖いところだ。

 初期症状としてはよく尿をし、よく水を飲むようになる。進行するとフードの好みが変わり、トッピングだけ食べるなど「選択的食欲不振」を起こす。そのうち食欲が完全になくなり、嘔吐や下痢、体重が減って毛づやが悪くなるなどの症状が見られるようになる。そうなったときにはもう慢性腎不全となっているケースがほとんどだ。

 慢性腎不全になってしまうと完治せず、投薬などによる対症療法が一生続く。慢性腎不全になる前の段階で異常に気付き、治療を開始するのが大切だ。

 腎臓の状態は、尿検査の値に表れる。少なくとも1年に1回は尿検査をすれば、慢性腎不全となる前に腎臓疾患を発見できる可能性が高い。

 それでも慢性腎不全と診断されてしまったら、腎臓の機能が今以上に低下しないよう、長期的な治療を続けていく必要がある。

 すべての慢性腎不全に共通する治療法が、食事療法だ。血中にリンがたまりやすい体質になるので、獣医師の指導のもとでリンの摂取制限をし、低たんぱく・低ナトリウムの腎臓病管理用フード(処方食)を与える。

 そのほかの腎臓病では、犬に多いのがたんぱく漏出性腎症。たいした症状が見られないのに腎機能の低下が早く、わずか数カ月で慢性腎不全に陥ることがある。尿検査をすれば早期発見が可能という。

(図9)ストラバイト尿石
犬、猫ともに最も一般的な膀胱や尿道の尿石で、リン酸アンモニウムマグネシウムが結晶化したもの。大きな結石は外科的に摘出する。再発を防ぐため特別療法食などで尿を酸性にするが、酸性下だとシュウ酸カルシウム尿石ができやすくなる

 

(図7〜9は日本獣医生命科学大学講師 宮川優一氏提供)

猫の死因

1位 がん32%

2位 腎・泌尿器系疾患 23%

3位 心臓疾患 9%

4位 糖尿病 6%

 中年齢以降の発症が多いが、若齢時に見られることもある。病状が進むと、様々な合併症を起こすことがある。初期には症状があまりないが、多飲多尿が見られるようになる。食欲があるのに体重が減少する場合もある。

5位 伝染性腹膜炎 5%

痛みを示すことが多く、進行するとショック状態から虚脱状態に陥る。対症療法として輸液、抗生物質の投与、ショックの治療を行う。

犬の死因

1位 がん 47%

2位 心臓疾患 12%

3位 腎臓疾患 7%

4位 肝臓疾患 4%

 慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝臓病、急に肝臓の機能が維持できなくなる急性肝不全などがある。症状は原因や進行の程度によって異なるが、共通して、食欲不振や抑鬱などが見られる。急性肝不全の場合はさらに嘔吐や下痢、発熱なども。

4位 てんかん 4%

 発作的に繰り返される全身のけいれんや意識障害を主な症状とする脳疾患。前兆として、落ち着きがなくなる、一点を見つめる、口をもぐもぐとさせる、感情が不安定になるなどの症状が見られる。抗てんかん薬を毎日投与することで発生を抑えることができる。

各疾患の説明は『イヌ・ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版』を基に作成。
死因データの出典はMorris Animal Foundation

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