「あの猫、みーって名前だと、僕たち『みーちゃんはーちゃん』になっちゃうよ」(小林写函撮影)
「あの猫、みーって名前だと、僕たち『みーちゃんはーちゃん』になっちゃうよ」(小林写函撮影)

先住猫「はち」と保護猫「みーちゃん」 穏やかで順調な滑り出しを見せたトライアル

 愛猫「はち」の同居猫候補、推定9歳の三毛猫「みーちゃん」を保護団体B会でみつけ、トライアルを開始した。初日、みーちゃんを入れたケージを覆っていた布がずれていたことで、図らずとも2匹は顔を合わせることになってしまった。

 お互いが警戒心や敵対心をむき出しにし、シャーシャーと威嚇し合うことを覚悟していた。だが2匹は、ケージ越しに静かに鼻と鼻をくっつけただけだった。これは「鼻チュー」または「鼻キス」と呼ばれる行為だ。

(末尾に写真特集があります)

トライアル初日

 インターネットで検索すると、猫同士が鼻をくっつけるのは「相手の臭いをかぐことであいさつしている」「情報収集をしている」「相手に対して敵対心がないということを表現する行為」などと出てくる。

 私は、あまりにも穏やかな対面に拍子抜けした。同時に、幸先がいいぞとうれしくなり、すぐにグループLINEでB会の人たちに報告。やはり、初対面でこのように友好的なケースは珍しいらしい。

 しかし、ここで調子にのってはいけない。私はケージに布をかけなおして整え、はちを私の部屋に閉じ込めて、近所に買い物に出た。

 帰宅してみーちゃんをそっと見に行く。相変わらずケージの床にうずくまったままだ。朝からほとんど食べていないらしいので、大好物だというペースト状のおやつを差し出すが、そっぽを向かれてしまった。

 夜になってもみーちゃんはフードに口をつけず、排泄もしなかったが、「まだ初日だし、緊張しているのだろう」とB会の人たちに言われた。できるだけそっとしておくことにし、リビングの扉は閉めてはちが入れないようにし、床についた。

 夜中もみーちゃんはおとなしく、夜鳴きをしている様子もなかった。

「みーとかいう猫より、遊びは僕が上手だなきっと」(小林写函撮影)

 翌朝、起きてすぐにケージをのぞきに行く。トイレを使った形跡があり、水も減っていて、ドライフードを入れた器は空になっていた。

 みーちゃんはケージの2階に上がり、クッションの上に座っていた。昨日と比べるとだいぶ緊張はほぐれたようだ。香箱を組んでいるみーちゃんを撮影し、B会の人たちに送る。

関係は良好そうな2匹

 この日、私は自室で仕事をしながら、ときどき、みーちゃんの様子を見に行った。

 顔を見せるたびにリラックス度が増すようで、やがて小さく口を開けて「ニャア」とあいさつしてくれるようになった。思い切ってケージの扉から手を入れてなでてみると、目を細めて気持ちよさそうにする。

 私の仕事中、はちはリビングに入れないようにしていたが、私がみーちゃんのところに行くと必ずついてきた。ケージの前で尻尾を立て、「ニャア」と繰り返し鳴く。最初は黙っているみーちゃんだが、はちの「ニャア」がしつこくなると「シャー」と応酬する。

 しかしはちは頓着せず、すわってみーちゃんをながめる。ときに2匹は鼻チューをすることもあり、険悪なムードはない。

「茶白の変な猫いるから、当分ここから出る気はないわね」(小林写函撮影)

 3日目の朝は、トイレの砂が激しくかかれていた。スコップですくうとコロンとした健康そうな黒いブツが現れた。家に来て、初めての排便だ。

 みーちゃんは機嫌よさそうに鳴いてあいさつ。フードも完食してあり、試しにウエットフードをスプーンにのせて差し出すと、ペロリと平らげた。

 3日目にしてすでに家の雰囲気には慣れたようだ。ときおりケージにゴツンゴツンと頭をぶつけたり、格子の間から手を出して、覆ってある布を引っ張ったりする。

 はちと対面させても問題なさそうだし、日中は布をはずすことにした。

“うちの子”への期待は高まる

 みーちゃんはやがて、はちがケージに近づくと、ケージの2階から床に飛び降りてくるようになった。「ニャーオ」と搾り出すような声で鳴き、尻尾を立て、ケージにゴツンゴツンと頭をぶつけたり、からだをこすりつける。

 この動画をB会の人たちに送ると、「みーちゃんが誰かに甘えるときの鳴き方と行動」とのこと。「はちくんに甘えているのかも」ということで、2匹の相性への期待が高まる。

 4日目の朝、リビングに行くと、みーちゃんはケージに頭をぶつけながら、さかんに鳴いていた。空になっていた器にフードを盛ると、すぐに食べはじめた。ご飯の催促だったようだ。

「あの猫いつまでここにいるつもりなんだろう」(小林写函撮影)

 この日、私はリビングで仕事をし、はちも自由にさせて様子を見た。みーちゃんは私たちの存在を気にすることなく食事をし、排泄をし、爪もといだ。屋外の様子も気になるようで、ケージの角に顔を押し付けるようにして、窓の向こうに目線を送っている。

 ケージの横には、窓に面してチェストが置いてある。はちがそこにのぼっていると、ケージごしではあるが、2匹が仲良く並んでいるようにも見えてうれしくなった。

名前を決めたが…

 その日の夜、ツレアイと私は、みーちゃんの新しい名前について話し合った。

 はちとの相性も悪くなさそうだし、トライアル期間が終わったらうちの子になるに違いないと思ったからだ。最初はみーちゃんに対して警戒した様子だったツレアイも、彼女の環境適応能力の高さや、夜鳴きもせず、おだやかな性格であるらしいことを気に入ったようだった。

 名前は「ハナ」に決まった。この名がいいと言い出したのはツレアイだった。黒、白、茶色の三毛の色が三色団子のようだが、「団子」ではかわいそうなので「花より団子」から連想したという。ただ漢字だと少し気取った感じもするので、コメディアンの「ハナ肇」の名からアイデアを得たそうだ。

 みーちゃんあらためハナは、ケージの中で仰向けになって昼寝をするまでになった。

 しかし名前を決めたこの日から、はちの様子がおかしくなってきた。

(次回は2月16日公開予定です)

【前の回】保護猫「みーちゃん」のトライアル初日 先住猫「はち」との初対面は思わぬ形に

宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。
著書にsippo人気連載「猫はニャーとは鳴かない」を改題・加筆修正して一冊にまとめた『ハチワレ猫ぽんたと過ごした1114日』(河出書房新社)がある。

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この連載について
続・猫はニャーとは鳴かない
2018年から2年にわたり掲載された連載「猫はニャーとは鳴かない」の続編です。人生で初めて一緒に暮らした猫「ぽんた」を見送った著者は、その2カ月後に野良猫を保護し、家族に迎えます。再び始まった猫との日々をつづります。
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