ひとめぼれで迎えたシュナウザーの子犬 四六時中かみつくピラニアボーイで生傷たえず

足にもガブガブ! ピラニアボーイ時代(お母さん提供)

 遊べば手をかみ、座れば足をかみ、動けば追いかけてきて服のすそにかみつく。ひとめぼれしてお迎えした子犬は、四六時中かんでばかりいる「超かみ犬」だった。ちゃんと育てなきゃと決意した家族は必死にトレーニングに励んだが……。

 UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の激アツ店長こと高橋信行さん、中目黒の駅前で問いかける。

「愛犬のために『よかれ』と思ってやっていることが、愛犬を混乱させていない?」

(末尾に写真特集があります)

子犬ってこういうもの?

「お迎えするなら今しかない!」

 幼いころから犬と暮らしたかったが、住宅事情などでかなわなかった。条件さえそろったら夢を実現しようと、実家を離れてからはペット可の物件を選んできた。保護犬をとも考えたが、独身でフルタイムで働いているため譲渡してもらうのは難しいだろう。そう考え、時間を見つけてはペットショップをのぞく日々。

 そんな中、世界をコロナ禍が襲った。仕事はリモートになり通勤する必要がなくなった。まだまだこの状況は長引くだろうと考えたお母さんは、「この機会を逃したくない」と、長年の夢のために動く。

 そして訪れたショップ。店内に足を踏み入れた途端、視線を感じた。1匹の子犬がずーっと目を合わせてくる。「ひとめぼれでした」とお母さん。

ひとめぼれも納得! のかわいさ(お母さん提供)

 白いミニチュアシュナウザーの男の子は、月齢2カ月を迎えたばかり。まだ1キロにも満たず、「体は小さくて、顔がショボショボ。そんなところもかわいくてかわいくて」。2泊3日のトライアルができるというので、必要なグッズなどを借り受け、自宅に連れ帰った。お母さんはその日のことを懐かしそうにこう振り返る。

「体は小さいのに、今思うと初日から大物感を発揮していました」

 家に来て30分でうんちをし、ごはんもバッチリ完食。好奇心旺盛で、おびえることもなく家の中を探検し、夜はケージの中で夜鳴きもなくグッスリ。ほえも一切ナシ。「なんて手がかからない子なんだと驚きました」

 トライアル終了後に正式に契約し、晴れて「うちの子」に。子犬は「シュトーレン」と名付けられた。シュトーレンとはクリスマスを飾るドイツのお菓子。「シュナウザーはドイツの犬種だし、パウダーシュガーで真っ白な見た目もピッタリ!」とお母さんは語る。

 新しい環境に臆することなくすぐに慣れたシュトーレンくんだったが、お母さんには一抹の不安が。とにかく、よくかむのだ。「抱っこが嫌いでいやがってガブガブ。遊んでいるとおもちゃじゃなくて手をガブっ! 『ピラニアボーイ』と呼んでいました」と笑うものの、初めての子犬育てで「正解」がわからない。「子犬だからこんなもの? でもちょっとかみすぎじゃない? と不安になりました」。不安は的中、シュトーレンくんのかみぐせはどんどんエスカレートしていった。

 責任感が強く、初めての犬育てで気負いもあったお母さんは、「しっかりとしつけしなくちゃ」という思いに駆られ、インターネットや動画配信サイトで検索しては片っ端から試してみた。「ダメ!」「やめて!」と大きな声で注意する、「痛い!」と言ってその場を立ち去る、おもちゃで気をそらす、ペットボトルに音の鳴るものを入れて驚かせる……。

「やりたくなかったけれど、指をのどに入れたことも。シュトーレンは『なにすんだよ!』と刃向かってきて逆効果。もう二度とやりませんでした」

ふわふわ真っ白でお菓子みたい! でも、そのかみ癖は甘くない……(お母さん提供)

がんばったけれど、自分だけの力では無理

 家に来てから1カ月、パピー教室に通い始める。週2、3回通い、週末にはお母さんも一緒にトレーニング。「名前を呼んで来たら、ほめておやつ。アイコンタクトができたら、注意したことを聞けたら、とにかく『ほめて、おやつ』というトレーニングでした」とお母さん。20回以上通ったが、「基本的なことはできるようになったものの、かみはなくなるどころか、体が大きくなるとともにアゴの力も強くなり、甘がみではすまされない本気がみに。私の手は血だらけになってしまいました」

お母さんの手は生傷が絶えず……(お母さん提供)

 お散歩にも苦労した。まずハーネスやリードをつけるのにひと苦労。嫌がる勢いでガウっとかみつこうとする。なんとか出かけても、シュトーレンくんは自分が行きたい方向に勝手に進み、コントロール不能。「トレーニングで習ったようにおやつを使ってみたけれど、まるで聞く耳を持たなくて……」

 遊べば手を、座っていれば足を、動けば洋服のすそをガブガブ! ケージから出ている間は四六時中かみつかれ、お母さんはどんどん追い詰められていく。「正直、発狂しそうでした」。自分だけならまだしも、実家に連れていくとシュトーレンくんはお母さんの母親もロックオン! このままでは家族や友人に会わせることもできなくなる。

「自分だけの力では無理」。心が折れかけたお母さんがネットを検索する中で見つけたのが、高橋店長のブログだった。「私と同じように子犬育てに悩んでいる家族がいて、みんながんばって乗り越えている。望みがあるかもしれないと思えたのです」

 そしてUGのカウンセリングへ。家に来てから4カ月余り。シュトーレンくんはまもなく月齢6カ月を迎えようとしていた。

ガブガブガブガブ……。四六時中かみまくられる(お母さん提供)

後編につづく(10月30日公開予定) 

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高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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