愛犬との別れを乗り越えようやく迎えたトイプー まさかの爆裂娘で育犬ノイローゼに!
5年間続いた連載「だから犬って最高だ!」は今回のエピソードで幕を下ろす。そもそもなぜこの連載が始まったのか? きっかけは、筆者である私自身が育犬ノイローゼに陥り、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のもとに駆け込んだ日にさかのぼる。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「なぜ目の前のこの子をちゃんと見ない? 目を覚ませ!」
深い喪失感と夫の決断
愛する娘・トイプードルのぷりぷりは11歳半で虹の橋を渡った。脂肪織炎という自己免疫疾患との闘病が続いていたある日、突然発覚した悪性リンパ腫。病気がわかってからわずか2カ月、あっという間にぷりぷりは私たちのもとから天国に駆け抜けていってしまった。
穏やかで思慮深く、まな娘でありながら、いつも優しく寄り添ってくれる母のような存在だった。こんなに悲しく、さみしく、つらい経験と喪失感は、これまで生きてきて味わったことがない。テレビにワンコが映ると慌ててチャンネルを変え、街で見かければ目をそらして逃げた。電車の中では突然涙が止まらなくなった。
そんな私に対し、夫はまったく違う方向を見ていた。ぷりを失って1カ月も経たないうちに、命日の日に生まれたトイプードルの女の子を探し始めたのだ。「ぷりちゃんがどこかで生まれ変わってるかもしれない」。ちなみに夫は、「人生一回こっきり。今の人生を楽しく生き切るぞー」という、スピリチュアル要素皆無の超現実主義。その夫が「生まれ変わり」なんていう言葉を使ったことにひどく驚きつつ、「もう二度とあんな思いはしたくない。私は無理だから」と言い続けた。
「運命の子」との出会い
そんな日々が半年ほど続いたある日、夫が興奮して電話をかけてきた。
「見つけた! ぷりちゃんにそっくりな『運命の子』を!」
送られてきた写真には、確かにどこかぷりぷりの面影を感じさせる子犬が。命日ではないが、夫と誕生日が同じで、そこに運命を感じたようだ。
それまで夫が見せてくれたほかの子犬の写真では感じなかった「何か」を感じ、心が揺れた。そして、それまでは誘われても断固として子犬を見に行くことはなかったが、今回は思い切って会いに行くことに。
ショップに来たばかりというその子犬は、抱っこするとちっちゃくて温かかった。ぷりぷりのパピー時代を思い出し、気づいたら涙がポロポロ。ただ、写真でぷりに似ていると感じた「しおらしさ」みたいな雰囲気はまったくなく、私の顔まで登ってきてペロペロ攻撃(笑)。どうやら夫が最初に会ったときは移動で疲れておとなしかったようで、その様子がぷりに似て見えたようだった。
かわいい。でも、まだ心の準備ができてない。「この子はすぐ売れてしまうでしょう」というショップの人の言葉に、考える時間がほしいと内金を入れて店を後にした。ぷりぷりは知り合いのツテでわが家にきた子だったが、育てる中で保護犬の存在や実情を知り、ペットショップから迎えることにちゅうちょもあった。
私の気持ちが決まらない中、夫は自宅からは車で1時間ほどかかるショップまで毎日せっせと通い、子犬に会いに行った。写真や動画を見ていると、ぴょんぴょん跳ね回り、まるでゼンマイ仕掛けが壊れたおもちゃのよう。その無邪気な姿に、久しぶりに犬を見て笑うことができた。
2019年夏。わが家の「次女」として迎えたトイプードルの女の子は「もぐ」と命名。長女のぷりぷりが子犬のころ胃腸が弱く、食べることで苦労したことから、「ごはんをもぐもぐいっぱい食べて健やかに育ってほしい」という願いを込めた。
爆裂娘「もぐ」
もぐはひとことで言うなら「爆裂娘」。ケージから出すと走りっぱなし。スマホのカメラが追いつけないほどのスピードで駆け回り、当時の写真はどれもブレブレ(笑)。無邪気で怖いもの知らずだが、興奮しやすく、興奮MAXになると「うきゃー!」と叫び、その勢いで私たちの手足にガブっ! 15~30分遊ばせたらケージに入れて休ませたが、最初のころこそ1、2時間は寝てくれたものの、日を追うごとにその時間がどんどん短くなり、気づけば15分もたたずに目を覚まし「出せ出せ!」。
トイレ、アイコンタクト、おすわりなど基本的なトレーニングも始めたが、まったく落ち着きがないもぐの意識をこちらに向けることは至難の業だった。子犬のころのぷりぷりは、トイレもおすわりもすぐに理解した。「なんで同じように接しているのにもぐはできないんだろう……」。ぷりを育てた経験が、まるで役に立たない。
フリーランスという職業柄、取材に出かける以外は自宅で仕事をしている。毎朝夫が出勤したあとは、もぐと二人きり。動き出すと止まらない、興奮すると大騒ぎ、なかなか寝てくれず通称「ねむイラ(眠くなるとイライラ)」を発動する。これが一日中、無限ループで続く。疲労と睡眠不足、食事はもぐが寝ている一瞬のすきにキッチンで立ち食いし……。そんな日々に心も体も削られていった。「大丈夫だよ」「元気が一番。問題ないよ」と動じないおおらかな夫に、心底イラッとした。
かわいい。愛したい。ぷりぷりを病魔から守れなかった分、もぐはどんなことがあっても守らなきゃ――。強い思いとは裏腹に、「この子を育て切れるのだろうか?」という不安がふとよぎる。そんな自分に猛烈な自己嫌悪を覚え、ますます落ち込んだ。
気づけば「育犬ノイローゼ」と打ち込み、インターネットを検索していた。たどり着いたのが、高橋店長のブログだった。手に負えない子犬に苦悩し、店長の前で泣いてしまう飼い主さんに自分の姿を重ねた。この人に相談してみよう。でも「クレージーでヤベー店長」などと自分で書いちゃうあたり、どんな人なんだろう……。一抹の不安も感じながら、カウンセリングを予約。もぐがわが家にやってきてまもなく1カ月というときだった。
初めて会った店長は、お世辞にも愛想がいいとは言えなかった(後から聞くとちゃんと理由あり。後編にて)。これまでの経緯、悩みなどをまとめた紙を渡すと、店長はほとんど目を通さず、ため息まじりに私に向かってこう問いかけた。
「お母さん、この子に一体なにをしたんですか?」
後編につづく(2月24日公開予定)
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。
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