三本脚のボーダーコリーの子犬を迎えたが… ハイパーすぎて大丈夫?

ふわふわコロコロ!(お母さん提供)

 元気いっぱいのボーダーコリーの子犬。無邪気に遊ぶ姿がかわいいが、実は三本脚。それを感じさせないほどのパワーに、お母さんは手をやき、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長は危機感を感じ……。

 激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!

「頭がよくてスーパータフ。ボーダーコリーの子犬、なめたらあかん!」

(末尾に写真特集があります)

障がいのある中型犬を迎える

「え!? 本当に飼ったの?」

 知り合いの女性がボーダーコリーの子犬をお迎えしたと聞き、高橋店長は驚いた。女性はこれまでにチワワやトイプードルなど何匹もの犬を育ててきた経験があり、この時も1匹のチワワと暮らしていた。店長が驚いたのは、その女性にとって初めての中型犬ということもあったが、そのボーダーコリーにはある事情があったから。

 ボーダーコリーの男の子の名は「めろー」。お母さんとめろーくんの出会いは、昨年3月のこと。「ブリーダーのところで前脚に障がいのある子犬がいると聞き、急いで友人と一緒に会いに行きました」とお母さんは振り返る。月齢2カ月だっためろーくんは、とにかく明るくて元気いっぱい! 人懐っこく、お母さんたちのところに尻尾フリフリで甘えてきた。「コロコロで、めちゃくちゃかわいかった!」とお母さんは目を細める。しかし、右の前脚が短く、先っぽは肉片のような状態。生まれつきの障がいだった。

「ブリーダーさんも『買い手がつかないから早く連れて行ってほしい』という感じで、もしかしたら健常な子犬に比べてあまり手をかけてもらっていないのかも……と。このままだと心配だからと、友人がとりあえず引き取ることに。でも翌日、やはり自分のところで育てるのは難しいと連絡が入り、めろーは私のところにやってきたのです」

 実は、お母さんはその少し前、2匹いた愛犬のチワワの1匹を見送ったばかりだった。落ち着いたら次の子を、とは思ってはいたものの、「ボーダーコリーは考えたこともなかった」と振り返り、こう続ける。

「これまで何匹も育ててきた経験があるんだからなんとかなる、と、どこか自負があったのです」

「せんぱーい!」「……」。先住犬のチワワさんと(お母さん提供)

元気だから、問題ないかな?

 おうちに来たばかりのめろーくんは、やはりブリーダーできちんとケアされていなかったのか、健康状態があまりよくなかった。「おなかに赤いブツブツがあり、下痢も続きました」とお母さん。しかし、三本脚であることはほとんど感じさせないほど、めろーくんは元気! 有りあまるエネルギーを発散させようと外に連れ出した。

 ドッグランなど自由にできるところでは楽しそうに駆け回るものの、街の中のお散歩ではガンとして歩かない。「『お散歩? なんでボクがそんなことしなきゃいけないの? 意味わかんない!』みたいな顔をしていました」とお母さん。ところが、車やバイク、自転車が通ると追いかけて飛び掛かろうとする。「動くものに反応する、牧羊犬であるボーダーコリーの本能なのかな、と」

 また、甘がみがひどかった。「このまま『かみ犬』になったらどうしよう、と」。さらにケージに入れるとひどく夜鳴きをし、閉口した。仕方なく、仕事部屋の中でめろーくんをフリーにして寝かせることに。なかなか大変なめろーくん。「でも、あまり危機感を感じることはなかったですね」とお母さん。

「でもお散歩は意味がわかりませーん!」(お母さん提供)

成犬になる前に…

 そんなこんなでお迎えから1カ月あまりが経ったころ。お母さんとめろーくんは店長と先輩のトレーナーと会うことに。クレートの中でずっとほえまくっていためろーくんに「これはヤバいかもと、僕は危機感を覚えました」と店長は振り返る。誰よりもそれを敏感に感じとったのは、店長の愛犬、ジャックラッセルテリアのロイスだった。クレートから飛び出しためろーくんを一喝!

「こいつは強い。早いうちに注意しないと大変なことになる――。ロイスはそう感じたんだと思います」と店長。そして、お母さんに「成長したボーダーコリーは脚が早く、力も強い。女性のお母さんでは制御できなくなる可能性もあります。体が大きくなる前に手を打たないと大変なことになるかも」とアドバイス。

 さらに店長と、店長の先輩のドッグトレーナーから「困ったことがあったら僕らがなんとかするから」との言葉が、お母さんを勇気づけた。

 このころ、お母さんはめろーくんの短い右の前脚の断脚を考え始めていた。本能的に使おうと地面についてしまうため、先っぽが傷だらけになって痛めてしまうからだ。手術をするとしばらくは安静にしていなければならないため、術前にUGの社会化お泊まりに参加することを決める。

 こうしてUGの群れにデビューしためろーくん。店長は、ボーダーコリーの抜群の頭のよさに、感心しながらも苦戦することになる。

おもちゃ遊びも上手(お母さん提供)

 後編へつづく(6月26日公開予定) 

(この連載の他の記事を読む)

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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