猫のいたずらや悪さを止めたい! 「やってはダメ」とどう伝えればいい?

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。連載5回目は「叱り方」です。

猫がキーボードの上に

 この原稿を書くために、いまパソコンに向かっていますが、1歳の我が猫はパソコンのキーボードの上に乗って得体のしれない文章を打ったと思ったら、私の膝の上にきてパソコン操作の邪魔をする、さらにはパソコンの横に置いてあるコーヒーをひっくり返そうとする……。

 仕事にならないので、「やめなさい」と言ってももちろんやめてはくれません。しばらく私を邪魔したあとは玄関に行って、同居の犬をからかい、靴棚に乗って上に置いてあるおきものにちょっかいを出しています。「やめて!ダメ!」と言ってもやめません。

トイレットペーパーをかむ猫
「ダメ!」といっても、もちろんやめない

 こんな風にいたずらしたり、悪さしたり、攻撃してかみつくような困った行動をした場合、猫をどう叱ったらいいのでしょうか?

「こら!」では伝わらない

 最初に申し上げたいのは、猫に限らず犬も、いたずらをとめたり、「やってはダメ」と伝えたりするために使える方法は、「その行動をしても何もないし無駄だよ」と教える方法のみです。

 残念ながら人と違って、猫さんたちは言葉が通じないので、「こら!」と言われても、びっくりして行動を一瞬とめるかもしれませんが、『先ほどやっていた行動が人の好まない行動なので、今その行動をやめて、さらに今後もやってはいけない』とまでは理解出来ないのです。ただ一瞬びっくりしているだけなので、時間がたてばまた同じことをします。

寝転がる猫
「こら!」といわれても理解できない

 では、「こら!!」と言ったり、おしりをたたいたりしても理解してくれないのであれば、どうしたらいいのでしょうか?考えていきましょう。

ルールを教えよう

 うちの猫のパソコンに乗るいたずらですが、なぜパソコンにのるかといえば、私の関心を引きたいからです。

 パソコンに向かっていると、多くの人は猫と遊ばなくなります。賢い猫はそれを知っているので、関心を引くためにあれやこれやと邪魔をして関心を自分に向けようとしているわけです。

 猫の知能は2歳の人の子どもと同じくらいと考えていただいてよいと思います。2歳の子どもが大好きな人の関心を引きたくて色々やっていると考えてみましょう。

 では、この2歳の子どもに仕事を邪魔させないようにするにはどうしたらいいでしょうか?「やめなさい!」と叱ってもおそらくやめないと思います。

 だから通常我々大人は、「ママがお仕事の間は、ディズニーの映画をビデオでみていてね」とか「一人で絵本を読んでいてね」と一人で遊べるおもちゃなどを与え、しばらく他のことに夢中にさせて、その間に仕事を終わらせます。

子猫
一人で楽しめるようなオモチャを

 猫も同じで、邪魔をするのは退屈で人と遊びたいのですから、一人で楽しめるような「知育玩具」と言われるものを与え、一人遊びをさせるとよいかと思います。

「これをしてはダメ」と伝えるために、叱って、抱っこして、話しかけてやめさせても猫には意味が通じないですから、パソコンを扱う時は猫がないても騒いでも猫を無視し、他の部屋に置いておくことで、家族がパソコンに向かう時は絶対に遊べない時間になるからママのくれたおもちゃで一人で遊ばなくてはいけない、というルールを教えていきます。

なぜその行動をしているの?

 もし、人に対してかみつくような行動がある場合、これをやめさせるのもただ叱るだけでは猫を怖がらせるだけです。

 2歳児ですから、「こら!」と言っても、たたいても意味がないことはわかると思います。まずはなぜ攻撃しているのかを考えます。

 多くの場合、猫が攻撃してくるのは、「遊ぼう!」と遊びに誘っているか、「怖いから来ないで!」と自らの身を守っているかになります。

 もし人のことが怖いから攻撃しているのであれば、叱るとなおさら人が怖くなるので、叱らず、まずは人の安全を確保したうえで、怖がられている人がおやつをあげるなど、人は怖がらなくていいものだと教えます。

マットにくるまる猫
なぜその行動をするのか考えてみよう

 もし遊びたくてかみついてきている場合は、「噛んでも遊ばないよ」と伝えるために、攻撃してきたら部屋を出て猫の行動に対し「しかと」します。

「しかと」はどんな動物もきついものです。穏やかに対応してきたら一緒に遊んであげる、このルールを徹底していくと、攻撃行動はしなくなります。

代わりに何をさせるか考えよう

「こら!」「NO!」「やめなさい!」と私たちどうしても言いたくなってしまいますが、我々の言葉は、猫にとっては「あ!」とか「わ!」などの大きな音でびっくりさせているだけのもので、「この行動をやめるべきで他の行動をその代わりすべき」と理解しているわけではありません。

「こら!」と言ってしまっても、この言葉に意味はない、と肝に命じ、では、何をこの行動の代わりにさせようかな、と考えてその行動をさせるようにしていくと、そのうち賢いにゃんずは悪い行動はしなくなってくると思います。

(次回は12月13日に公開予定です)

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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