運命の出会い!?(お母さん提供)
運命の出会い!?(お母さん提供)

やることやっていないのに子犬に求めすぎ! かみつくチワックスに悩む飼い主に転機が

 コロナ禍がきっかけで生活や働き方の形が変わった人は多い。そして、犬を迎えた人も。今回は、勢いのままに迎えてしまったチワックスの子犬のかみつきや拾い食いに悩み、「私がなんとかしなくちゃ!」とUG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長のもとに訪れたお母さんの物語。

 激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。

「やることをやっていないのに、子犬に求めすぎてはいませんか?」

(末尾に写真特集があります)

知識がないまま子犬を迎えた

「どの子にしようかな」

 それまで犬と暮らしたことも、暮らそうと思ったこともなかった。しかしコロナ禍の中、犬を迎えた友人夫婦の楽しそうな姿に、「犬との生活もいいな」と思い始めた。「実際に犬と触れ合ってみたら?」との友人のアドバイスで、近くのペットショップへ。かわいい子犬たちの姿に心をつかまれ、「『犬を迎えるか迎えないか』ではなく、『どの子を選ぼうかで』で迷っていました」とお母さんは振り返る。

 数匹の子犬たちが同じスペースで遊んでいた。子犬同士でたわむれる子、訪れる人にシッポふりふりで愛敬を振りまく子……そんな子犬たちの中で、ほかの子にほえられても一切動じず、へそ天で爆睡するチワックス(チワワとダックスフントのミックス)の子犬にお母さんの目が止まった。抱っこしても、おとなしく手の中におさまっている。

手の中でまったり。平和主義&大物感!(お母さん提供)

「マイペースでのんびりした雰囲気に、この子にしようと決めました」

 1週間後、チワックスの男の子はおうちへ。名前は「ゾーイ」に。初めての犬育てをお母さんはこう振り返る。

「犬の知識も飼育方法も、まっさらな状態でのスタート。ショップの店員さんから言われた『2週間はケージから出さないように』を守り、その間、ケージ越しにゾーイをひたすら観察していました」

 ケージの中でおもちゃをぶん回す姿に、「あれ? ショップにいたときとなんか違う?」とお母さんは感じたという。とはいえ、食欲旺盛で初日から爆食。おなかがいっぱいになったら、得意のへそ天で爆睡。ほとんど手間がかからなかった。多少クンクン鳴くことはあったが、これもショップ店員から「相手にすると要求吠えにつながるので無視するように」と指導されたことをきっちりと守った。

ゾーイくんの本領発揮

「ゾーイ」は、ギリシャ語の「zoe」=命、生きることという言葉から名付けたという。「コロナ禍という経験したことのないパンデミックに、命について考えることが多かった。そんな中で迎えたゾーイだから、自立した犬に育てよう、命を預かったんだから私がちゃんとしないと……と、今思うとものすごく気負っていたように思います」とお母さん。

 ケージから出す時間が増えると、ゾーイくんは本領を発揮し始める。お母さんの足にガブガブとかみつき、ワンピースやスカートのすそはビリビリに。ようやくワクチンが終わり、お散歩デビュー。しかし、ゾーイくんは「やだ!」とばかりに歩くことを拒否。「普通に歩いたら20分ほどで帰ってこられる距離を、ゾーイが歩くのを待ちながら歩いたら2時間半かかってしまいました」とお母さんは苦笑い。さらに、ちょっとだけ歩いてくれたかと思うと、電光石火の速さで拾い食いをしてしまう。ポイ捨てのたばこの吸い殻を口にしてしまったときは、大慌てで吐き出させた。

 食べることへの執着が強いゾーイくん。ぬいぐるみのタグなどあっという間に食いちぎってのみ込んでしまう。スーパーのレジ袋をビリビリに破いて食べてしまい、駆け込んだ病院で薬で吐かせたことも。

「さすがに困り果て、トレーナーなど誰かに相談した方がいいのでは、と探し始めました」

お母さんのスカートのすそに巨大なゾーイ穴が!!(お母さん提供)

やることをやっていないのに子犬に求めすぎ

 ネットを検索する中で、UGの高橋店長のブログを見つけ、早速カウンセリングを申し込む。お母さんは月齢4カ月になっていたゾーイくんを連れ、UGへ。実はこのとき、1週間の社会化お泊まりは考えていなかったという。「どうしたら今困っていることをやめさせられるのか、具体的な方法を教えてもらい、自分で頑張ってみようと思っていたのです」

 お母さんの話を聞いた店長は、しかし、具体的なことは言わず、こう告げた。

「お母さんがやることをやっていないのに、子犬のゾーイくんに求めすぎではないですか?」

 お母さんは、当時を思い出しながらこう語る。「正直、店長の言葉の意味が理解できなくて……。ただ、私に何かが足りないことだけはわかりました」

 店長から「このまま社会化お泊まりをスタートした方がいい」と告げられ、驚きながらも、犬の群れの中で楽しそうに遊び始めたゾーイくんの姿に、お母さんは預けることを決意する。

「確かにゾーイの行動に困ってはいましたが、自分ではそこまで追い詰められてはいないと思っていたし、自分の力でなんとかなると考えていました。でも、店長はそうは見なかった。たくさんのワンちゃんと飼い主さんを見てきた店長を信じてみよう、と思ったのです」

 予想外の展開。しかし、UGからの帰り道、お母さんの中には経験したことのない感情が沸き上がってきたと言う。

「ゾーイがうちに来てから1週間も離れるのは初めて。さみしさが押し寄せてきました。帰宅してゾーイのいないケージを見たら急に泣けてきてしまって……。ゾーイの存在が私の中で思っていた以上に大きくなっていたことに、離れてみて改めて気づきました」

 そして、この「離れた時間」が、ゾーイくんとお母さんの大きな転機となる。

遊ぶの大好き! でも行きすぎることが多くお母さんを悩ませる(お母さん提供)

 後編へつづく(5月29日公開予定) 

(この連載の他の記事を読む)

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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