散歩の耐久は2秒だった 寛容に根気よく、山中を放浪していた雑種犬「ロビン」の成長
個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。山中で放浪していたところを保護され、迎えてから3週間ほどはケージから出てこなかったほどおびえていたのが、4年間で飼い主への甘え方を知り、今ではソファやベッドを陣取ってリラックスするまでに。第10回は、日本犬系の元野良犬「ロビン」の暮らしを紹介します。
【基礎データ】一見黒柴に見える中型雑種犬
- DATA
- 《名前》ロビン
《年齢/性別》推定4歳半・オス
《役割》ソファやベッドが好きな“お座敷犬”!?
《サイズ》体高50cm・体⻑55cm・体重15kg
《チャームポイント》鼻鳴きで「かまって」と要求するけど、近づくと立ち去るツンデレくん
《特性》
人慣れ度★★☆
犬好き度★★☆
食いしん坊度★★★
運動量★★☆
トレーニングしやすさ★★☆
ケアのしやすさ★★☆
山中を群れで放浪していたところを保護
一見、黒柴のようにも見えるけれど、よく見ると柴犬より脚が長め、目がまんまる、耳が大きめ、マズルは細め、毛が少なめの「ロビン」。山の中を放浪していたところを保護された元野良犬です。
2019年9月ごろ、千葉県柏市の山の中を犬6匹ほどで放浪していたところを、動物愛護センターによって捕獲されました。当時生後6カ月ぐらいだったロビンですが、一緒に捕獲された犬たちの見た目はバラバラで、きょうだい犬ではなかったそう。その後、保護団体によって引き出され、100匹ほどの犬猫たちとともにシェルターで、新たな飼い主が現れるのを待っていました。
「シェルターに予約して面会に行ったとき、他の犬たちは大騒ぎしているのに、ロビンだけケージの端でショボンとしていて。その姿を見てピンときたんです。抱っこさせてもらってすぐに、『この子がいいです』って即決。スタッフさんも驚いてました(笑)。でも、他の子も見始めると、みんな引き取ってあげたくなり心が痛むと思ったのもあって、迷わなかったです」と飼い主の伊原佳代子さんは話します。
子どものころ一緒に暮らしていた愛犬が亡くなったとき、あまりにつらくてもう二度と犬は飼わないと思っていたという伊原さん。50歳を迎えるにあたって、犬を迎えられるのはこれが最後かもしれないと、保護犬を探し、出会ったのがロビンでした。
シェルターでの面会後、去勢手術が終わるのを待って、2週間後に再びシェルターへ引き取りに。こうして、ロビンは伊原家へとやってきました。
ケージへの籠城や夜鳴き、長期戦を覚悟した日々
伊原さんが子どものころ生後2カ月ほどで迎えた愛犬は、人懐っこく好奇心旺盛な「ザ・子犬」。同じようなイメージでロビンを迎えましたが、人間と暮らしたことのなかった元野犬との生活は、最初は想像以上に大変だったと言います。
「ロビンを保護してくれていた団体は、抱えている犬猫の数が多いので、散歩やシャンプー、トレーニングも何もしていない状態で我が家に来たんです。迎えた日は、ケージから出てこないし、一言も声を出さなくて。かろうじてごはんは食べてくれたんですが……。2日目の夜からは、今度は夜鳴きが始まって、何をしても鳴きやまなくて。保護団体に動画を送って相談したら、『みんな最初はそうだから、1週間ぐらいがんばって』って言われて、そういうものなのかと。4日間、徹夜で夜鳴きに付き合ったら、その後はピタリと止まりました」
その後もロビンは、3週間ぐらいケージに籠城し、ごはんもトイレもケージの中でのみ。伊原さんも、ごはんを置く位置を少しずつ外側にしていく作戦を立てますが、最初はごはんだけ食べてすぐにケージへ戻ってしまいます。そんなロビンのようすを見て、「これは慣れるのに1年ぐらいかかるかもしれないな」と覚悟したそう。
2秒の次は3秒…外慣れも少しずつ
そんなロビンですが、迎えて3カ月目ぐらいから徐々に人慣れしてきました。何か大きなきっかけがあったというよりは、日々少しずつ少しずつ変化していったのだそう。
常に上目づかいで人のようすをうかがっており、やっとケージから出ても「あれ、出てきたね」と言われると、またさっとケージに戻ってしまう。狂犬病の予防接種を終えた後、迎えて1カ月ぐらいから散歩に挑戦したものの、最初は2秒でシッポを巻いて退散。「1週間ぐらいは2秒で、その次はようやく3秒と、本当に少しずつという感じでした」と伊原さんは穏やかに笑います。
家族に慣れてきてから2歳ごろまでは、靴下をかんで反応を楽しむようなようすも出てきました。家族に触られると嫌がるでも喜ぶでもなくじっとしていましたが、3歳をすぎたころから、耳を後ろに倒して喜んで寄ってくるように。
ロビンが何かするたびに、それがいいことならとにかく家族みんなで褒めちぎって、「それをしてもいいんだ」と教えていった結果、ロビンは少しずつ家族に心を開き、リラックスして自由に振る舞うようになっていきました。
3年経って「吠えていいんだ!」とわかった
そして大きな変化は、3歳半ごろにおきました。元野犬だからか、それまでロビンは、ワンともピーとも声を出しませんでした。
「それがある日、玄関のチャイムが鳴ったときにロビンが突然ワンワンと吠えたんです。それを聞いて、家族で『声出した〜!』って驚いて叫んだら、『あれ、これ褒められてるの?』と思ったみたいで(笑)。それからは調子に乗って、チャイムが鳴るたびに吠えるようになっちゃいました」
その一件以来、「声を出してもいいんだ」と思ったらしいロビンは、家族が本を読んだり携帯を見たり電話していたりすると、すっ飛んできて「ピーピー」と鼻鳴きして文句を言うように。
「『自分がいるのになんで携帯なんて見てるんだ』と言っているみたいなので、『じゃあ、やめるよ』とロビンのいるベッドに行くと、スッとどこかに立ち去ってしまうんです(笑)。本当にツンデレですよね」
伊原家に来るまで人間と暮らしたことがなく、また他の犬が人間にどう接しているのかも見たことがなかったために、「どうしたらいいかわからない」というようすだったロビン。約4年間の暮らしの中で、人間との生活でしていいことや、飼い主への甘え方などを徐々に学んできました。
「今後、ロビンと一緒に挑戦したいことは?」と飼い主の伊原さんに尋ねると、「もう十分がんばっているから、長生きしてくれればそれでいい」とのこと。伊原さんの鷹揚(おうよう)さが、元野犬と暮らしていくうえでもっとも大切なことなのかもしれません。
(次回は10月27日公開予定です)
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