こういう犬と決めつけない 成犬で迎えて2年半、今も変化を続ける雑種犬「まめ」
個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。第9回は、小さめの体とフワフワの長毛がかわいい「まめ」。最初はおとなしかったまめですが、まめを迎えてドッグトレーナーになった飼い主さん家族と過ごす中で、活発になり、自己主張をするようになり、甘えるようになりと、2年以上経った今も日々変化を続けています。
【基礎データ】スピッツ&柴? 長毛の日本犬系小型雑種犬
- DATA
- 《名前》まめ
《年齢/性別》推定5歳・メス
《役割》子どもたちのよき相棒、ときどき撮影モデル犬
《サイズ》体高38cm・体⻑43cm・体重8.2kg
《チャームポイント》かわいらしい顔に寄るみけんのシワ
《特性》
人慣れ度★★☆
犬好き度★★☆
食いしん坊度★★★
運動量★★★
トレーニングしやすさ★★☆
ケアのしやすさ★★☆
家族の希望にぴったりだった
小学校5年生だった双子の娘さんたちが「犬を飼いたい」と言い始めたのは、新型コロナウイルスの感染が広がり、休校が続いた約3年前のこと。当時、近所の土手によく出かけて、いろいろな犬に触らせてもらっていたのがきかっけの一つでした。
母の井上祐子さんはは虫類の研究者でもあり、家にはトカゲがいるなどもともと動物好きだったものの、犬を迎えることは考えていなかったそう。しかし、1年ほど前に犬と暮らせるマンションを購入していたこと、子どもたちも独立し始めていたことなどから、今なら迎えられるかもしれないと考え始めました。
「私が高校生のころから実家には大型犬がいたのですが、結婚してから犬を迎えることを具体的に考えたのは、このときが初めてで。土手でたくさんの犬と飼い主さんに会ったことで、保護犬というのがいるんだと知って、迎えるなら保護犬にしようと考えました」と祐子さんは話します。
土手でいろんな犬と触れ合った結果、マンション住まいなので体が小さめであまり吠えない子、犬の飼い主初心者で子どももいるので攻撃性のないおとなしめの成犬といった、自分たち家族に合う条件が固まってきました。その条件をもとに、飼い主募集掲示板や動物保護団体のサイトを日々チェックして、家族に合う子を探していたところ、目に止まったのが「まめ」。
「動物保護団体の『アルマ』さんは自宅から自転車で10分ぐらいのところにシェルターがあるので、代表のブログをチェックしていたところ、ある日、茨城県動物指導センターから引き出されたばかりのまめのことが載っていて。この子だ!と思ってすぐ団体に問い合わせて、家族でシェルターへ会いに行きました」
まめがセンターに来た詳しい経緯はわからないものの、山のない海沿いの町で保護されているので、町を放浪していた野良犬だったのではないか、とのこと。
一目ぼれから犬を迎える人も多い中、まめに出会う前から着々と犬を迎える準備を進め、迎えたい犬のタイプもよく考えていた井上さん家族。そのかいあってか、シェルターでの面会から2週間のトライアルを経て、すんなりと正式譲渡が決まりました。
今も驚かされるまめの変化
まめを迎えた時点では、祐子さんもトレーニングに関しては「別にオスワリができなくてもいいかな」ぐらいの気持ちだったそう。実際、まめはビビリだったものの、抱っこしたり散歩したりはできたため、トレーニングで困ることはあまりありませんでした。
「ただ、毎日散歩に行く土手では、犬に関するトラブルも多かったんです。いろんな犬や飼い主さんと接するうちに、しつけっていろいろあるんだなとか、しつけで困っている人って多いんだなということがわかってきて。そこからトレーニングに興味を持つようになって、ついにはドッグトレーナーの養成講座に通い始めてしまいました」(祐子さん)
祐子さんがトレーニングを学び始めたことで、まめとの間にも思わぬ変化がありました。トレーナー養成講座では、アイコンタクトや横について歩く練習など、愛犬とのトレーニングのようすを動画に撮って提出するという課題が出されます。講座に通い始めたころには、まめを迎えて半年以上が経っていましたが、少しずつ、まめのようすに変化が現れ始めたのです。
「家に来て半年ぐらいは、まめはすごくおとなしくて、吠えたことがなかったんです。それが、落ち着ける家や私たちとの信頼関係ができてきたことで安心したのか、だんだん本性を現し始めて(笑)。半年以上経ってから外でマーキングするようになったり、1年ぐらい経ってから排泄後に地面をケリケリするようになったり、最近では縄張り意識が芽生えたのか、荷物の配達員や夫に吠えるようになったり……。私たちに対してシッポを振って喜びを表したり、手をなめたりするようになったのも、迎えて2年以上経った、ここ最近なんです」(祐子さん)
今は、まめってこういう犬なんだと決めつけるのはやめて、まだまだ変化の途中なのかなと思って見守っているという祐子さん。もちろん、祐子さんや子どもたちも、日々犬のことを勉強し、飼い主として成長し続けています。ゆっくりとしたまめの変化は、迎えるとき成犬になっていても、家に迎えて年月が経ってからでも、犬は変われる、ということを教えてくれます。
歯の治療を経てさらに元気に
もう1点、まめの変化のきっかけになった出来事が、抜歯手術。まめは保護されたとき、ケンカをしたのか左側の歯が割れていて、皮膚に穴が開いて膿が出ている状態でした。迎えるときに抗生物質を渡されて、「ようすを見てください」と言われたものの、いつまで経っても改善しなかったそう。それどころかくしゃみも止まらず、もしかしたら歯に原因があるのかなと病院で相談したところ、抜歯をすすめられます。
そこで抜歯手術をしたところ、おとなしいと思っていたまめが一段と元気になり、走る速さも一段とスピードアップ、くしゃみも止まりました。「性格的におとなしい犬なのかと思っていたけど、不調もあったのかもしれないですね」と祐子さん。しっかりケアされたことで、まめは本来の活発な性格を取り戻したようでした。
祐子さんがトレーナー養成講座を卒業した今も、毎日のように土手でロングリードを着けて呼び戻しの練習をしています。外で何かあったときに離れてしまわないように、呼んだら飼い主の右横について座るまでを、繰り返し練習しているそう。「普段は呼び戻しができても、パニックになったらどうかわからない。でも今は、私の近くにいるほうが安心と思ってくれていると思うんです」と祐子さんは顔をほころばせます。
また、お出かけの練習もしてきた結果、今はリュックに入って2時間ぐらい電車に乗ったり、レンタカーを借りて家族みんなで旅行を楽しんだりもできるようになりました。
一方、飼い主の祐子さんは保護犬カフェで週1回ほど、一時預かり中の保護犬のトレーニングに携わりながら、犬にかかわる別の仕事も始めました。もともと好きだったカメラを本格的に勉強して、「ドッグトレーナー兼フォトグラファー」として犬の出張撮影も始めたのです。トレーニングや撮影でいろんな犬に会うことで、「まめってこういう犬なんだ」と改めてわかることも多いそう。
性格や特徴の傾向がわかりづらい雑種犬のまめを迎え、日々その変化に向き合い続けてきたことで、まめと一緒に一歩一歩成長を続けてきた祐子さんと家族。これからもまめと井上さん家族にどんな予想外の変化が起きるのか、楽しみです。
(次回は9月22日公開予定です)
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