家族にぴったり体を寄せてくる「レオン」(めぐさん提供)
家族にぴったり体を寄せてくる「レオン」(めぐさん提供)

人懐っこい性格で、コロナ禍で不登校になった娘さんを癒やす 野犬の子「レオン」

目次
  1. 【基礎データ】顔や背中のワイヤーコートが特徴的な中型雑種犬
  2. 生後3カ月ですでにトイ・プードルサイズ
  3. 問題は甘噛みとフードアグレッシブ
  4. 不登校だった娘さんの支えに

 個性豊かな雑種犬の魅力を紹介する連載企画。第18回は、テリアのようなワイヤーコートが特徴的な「レオン」。夫婦と子ども4人という大家族に引き取られ、今では子どもたちのよき相棒になっています。

(末尾に写真特集があります)

DATA
《名前》レオン
《年齢/性別》2歳/オス
《役割》子どもたちの相棒であり、家族と犬友達をつないでくれる存在
《サイズ》体高55cm・体⻑64cm・体重25kg
《チャームポイント》顔まわりのヒゲっぽい長い毛と、背中のたてがみ
《特性》
人慣れ度★★☆
犬好き度★★☆
食いしん坊度★★★
運動量★★★
トレーニングしやすさ★★★
ケアのしやすさ★★☆

 野犬の子として生まれ、四国の動物愛護センターに収容されていたところを、動物保護団体に引き出された「レオン」。もう1匹のきょうだい犬とともに保護団体でケアされ、ペットの飼い主募集サイトなどで飼い主の募集が行われていました。

飼い主募集掲示板に掲載されていた、めぐさん一家がひかれた画像。保護団体では「柿」と名付けられていた(めぐさん提供)

 一方、夫婦と子ども4人という大家族のめぐさん一家では、以前から子どもたちが「犬を飼いたい」と言っていたものの、「世話が大変だからダメ」と伝えていました。ところが、いちばん動物好きの当時10歳の次女が、コロナ禍の影響で小学校へ行けなくなってしまいます。1年近くを家で過ごしていた次女に元気になってほしいという思いもあり、めぐさん夫妻は犬を迎えることを検討。次女が学校を休んでいる間に保護犬に関する本を読んでいたこともあって、「迎えるなら保護犬がいい」と、飼い主募集サイトなどで探し始めました。

トライアルのために家に届けられたとき。でかい!(めぐさん提供)

 最初に応募した子は、お見合いの前に他の飼い主に決まってしまいましたが、諦めずに再度トライ。募集サイトに掲載されていた垂れ耳の子犬の写真を見て、子どもたちがみんな「かわいい!」とひかれたことから保護団体に連絡をしてみると、「写真のときから時間が経っているので、だいぶ見た目も変わっていますが、いいですか?」とのこと。それでも応募したいと伝え、電話での家庭環境などのヒアリングや、野犬との暮らしに関する説明などを経て、約1週後にトライアルをスタートすることになりました。

耳の大きさがグレムリンっぽい!?(めぐさん提供)

 トライアルのため保護団体のスタッフに自宅まで届けてもらったとき、レオンは体重5kgと、すでに成犬のトイ・プードルぐらいのサイズだったそう。

「とはいえ、ピンと立った耳が大きくて、口のまわりがどろぼうヒゲみたいに黒くて、子犬らしくてかわいかったですね。野犬の子の大変さを聞いていたので、全然寄ってきてくれないのかなと思ったら、ぐいぐい体を押し付けてきてくれて、安心しました」

初めて自分からひざに乗ってきてくれたとき(めぐさん提供)

 1週間のトライアル期間中、甘噛みはひどかったものの、夜鳴きはまったくせず、ごはんをよく食べ、トイレも何カ所か用意しておけばそこでできたと言います。そのまま晴れて正式譲渡に。保護団体のスタッフの助言通り、すぐにドッグトレーナーについてもらい、育て方を相談しながらの生活が始まりました。

 トライアル時に困っていた甘噛みは、トレーナーと一緒にトレーニングを始めると、すぐしなくなったそう。しかし、もう一つ問題だったのが、食べ物を前にすると近づいてくる相手に対して攻撃的になってしまう「フードアグレッシブ」でした。

転がっておなかを見せる動きはザ・子犬!(めぐさん提供)

 レオンを迎えてから1カ月ほどたったある日、レオンが食べ終わったフードボウルの近くにあったぬいぐるみを、当時7歳の末っ子が取ろうとしたところ、レオンに噛まれてしまうという事件が発生。怪我はそれほどひどくなかったものの、狂犬病ワクチンを打つ予定日の前夜のことで、子どもの救急相談ダイヤルに電話で相談し、救急病院へ。破傷風のワクチンを打ってもらって、ことなきを得ました。

末っ子とともに、フードアグレッシブを改善するトレーニング。フードボウルに少しずつフードを入れていく(めぐさん提供)

 それ以降、末っ子と一緒に、フードアグレッシブを改善するトレーニングも開始。今では、ガムなどをくわえているときに取ろうとすると唸ることはあるものの、ほとんど改善されたそう。

「噛まれた後も、末っ子はレオンを怖がることなくじゃれ合っていて、とても安心しました」

 もう一つ印象的だった出来事が、レオンのきょうだい犬に再会できたこと。レオンを迎えたことで他の犬たちにも興味がわいためぐさんは、昨年3月に思い切ってレオンのインスタグラムアカウントを開設。すると、なんと1週間もしないうちに、インスタグラムを通してきょうだい犬「うに」の飼い主から連絡がありました。お互いに「すぐにでも会いたい」という話になり、約1カ月後に対面することに。

右がきょうだい犬の「うに」。顔がそっくり!(めぐさん提供)

「感動の再会を期待していたけど、離れ離れになって2年以上が経っていたので、実際には、お互いに覚えているという感じではなかったです。ただ、特に自分より大きい犬を怖がることの多いレオンが、うにくんとはすぐに並んで散歩できたので、何か通じるものはあったのかなって。うにくんとは毛の長さや質感などは違うけど、顔や目の感じ、しぐさなどがそっくりで、ビックリしました」

さすがきょうだい、動きがシンクロしている(めぐさん提供)

 学校に行けなくて、習い事以外は毎日ほぼずっと家にいた次女も、レオンが来たことで毎日楽しそうになり、笑顔が増えたそう。散歩やドッグランでいろんな犬や飼い主とコミュニケーションを取る機会が増え、外に出る時間も長くなりました。その後、学校に行けるようになってからも、「家に帰ればレオンがいるし、何かあってもレオンがいてくれると思った」と娘さん。学校に行き始めてすぐにあった宿泊学習にも、レオンの写真を持って行ったと言います。

 子犬時代は次女からレオンにくっつきにいっていたのが、今ではレオンから次女に甘えにくるようになり、アゴをのせてきたり、ソファで寝ていると一緒に寝に来たりと距離感がぐっと近づき、揺るぎない信頼関係ができています。

 人間社会から離れて暮らしていた野犬から生まれた子であるレオンが、今ではめぐさん一家の心を支え、癒やしてくれる存在になっているようです。

(次回は6月28日公開予定です)

【前の回】犬がどこまでできるかは人間次第 アジリティ公式戦で入賞を果たした雑種犬「ゆず」

山賀沙耶
フリーランス編集ライター。北海道大学文学部卒業後、編集プロダクション、出版社勤務を経て、独立。現在は雑誌や書籍、ウェブメディアを中心に、犬やアウトドアなど幅広い分野で活動中。犬メディアとのかかわりは、約20年前の編集プロダクション時代から。プライベートでは、2頭の雑種犬と外遊びを楽しむのが至福の時。

sippoのおすすめ企画

sippoの投稿企画リニューアル! あなたとペットのストーリー教えてください

「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!

この連載について
雑種犬図鑑
見た目も性格も個性豊かな雑種犬の魅力を、犬種図鑑のパロディで紹介。毎回1匹の雑種犬にフォーカスし、チャームポイントから生い立ち、暮らしのエピソードまで情報や魅力をふんだんに伝えていきます。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。