「おばちゃんは、ときどき、なでてくれるんだ」(小林写函撮影)
「おばちゃんは、ときどき、なでてくれるんだ」(小林写函撮影)

日がな一日ご飯の催促 ニャーニャーまとわりつく愛猫「はち」に自動給餌器を考える

 愛猫「はち」がストラバイト結石になる少し前から、我が家では、たびたびはちへの給餌方法(きゅうじほうほう)についての議論が交わされていた。

 自動給餌器を日常的に使用するか否かについてだ。

(末尾に写真特集があります)

自動給餌器の導入を考え始めたのは

 自動給餌器とは、フードを自動で決まった時間に規定量を与えることのできる器械だ。飼い主の不在時には便利で、うちにも、先代猫「ぽんた」のときから使っているものが1台あった。

 ただこれは、ふた付きの容器が2つ並んだトレイタイプで、1日2回しか給餌ができない。作りもいまひとつで、猫が激しくふたを叩いたり、爪をふたに引っ掛けて持ち上げたりすると簡単に開いてしまう。それでも、キャットシッターを頼んで短期旅行に出かける際には、不足はなかった。

「机って下を使うんだよ」(小林写函撮影)

 普段、はちには、ドライフードの規定量を1日4回に分けて与えていた。午前8時、午後2時、午後8時、午前0時だ。ツレアイも私も仕事はフリーランスで、日中もどちらかが在宅していることがほとんど。だから自動給餌器の必要性は感じなかった。

 それがなぜ、導入しようかという話になったかといえば、はちのご飯の催促が激しくなってきたからだ。

めげずにしつこくご飯を要求

 朝は6時前から寝ている私の耳もとでニャーニャー鳴く。無視していると、髪の毛や布団を口や前脚で強く引っ張る。夜、寝る前にじゃらし棒で遊んでやっても、変わらなかった。

 日中も、ご飯の時間のだいぶ前から我々のあとを鳴いてついてまわるようになった。以前にはなかった行動だ。

 はちの声は体格に似合わず甲高い。それで甘えたようにニャーニャー鳴いてつきまとわれると、ツレアイはわずらわしいらしい。「まだご飯じゃないでしょ!」とはちを叱りつけているが、懲りる様子はまったくない。

「いいかげん、新しい給餌器を買いなよ」

 ある日、ツレアイが私に言った。彼は、はちが騒ぐようになる以前から、たびたび自動給餌器の導入を唱えていた。日に何度も給餌をする手間が省けるし、2人で外出し、予定より帰宅が遅くなる場合でもはちの食事の心配をしなくてすむからだった。

 それを私は、手入れが面倒くさそうとか、フードはその都度食器に盛るほうが清潔だとか、必要ないものにお金を払うのはもったいない、などと言って拒んでいた。

「花より葉っぱに興味あるんだよね」(小林写函撮影)

「はちは、少しわがままになっているんじゃない?」

 とツレアイは言う。決められた時間以外には食事は与えない、というのが、我が家の決まりだ。それでも私は最近、はちの執拗な催促に根負けし、たまにこっそり、早めに与えていた。

「それが助長させるんだよ。何度も言うけど、おとなしくさせたいなら、甘やかしちゃだめだよ」とツレアイ。

 人間がご飯をくれると思うから、鳴いてまとわりつく。ご飯は、器械がくれるものだとわかれば、人間に対して執拗な催促はしないだろう、というのがツレアイの見解だった。

 でも実はそれが、私が自動給餌器導入に踏み切れない一番の理由だった。器械で食事を与えることに抵抗があるからだ。

拮抗する感情と理性

 毎回、「ご飯だよ」と声をかけることがコミュニケーションになる。フードを食器に盛ると、一目散に駆け寄ってくるはちを見るのはうれしかった。これがなくなると思うと、寂しい。

「でも、寝不足でからだを壊したら元も子もない」

 と、今回はツレアイはねばった。

「それに手作りスープは人間があげるんだし、ブラッシングしたり、遊ぶ回数を増やせばいいんじゃないの」

 この言葉に背中を押され、私は新しい自動給餌器を買うことを決めた。

「外のみんなは元気かな」(小林写函撮影)

 買うと決まると、インターネットで積極的に商品の比較をはじめたのはツレアイだった。

 ひとくちに自動給餌器といっても実に種類が豊富だ。

条件を満たす一台を探す

 はちの場合は、ストッカータイプという、タンク内にドライフードが一定の日数分ストックできるものがよかった。またフードは、1日の規定量を少量ずつ何回かに分けて与えたい。そのため、1日の給餌回数は多く、1回の給餌量は細かく設定できる機種であることが必須条件だった。また不在時の停電に備えて、給電方法は電源コードと乾電池が併用できることも重要だった。

 猫によっては、自動給餌器を警戒して食べない場合もあるらしい。かと思えば、知り合いのくいしん坊の愛猫は、いたずら防止機能が付いているにもかかわらず、買ってすぐにふたを叩いて壊してしまったという。

 はちが、自動給餌器と相性がいいのかどうかという不安はあった。だから搭載機能は最低限にし、値段を抑えることにした。

 そうして探すこと数日。1日6回まで給餌ができ、1回の給餌量が最小約7g、比較的安価で、安定性のよさそうな小さめの機種を見つけるに至ったのだった。

(次回は9月15日公開予定です)

【前の回】待ったなしの投薬はどうする? 愛猫「はち」のストラバイト結石に奔走した3週間

宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。
著書にsippo人気連載「猫はニャーとは鳴かない」を改題・加筆修正して一冊にまとめた『ハチワレ猫ぽんたと過ごした1114日』(河出書房新社)がある。

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この連載について
続・猫はニャーとは鳴かない
2018年から2年にわたり掲載された連載「猫はニャーとは鳴かない」の続編です。人生で初めて一緒に暮らした猫「ぽんた」を見送った著者は、その2カ月後に野良猫を保護し、家族に迎えます。再び始まった猫との日々をつづります。
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