増え続ける多頭飼育崩壊レスキュー 命をつなぐためご支援ください
公益社団法人「アニマル・ドネーション」(アニドネ)代表理事の西平衣里です。この連載は「犬や猫のためにできること」がテーマです。
行政に保護される犬猫は減ってきて、殺処分ゼロを達成している行政も増えてきました。そんな中、私たちアニドネが支援をしている「多頭飼育崩壊」の数は増えています。崩壊した現場の犬猫たちは、やせ細り、糞尿にまみれ、人間のことを信じられない状態で保護されます。どれほど大変な保護活動かを知っていただけませんか。そして、社会的弱者となり苦しんでいる犬猫たちの支援をお願いできませんか。
アニドネ「緊急支援基金」で支援を続けるも…
私たちアニドネは、支援団体さんに“寄り添う”ことを、とても大切にしています。コミュニケーションをする際は、現在の困りごとを聞くようにしています。数年前から「多頭飼育崩壊案件を4つ抱えてて、とても大変で……」というような話をよく聞くようになり、実際に現場に同行させてもらい、この問題の根深さを知りました。
なんとかせねば、の気持ちから、2020年に立ち上げたのが「緊急支援基金」です。保護団体さんが10匹以上の多頭飼育崩壊レスキュー現場に入り、5匹以上引き取った場合に、1匹あたり 1万円の寄付金を届けるための基金です。現在のところ、みなさまからの寄付を原資にした基金は11,924,023円となりました。
しかし、基金設立から3年経った今も状況はあまり改善せず、「多頭飼育崩壊は掘り起こせばいくらでもある」(行政職員談)、「多頭飼育保護依頼者が列をなしている状況」(保護団体職員談)と、収束する様子は感じられません。実際、基金はどんどん支援へと使われています。2020年:218万円(7~12月)、2021年:139万円、2022年:317万円、2023年:259万円(1~6月) を現場で奮闘する団体に届け、ついに基金が底をつく事態となっています。
なぜ、どうして、多頭飼育崩壊が起きるのか
この問題の要因は多岐にわたります。まず飼い主には、経済的困窮や社会的孤立、精神疾患などがみられます。動物に固執するアニマルホルダーは犬猫を手放すことを拒みます。そして、犬猫たちは人間にフレンドリーな個体もいますが、多くはかわいがられた経験がなく、人を信用していない。 衛生的な環境からは程遠く、予防治療であるワクチンなどもしてないため、保護した後の医療費がかかります。近親で生まれた子は身体が弱く、病気や疾患を持っていることも疑われます。つまり、譲渡がされにくい犬猫が多くなるのです。
「人」と「犬猫」の両方に問題があるため、どちらかだけをサポートしても完全な解決には至りません。飼い主が自分ではどうすることもできないから崩壊するわけですから、動物虐待の罰則を適用するだけでは問題の解決を図ることは難しい。対応にあたっては、動物行政だけでなく、「人」の社会福祉行政や公衆衛生行政、警察行政を横断する問題であり、多分野の関係者が連携して取り組むことが必要となってくるのです。
環境省が実施したアンケ―トでも、動物愛護管理局が抱えている多頭飼育に関する課題として、以下の問題があがっています。
「多頭飼育者が生活に困窮しており、引取りや不妊去勢の手数料を支払えない」(85.6%)、「多頭飼育者が動物の所有権を手放さない」(82.4%)、「多頭飼育に関する情報が入ってこない」(75.2%)、「多頭飼育者とのコミュニケーションができない」(74.4%)など。
身勝手な人間の尻ぬぐいと捉えるのか、サポートを必要とする人や犬猫たち、つまり社会的弱者への救済であると考えるのか。いずれにしても被害を被っている犬猫たちはなんの罪もないはずです。筆者が見た多頭飼育崩壊から保護された30匹の猫たちは、私が部屋に入るなりさっと隠れてしまいました。生まれた時に人間に優しくかわいがってもらっていたら、人間を恐れることはなかっただろうに……。何をすれば猫たちが心穏やかに暮らせるのか。このような猫を生み出したのは人間、でも救ったのも同じ人間です。いったい猫たちに人間はどう映っているのか、複雑な思いを抱かざるを得ませんでした。
何かできることでアクションを
最後に、現場で奮闘する保護団体さんからの声をお届けします。
「啓発活動はもちろんですが、人間のサポートがとても重要で、社会的弱者と言われる人たちの孤立させない社会のシステムがもっとも有効だと思います。 そして、猫も登録制にするなど、気軽に増やせない法整備も大切だと思います」(一般社団法人 ねこたまご)
「行政同士との連携。各地区の保健所と愛護センターとの連携や、人間の福祉関係機関との連携」(特定非営利活動法人 ファミーユ)
「愛護団体や個人ボランティアの受け皿にはキャパシティがあり、今でも目いっぱいの保護をしているのが実情で、これ以上の受入れは厳しく、自転車操業です。行政(愛護センターや保健所)も一時的な受け皿になって緊急保護を進めないと、多頭飼育の問題は悪くなる一方だと思います」(特定非営利活動法人アルマ)
「多頭飼育崩壊は私とは関係ない話」かもしれません。ですが、犬猫好きな同志として、なにかできることでかかわってくださる方を増やし、早くこの問題を良い方向へ導きたいと考えています。新しい飼い主として多頭飼育から助けられた子を迎えるのもいいでしょう(可能なら複数匹を一緒にお迎えしてほしいです)。保護活動のボランティアにチャレンジするのもいいです。もしくは、近所に多頭飼育崩壊が疑われる方がいるなら、スルーするのではなく何か助けにならないか、寄り添ってみるのはいかがでしょうか。
また、アニドネの緊急支援基金は、クレジットカードを使って、数クリックで寄付できます。AmazonPayを使っているので、Amazonアカウントを持つ方なら、個人情報を登録する手間も必要ありません。今回、紹介をしたような子たちの支援が寄付で行えます。
(次回は9月5日公開予定です)
【前の回】動物と人の真の共生を目指す 医療の現場で人のために働く犬、犬のキモチで考えてみた(アニマル・ウェルフェア・ゴールズ)
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