仏様のようなやさしい柴犬が認知症で雄たけびを上げる フェルトで防音室を作った
保護犬の預かりボランティアをする、インテリアデザイナーの小林マナです。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫1匹と、預かり犬1匹と生活をともにしています。第28回は、老犬チョコの介護と別れについてをお伝えしていきます。
チョコは正真正銘の老犬
預かりボランティア中の中型犬のベリオが順調におとなしくなっていくなか、もう1匹預かり中だった柴犬のチョコの認知症はどんどん進行していました。
今まで預かりボランティアをしてきた犬は老犬ばかりでしたが、チョコに比べればみんな若かったなぁと思い出されます。
チョコはうちに来た時から目は白濁していてぼんやりとしか見えていない、それまで散歩をしてなかったのか、散歩中は匂いをほとんど嗅がない。黒柴といっても毛の色はほとんどグレーになっていて、柴犬とは思えないほどの細い尻尾。いつもボーっとして、りりしいというよりかはやさしく、仏様みたいな顔をしていました。
歩く様はなんというか、酔っ払ったおじさんみたいでした。ひょっこひょっこ歩きマイペースで、柴犬特有の意固地な感じはまったくなく、ひょうひょうとしている愛敬のある子で、かつて預かっていたうえしたくん、ドー、シャー、ベリオをにこやかに受け入れていました。
そんなチョコは3回の前庭疾患を乗り越え、だんだんと歩けなくなり、そのうちサポートしても自分では歩けなくなってしまいました。
認知症の雄たけび
ずっとおとなしかったチョコですが、寝たきりになってすぐ、びっくりするような叫び声を上げるようになってしまったのです。チョコの雄たけびは、寝たきりなのに手足をバタバタと動かし体も使って叫ぶのでどんどん移動してしまい、しまいにはマットから体がはみ出してしまうほどでした。
マットから落ちてジタバタするとケガをしてしまうので、事務所のみんなで協力し気づいた人がマットに戻すようにしていました。
そうして作ったのが、ケージに防音用のフェルトを貼った防音室でした。ベリオのほえる声とともにチョコまで雄たけびを上げて一時は大変なことになっていましたが、防音室と獣医さんからもらった鎮静剤のおかげでお世話ができました。
以前、鎮静剤を与えた犬を見て、ボーっとしてしまいかわいそうだなと思っていたのですが、チョコは夜中や早朝から雄たけびを上げていたので、獣医さんに相談して投与することにしました。量とタイミングをみながら少しずつ投与していくと落ち着いて、寝てくれる時間ができました。
最期の1カ月くらいのチョコは、姿勢や動きが毎日変わっていたので、マットを厚めにしてどこにも脚が引っかからないように、自由にジタバタさせてあげられるようにしていました。
うちの新居(兼事務所)が戸建てで、断熱材が寒冷地さながらに入っていたので防音効果もあったのでしょう。近隣にも恵まれて、一切苦情は来ませんでしたが、以前住んでいたマンションだったら追い出されそうなほどの鳴き声でした。
チョコとの別れ
チョコはとにかく食欲旺盛な犬だったので、寝たきりになっても、お団子状にしたドライフードを毎食ペロリと平らげていました。お団子状にすると与えやすくなり、事務所のスタッフもポンポン口に放り込んでいました。胃腸が元気だったせいか、寝たきりになっても元気でした。
そして、前日の夜までぺろっと食べていて、翌朝にちょっと息が荒いなと思い動物病院へ連れて行く間に、チョコは亡くなってしまったのです。苦しまずにコロっと逝ってしまいました。寝たきりになって5カ月目、ウチに来て3年ちょっとでした。推定18歳、大往生でした。
かわいいチョコさん。天国でもいっぱい歩けるといいね。
「老犬の介護」は、チョコが初めてでした。柴犬の介護が大変だという話は聞いたことがあったのですが、実際に経験して、あの鳴き声が大丈夫なマンションはあるのだろうか?と思いました。24時間体制でお世話ができたのでどうにかなったけど、皆さんはどうしているのだろうかと、老犬介護は思いのほか大変でびっくりしました。
次回はベリオのその後のお話しです。
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