マシンガンのようにほえ続けた保護犬 トレーニングの効果があり譲渡間近と思った矢先
保護犬の預かりボランティアをする、インテリアデザイナーの小林マナです。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫1匹と、預かり犬1匹と生活をともにしています。第27回は「あんなにほえていたベリオ、これなら譲渡されるかも!?」をお伝えしていきます。
人懐っこいおとなしい犬になった
保護犬の「ベリオ」(推定10歳、中型犬)の預かりボランティアをはじめてから2カ月目。分離不満でほえ続けていたベリオが、不満解消のために私のそばにいさせるようにしたら、とうとうほえなくなったのです。そのほかに困ったことといえば、室内で粗相をしてしまうことくらいで、人懐っこい甘えん坊のおとなしいベリオになりました。
そこで早速、トイレトレーニングとお散歩時のそばについて歩かせるトレーニングもスタートさせたのです。従順な性格なので順調に覚えていってくれました。
ある時、お散歩中に会う犬連れの方から「何歳ですか?まだ若いでしょう?かわいいですね~。よくお見かけして本当に飼い主さんのことが好きなんだなっていつも見てました」と言われたのです。ベリオは推定10歳のおじさん犬ですが、私の方を向いてコミュニケーションがとれるようになっていたので、若々しく、楽しそうに見えたのでしょう。笑ってしまいますが、若い犬に間違われました。
それから仕事用のデスクの下に置いていたベリオのベッドをケージに変えて、ケージトレーニングも始めました。ベッドをケージに変えても、私が席に着けばベリオはそそくさとケージの中に入ってきました。そして少しずつ、ケージの扉を閉めても待っていられるようになったのです。
譲渡されるかもしれない!
私は、1匹でも多くの保護犬を助けたいという気持ちで、預かりボランティアを始めました。1匹譲渡されれば、新たにもう1匹預かることができます。問題行動が少なくなれば、おじさん犬だろうと譲渡の可能性はあるのです。この頃、ベリオともそろそろお別れの時が来たかもしれないなと思い始めていました。
どんな大きさの犬でも、人懐っこくて従順で、目を真っ直ぐ見てくれるのはうれしいものです。大きくて太い尻尾をブンブン振ってくれるのもうれしいものです。
私と離れるとマシンガンのように鳴き続けるという問題行動があったベリオでもこんなに変わるんだと、驚きを隠せませんでした。危険性はなかったものの中型犬に四六時中ほえられたら、飼える家はほとんどなかったでしょう。きっと前の飼い主もうるさくて手放したのかもしれません。
トレーナーの指導というよりは、トレーナーの「分離不満を解消しましょう」というひと言で全ては変わったのです。魔法のような言葉でした。
ベリオの様子がおかしい
ある朝、後ろ脚をちょっと引きずってるベリオに気がつきました。「え?老化?」と、ようやく譲渡できそうな矢先だったのでびっくりしました。犬の後ろ脚の衰えは、老化の1番わかりやすいバロメーターだからです。多くの老犬を見てきてわかったのですが、そこから急に老化が進んでしまうのです。
ところがベリオを病院に連れていくと、これは「老化ではなく神経性のものかもしれない」とCTスキャンを撮ることになったのです。なんと結果は、骨髄に腫瘍(しゅよう)が見つかってしまったのです……。脚の神経を圧迫して、後ろ脚に影響が出ているということでした。なんということ……。本当に悲しい出来事でした。
私に会ったその日に恋していつもべったり一緒だったベリオ。その日から、譲渡のことはもう頭からなくなりました。そして獣医師に「あと1カ月くらいの命だろう」と言われ、私はベリオとの最後を楽しく過ごそうと決めたのです。
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