保護した猫親子の飼い主探しで募る焦り 現れた救世主からの学びを活かし、ついに…!

「福」は元気です。2023年もよろしくお願いします

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット作をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、困り顔の元保護犬「福」と元野良猫の「とも」「もえ」と暮らしています。

 今回は自宅前の茂みで保護した猫親子の話、第6回。新しい飼い主探しに突入です。これまでの経緯は、前回までの連載をお読みください!

3匹一緒でいてほしい

 今回、捕獲前から相談にのってもらっていた近所で保護活動をされているボランティアさんには「子猫はすぐに新しい飼い主さんが見つかると思いますから協力できますが、母猫は野良なので無理です」と言われていました。なので、猫親子を捕獲すると心に決めたときから、もしも母猫に名乗りをあげてくださる方が見つかれなければ、自分で面倒を見よう、そう決めていました。

ケージの外でもくつろげるようになった「マミコ」

「TNR(捕獲後に避妊手術をしてリリース)しては?」という意見もありましたが、その選択肢は初めから頭にありませんでした。しかし、できることなら3匹一緒、いや、なんとか親子3匹一緒に面倒を見てくれる方を探したい!ハードルは高いけれど、目指すはそこです。

気持ちが焦る

 とは言ったものの、言うはやすし。野良猫3匹をまとめて家族に迎えられそうな条件が整っている方は、そう簡単には見つかりませんでした。だいたい、猫が大好きで、そこまで愛あふれる人はすでに複数の猫を自宅で飼われていることも多いのですから。

 友人、知人経由で心当たりを片っ端からあたってみましたが、残念ながら見つかりませんでした。なんとか見つかっても、保護猫を飼った経験がなかったり、先住の猫との問題があったり、決まりかけたタイミングで妊娠が発覚したり……。いろんな理由で決まるには至りませんでした。

 時間だけが刻々と過ぎていき、じりじりと気持ちは焦るばかり。だって子猫たちは食欲旺盛ですくすくと大きくなってきますから。“小さいうちは飼い主が見つかりやすい”、それは本当にそうなので、そのタイミングを逃してしまう焦りです。

情がどんどん湧いてしまって手放せない気持ちに……

 それにとーさんとて、情がどんどん湧いていきて、ああ、どうせ見つからないし、もうこのまま僕が3匹まとめて飼っちゃおうかなあ……ついついそんな気持ちにふらふらと揺れる日々。ちょっとずつなでたり、遊んだりできるようになるにつけて、可愛さがぐんぐん増していきます。

「だめですよ!そんな一時の感情に惑わされていい加減な決め方をしては。そもそも猫5匹に犬1匹、ひとりで飼うのがどれだけ大変かわかってますか?」。経験豊富な友人からは弱気になっていることを見透かされたようにピシャリとひと言。まったくその通りですね。はい。いつも甘いんです……。

救世主!現る

 そんな折、インスタグラムでつながっていた@teko1010さんからDMで「もしよかったら相談にのりますよ」と連絡が!!@teko 1010さんは「一般社団法人Torch for Animals」の代表理事で、長年保護活動に携わってこられた方。とくに傷病猫たちの支援保護活動を積極的に行なっています。

 とーさんが途方に暮れている様子がインスタのポストを通じて伝わったのでしょうか……。このときほどうれしかったことはありません。もう堰を切ったように、現状報告とどうしたらよい新しい飼い主さんに巡り会えるのかなどなど、ありったけの悩みをぶちまけてしまいました(いきなり迷惑な話ですよね……)。

目からウロコの学びの数々

 そんなズブのしろーとのとーさんに、@teko 1010さんはやさしく、丁寧に一つひとつ教えてくれました。

 まず一番にほへーーっと思ったのは、「知り合いや知人のつてではなく、インスタグラムなどを通じて広く募った方がよいですよ」という話。素性を知らない見ず知らずの人に猫ちゃんたちを託すことに少なからず抵抗があったとーさんとしては、まさに目からウロコ。いわく、知り合いだとかえって遠慮して、肝心なことを確認することに抵抗が生まれたり、ときに厳しいことも言わなければならない場面でそれができなかったりするから、むしろ知人以外の方がいいと。

 そして、その方の考え方や覚悟を知るために事前に細かなアンケートに答えてもらうやり方を教えてもらいました。アンケートには、保護猫を迎えたい理由、住居形態や家族構成などはもちろんのこと、これまでの飼育経験やその動物たちへの思い、向き合う姿勢や考え方、ほかにもさまざま質問が網羅されています。このアンケートに丁寧に答えてくださるかどうか、それだけでもかなりのことがわかってしまうのです。

新しい飼い主募集のときはとにかく可愛い写真を載せることは大事だって。あざといくらい

 ちまたでは「飼い主に応募したいけど条件が厳しすぎる!」というような声もちらほら聞こえてきます。でも、世の中には本当にいろんな人がいらっしゃるようで、詐欺や虐待など、にわかに信じられないようなことを目的に保護猫たちに近づいてくる人が確かにいるのです。

 また、そこまで悪質でなくとも、せっかくよい人だと思って猫を託したところ、さまざまな理由で飼育放棄されることもあるなど、たくさんの経験を経た結果、念入りなアンケートや譲渡契約が絶対不可欠という結論に至ったというお話も聞きました。そう、大切なのは猫たちの幸せなのですから、遠慮したり、気を使ったりする必要はないのです。

心に染みた@teko 1010さんの言葉

 そして、焦る心にいちばん響いた言葉は、「かわいい盛りの子猫は誰でも欲しがって、あまりよくない人がきてしまいがちですし、少し大きくなって性格もはっきりしてきたくらいのほうがいい」、そして「諦めなければ必ず新しい飼い主は見つかるもの」という言葉でした。

 さらに、僕が自分の経験のなさに落胆し、自信をなくしていると、「きっと大丈夫なので気を楽に。ただ単純に、猫に素敵な家族を見つけてあげようとだけ思っていればいいと思います」と声をかけてくださいました。なんてやさしいんだ……つい泣けてきました。

 僕のところにも、野良猫保護に向き合って思い悩んでいる人から時々メッセージがくるのですが、やってみると本当に、いつしか心が追い詰められてくるんですよね。そんなときにこの言葉、本当に心に染みました。

飼い主を探していく

 それから勇気を出して、インスタグラムでライブをしながら猫親子のことをみなさんに見てもらい、飼い主を探していること、希望の方はメッセージをくださいということを発信していきました。するとすぐに「もしわたしでよかったら」と手を上げてくださる方が続出しました。3匹一緒にという方ばかりではありませんでしたが、それでも本当に多くのやさしいみなさんが手をあげてくださったことに感激しまくりでした。

親子でやりたい放題。わんぱく……

 そんなやさしいみなさんに、心を鬼にして覚悟を問うアンケートを実施しましたが、そこにもみなさん丁寧に答えてくださりました。逆にどの人も適任のように見えて、今度はおひとりに決めるのに迷うという贅沢な悩みに!!

 結局、アンケートを何度も読み直し、それぞれのみなさんと個別にメールでやりとりさせていただいた結果、一番に手を上げてくださり「もしも誰も決まらなかったら、私を頼ってください」と書き添えてくだった秋田県の方に猫親子を託すことに決めたのです!!(まだ続きます)

(次回は2月18日公開予定です)

【前の回】庭に現れた猫の親子 無事保護したもののさあどうする!? 慌ただしい日常がスタート

小林 孝延
編集者・文筆家。出版社在籍中は『天然生活』『ESSE』の元編集長、『ハニオ日記』石田ゆり子著ほか、ライフスタイル系の雑誌・書籍を多数手がける。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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