「死」があるからこそ「生」に意味がある 15歳の愛犬を亡くして学んだこと
いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。
2006年生まれのウェルシュ・コーギー・ペンブロークの「リトル」くん(享年15歳)は、2021年9月にお空へ旅立ちました。15年間共に暮らした飼い主の友美さんに、リトルくんの死を通じて学んだことをお聞きしました。
15歳の誕生日の直後に膵炎が発覚
――亡くなった愛犬のお名前を教えていただけますか?
リトルです。男の子で、15歳で旅立ちました。
――リトルくんはなぜ亡くなったのですか?
膵炎(すいえん)からの急性腎不全でした。
亡くなる少し前に、食いしん坊だったリトルが突然食べなくなり、おかしいなと思って病院へ連れていきました。
1回目の受診のときは、どこかが炎症を起こしているのかもしれない、という診断だったのですが、食欲が戻らないので翌日また受診して血液検査をしたところ、膵炎だとわかりました。8月7日の15歳の誕生日を迎えて少し経ったころで、対症療法として炎症止めの投薬と食事療法をしていました。
――それまではずっと元気だったのでしょうか?
変性性脊髄(せきずい)炎で、お散歩中に脚が震えることがあり、15歳の誕生日を迎えたころから足腰がかなり弱り、排尿が難しくなっていたので、マナーウェアを着けて、少しですが介護が必要な状態でした。食欲不振もそれが原因だと思っていたので、内臓の病気が見つかって驚きました。
――膵炎が見つかってから亡くなるまで、どのくらいでしたか?
1カ月弱しかありませんでした。投薬で一時期は食欲が戻ったものの、また食べなくなり、その後は寝たきりになりました。
振り返ると介護は尊い時間だった
――リトルくんが亡くなって1年3カ月経ちますが、今はどのようなお気持ちでしょうか?
不思議なんですけど、悲しいとか後ろ向きな感情はありません。それは、亡くなる前の1カ月弱、リトルとしっかりと向き合う時間があったからだと思います。
――どのような1カ月を過ごされたのでしょうか?
少しずつ弱っていくリトルと向き合う中で、いつまでも一緒にはいられないのだと覚悟ができていきました。この子に触れられなくなるのも時間の問題だから、言葉が通じなかったとしても、気持ちを伝えていこうと、耳のそばで毎日「愛しているよ、ありがとう」と言い続けました。
元気なころよりも、その最後の時間がとてもいとおしく、弱っていくのは悲しいけれど、同時に尊いなと。リトルの存在の大きさがリアルに感じられました。その1カ月間がなければ、きっと心の整理がつかなかったと思います。
――リトルくんは、友美さんに心の整理をする時間を与えてくれたのですね。
私も、当時小学5年生だった娘にも、その時間がとても貴重なものとなりました。娘は生まれた時からずっとリトルと一緒にいたので、亡くなったことはとてもショックだったようですが、彼女にとっても「生」や「生きるとは」という学びにつながったと思います。
「生」と「死」は表裏一体
――友美さんとお嬢さんにとって、「生」や「生きるとは」について、具体的にどのような学びがあったのでしょうか?
「生きているものには、どんなものにも限りがある」ということに尽きますね。そしてそうであるのなら、「生」とどのように向き合うのかを考えさせられました。
リトルは立てなくなっても前脚だけで動いて頑張っていました。やれることをそのときの状況で精いっぱいやっていました。そんなリトルを見て、自分も常に前を見て、その日をとにかく大事に全力で生きようと思えるようになりました。一日一日を大切に生きるということです。
――逆に、友美さんにとって「死に向き合う」とはどういうことですか?
全てを受け入れることでしょうか。漠然としていて言葉にするのは難しいのですが、真逆であるようで「生」と「死」はつながっていると思います。
死があるからこそ、生に意味があり、後悔のないように真摯(しんし)に向き合えるのではないでしょうか。たとえそこに後悔が生じたとしても、それに気付いて向き合えたかどうかで、結果が変わってくると思うんです。
私はそれに気付けたからこそ、1カ月弱、全力でリトルの介護に向き合えました。その最後の1カ月を与えてくれたことがとてもありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。期間でいえば短いですが、とても濃密だったので、心が整っていきました。「死」をもリトルのすべてとして受け入れることができました。
現在12歳になるお嬢さまよりも先に、リトルくんと一緒に暮らし始めた友美さん。リトルくんが亡くなった当初は、とてもつらかったそうです。取材中は必死に涙をこらえながらお話しされ、リトルくんの死から学んだことを心に刻み、前に進んでいくという強い気持ちを聞かせくれました。
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