2018年のるしあ君(なおみさん提供)
2018年のるしあ君(なおみさん提供)

「僕、お姉ちゃんのところに行ってくるね!」 愛犬は先住犬を追いかけて旅立った

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 2019年1月、飼い主のなおみさんは愛犬のるしあ君(享年10歳)をお見送りしました。なおみさんに、るしあ君の性格、亡くなったときのこと、後悔していること、現在のお気持ちをお聞きしました。

(末尾に写真特集があります)

ほえない、やさしい男の子

――るしあ君はどんな子でしたか?

 とってもやさしくて、先に亡くなった先住犬の「しえろ」のことが大好きな男の子でした。

――2匹は仲良しだったのですね。

 そうですね、しえろとるしあは9年間一緒に暮らしていました。るしあの犬生のほとんどがしえろと一緒だったんです。しえろがお空へ行って、そのとき初めて、動物同士でのロスというものがあることを知ったんですよね。

――しえろちゃんが亡くなったとき、るしあ君を見てそう感じたのでしょうか?

 るしあはやさしい子で、人に対してほえることはなかったんですけれど、しえろが亡くなったときに来てくれた人たちに対して「しえろに近づくな」という感じで歯をむき出しにして怒っていたんです。

 その後、るしあは元気がなくなってしまって、飼い主がロスになれないくらい落ち込んでいました。そんなるしあにどうしてあげたらいいのかと考えて、しえろが亡くなった半年後に、新しい子をお迎えしました。

毎年行く成田山詣。2匹で3キロほどだったので、同じバッグに入っていることが多かった(なおみさん提供)

入院、そのまま戻らなかった

――るしあ君が亡くなった状況を教えてください。

 亡くなった日、るしあの呼吸が苦しそうだったんです。私は翌朝から仕事があったので、病院に預けたほうが安心だろうと、夕方に動物病院に預けました。でも、夜11時ころに病院からるしあが急変したと電話がありました。珍しく早く帰宅していた夫と、着の身着のまま病院に駆けつけました。

――亡くなった原因は何だったのでしょうか?

 呼吸が苦しくなっていたので、心臓弁膜症からくる肺水腫かもしれないと言われましたが、正直、原因はあまり関係ないというか……。今振り返ってみると、るしあはこの世界のミッションを終えて旅立ったのだなと思います。呼吸が苦しくなってからあっという間に逝ってしまったので。もともと体の強い子ではなく、「やっと大好きなしえろのところに行ける」という感じで、彼は幸せだったのかなと思っています。私はつらかったですけど……。

入院する前、自宅で酸素吸引をしていたるしあ君。この時この写真を撮っておいて良かったとなおみさん(なおみさん提供)

後悔は残るけど5年経ち軽減した

――るしあ君のことで後悔はありますか?

 るしあはどちらかというと活発なほうではなく、男気があって弱い姿を見せない子でした。彼が本当に楽しんでいることや、やりたいこと、または興味があったかもしれないことを、私は見つけてあげられなかったかもしれません。体調が悪くてもあまり表に出さない子で、元気がない時もそんな様子は見せませんでした……。

 また、私がドッグケアスペシャリストとして、犬にかかわる仕事をしているので、入院しても「この子は大丈夫だ」と変な自信があったんですよね。その自分のおごりから、小さいことを見逃していたのかもしれないとしばらく後悔していました。

 でも5年経って後悔はだいぶなくなりましたね。るしあは「僕、格好いいんだから」という感じだったので、潔く旅立って、大好きなしえろに会えたのだなと受け入れることができるようになりました。

――愛犬2匹のみとりを通して「ペットの死に向き合う」とはどういうことだと思いますか?

 毎日、一日一日を後悔しないために、今できることをすぐにやることだと思います。別れるのはつらいですよね、ただ、彼らは旅立つタイミングを自分自身で決めていると思うんです。だから飼い主は、それを受け入れなければならいですよね。

 大切なのは、彼らが旅立つまでに何ができるかということです。なでてあげる、おいしいごはんあげる、などなんでもよいと思うのですが、「あれをやっておけばよかった」という後悔を残さないこと。そして、彼らが生きている間に一緒に楽しく過ごすことが何より大切だと感じています。

2010年、散歩コースの河原で笑顔の2匹、最高の一枚(なおみさん提供)

<取材を終えて>
 取材の中で、5年という時間が流れ、悲しみからだいぶ立ち直ったと話してくださいましたが、後日「ダイニングの私の隣の椅子にるしあが座っていたマットがありますが、いまだ洗えません。るしあの席なのかなと思っています」とメールをいただきました。時間が経っても割り切れないことがあるのだと、愛犬を亡くした経験のある筆者も同じように感じています。

【前の回】リンパ腫わからず11歳で旅立った愛猫 生まれ変わってまた会える日が来ると信じてる

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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