ネコの年齢がDNAでわかる!? 老化や加齢による病気への治療にも役立つ可能性
一緒に暮らしているネコの年齢を気にすることはありますか? 歳を重ねると、少し食欲が落ちてきたり、あまり遊ばなくなったり。病気だけでなく、老化現象についても気になる方も多いでしょう。ネコの平均寿命は室内飼いの場合だと16.22歳(ペットフード協会、2022年)といわれています。生まれた日がわからない保護猫などの場合、年齢は獣医さんによって歯や目の状態で推測してもらうことができますが、本当の年齢はわかりません。
ところが近年、さまざまな動物の研究でDNAを調べることで年齢がより正確に推定できるようになってきました。そこで今回はネコの年齢についてDNAを調査した論文 " Epigenetic clock and methylation studies in cats "を紹介します。
DNAから年齢がわかる!?
動物や人の血液などの細胞から採取したDNAには、それぞれの動物の設計図である遺伝子の情報があります。DNAは通常、生涯変わることはありませんが、メチル化という遺伝子の装飾は、喫煙や加齢といった環境の影響によって増えることがあります。このメチル化が遺伝子のスイッチのオン・オフを制御しているというイメージです。がん細胞で例えると、通常ならばがんを抑える遺伝子をオンにしていますが、加齢などでメチル化するとオフになりがんになる、といったことがおきます。
近年、DNAを採取することでメチル化の程度を調べることができ、さらにその程度によって年齢が推定できることがわかってきました。これは暦の年齢とは異なる「生物学的な年齢」です。すなわち、細胞がどれくらい老化しているかというのがDNAメチル化の程度によってわかるのです。例えば、見た目が50歳でもDNAメチル化で調べると生物学的な年齢は30歳だった!なんてことがあるかもしれません(もちろん逆のパターンもあり得ますが)。
遺伝子の情報やDNAのメチル化の程度は動物や植物によって異なります。英国公衆衛生庁とカリフォルニア大学らの研究チームは、ネコ科動物などのメチル化を調べることで、ネコの年齢を推定できるのではと考え調査をおこないました。
ネコの年齢を調べることで老化のことがわかるかも!?
研究チームはまず、0~20歳のさまざまな品種(ペルシャやメイン・クーンなど23種)のネコ130匹の血液サンプルからDNAを抽出し、メチル化の程度を調べました。そして次に、人のメチル化の程度とどの程度関連するのか相対年齢を調べました。この相対的な年齢比がわかれば、人とネコなど寿命が異なる動物の年齢を比較することができます。
結果は血液から抽出したDNAからネコの年齢を正確に予測することができました。誤差は1歳以下だったそうです。また、人と共通の時計を使っても、ネコの年齢を正確に予測できました。相対年齢に換算することで人との年齢も比較ができることになりました。
一般的に1歳のネコは人の15歳、2歳は24歳に相当し、その後は1年で4歳ぶん歳をとると言われていますが、この方法では正確に年齢を推定できません。実際に血液を採取することは難しいかもしれませんが、正しい年齢を知るためにはDNAメチル化を調べる必要がありそうです。
この研究では、人と暮らしているネコだけでなく、チーターやライオンといったほかのネコ科動物やモルモットやウサギといったさまざまな哺乳類も同時に調査し、同じ時計をつかえることがわかりました。ネコにおけるDNAメチル化の研究は単に年齢を推定するだけでなく、老化や加齢による病気への治療にも役立つ可能性があるとのこと。もちろんネコだけでなくさまざまな動物のためにも、今後のDNA研究の進展に期待したいです。
今回ご紹介した論文
Epigenetic clock and methylation studies in cats
執筆協力:荒堀みのり(京都大学)
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