なぜ長生きするネコとそうでないネコがいる? 避妊去勢手術と飼育環境の影響を探る
ネコと暮らし始めると、その楽しさに日々があっという間に過ぎていきます。しかし、ネコはヒトよりも圧倒的に寿命が短い生き物です。果たして、ネコはどのくらい長く生きるのでしょうか。今回は、ネコの寿命と長寿に関連する要因を調査した論文“Longevity and mortality in cats: A single institution necropsy study of 3108 cases (1989–2019)”を紹介します。
ネコは何歳まで生きるのか
近年、ネコと暮らす人が増えるにつれ、ネコの老化や寿命についての研究にも注目が集まっています。しかし、イヌに比べてネコの寿命や死因に関するデータは少ないため、なぜ長生きするネコとそうでないネコがいるのかはわかっていません。
そこで、カリフォルニア大学の研究チームは、1989〜2019年の30年間に同大学に付属している動物病院に、死後解剖の目的で来たネコたちを対象とした調査をおこないました。対象となったのは3108匹のネコたちです。
調査の結果、死亡時の年齢が判明した2974匹のうち、死亡時の年齢の中央値は9.07歳で、1歳以上まで生きたネコだけに絞ると9.92歳でした。イギリスの別の研究では14.0歳だったので、今回のデータとは異なりました。これは解剖に届けられたネコを対象としていたこと、また、病気などで安楽死したネコが多かったために違いが出た可能性があります。
また死因につながる病気(診断名)としては、がんが35.8%と最も多く、次に腎不全が10.8%、猫伝染性腹膜炎(FIP)が6.7%、心臓病が5.2%でした。がんが確認された症例およそ1,300件のうち、がんが死因となっていた割合は8割を超えていたとのことです。
避妊去勢で寿命が延びる!?
調査によると亡くなった時の年齢(中央値)は、避妊手術をしていないメスネコでは1.05歳でしたが、避妊手術をしていたメスネコは10.28歳と大きく差がみられ、統計的にも有意な差がありました。これは1歳以上のネコを対象とした場合も、避妊手術をしていないメスネコは4.68歳、避妊手術をしていたメスネコは10.48歳となり、同じく差がみられたとのこと。
オスネコに関しても、亡くなった時の年齢(中央値)は、未去勢のオスネコは0.79歳、去勢済みのオスネコは9.55歳でした。1歳以上に絞って調べた結果も、未去勢のオスネコは3.67歳、去勢済みのオスネコは9.84歳と有意差がみられました。避妊去勢手術によってこれほどまで差が見られるというのは驚きです。
また、室内飼いのネコが亡くなった年齢(中央値)は9.43歳でしたが、半室内飼いは9.82歳、外飼いは7.25歳でした。さらに、猫白血病ウイルス(FeLV)陽性のネコが亡くなった年齢(中央値)は3.89 歳でしたが、FeLV 陰性のネコは 8.70 歳でした。一方、猫後天性免疫不全症候群(FIV)陽性のネコは9.19 歳で陰性ネコの8.65 歳と統計的にも差はみられませんでした。
この調査では病院で解剖に回されたネコを対象としていたため、データに偏りがある可能性があります。また、日本とアメリカでもネコの飼育環境は異なるため、このデータが日本で暮らしているネコたちに当てはまるかはわかりません。
しかし、ネコにおいて不妊手術が長寿に関係しているということが示されました。手術により体内でホルモン分泌などの変化が起きて長寿になっているのか、はたまた別の要因があるのかは明らかになっていません。一方、屋外飼育による寿命が短くなることは明らかなので、ネコと長く一緒に暮らしたいと考えるならば屋内飼育を推奨します。
今回ご紹介した論文
Longevity and mortality in cats: A single institution necropsy study of 3108 cases (1989–2019)
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