猫コロナウイルスを発症 迎え入れて7カ月、わずか2歳で亡くなった愛猫への思い
いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。
2016年1月8日に雑種の保護猫のふうすけ(享年2歳8カ月)をみとったかずみさん。かずみさんが保護猫カフェから引き取ってわずか2カ月で、ふうすけくんはFIP(猫伝染病腹膜炎ウイルス・猫コロナウイルスの一種)ドライタイプを発症し、その5カ月後に亡くなりました。早すぎる旅立ち、FIPという治療法の無い病気と向き合った日々、そして、現在のお気持ちなどをお聞きしました。
家族になって2カ月で愛猫がFIPを発症
――なぜ、ふうすけくんのFIP発症に気が付いたのでしょうか?
引き取って2カ月くらいたった夏ころから、好きなカリカリのご飯を残すようになりました。1粒残し、2粒残し、5粒、10粒、と食事を残す量が増えていきました。半分くらい残すようになったので、保護主にそのことを伝えたら「フードが飽きてきたのかも」と言われてフードを変えてみたりしたのですが食欲は戻りませんでした。
そしてある日、ふうすけがダルそうな格好でどうも普通ではないと思い病院へ走りました。血液検査をしたらFIPドライタイプを発症していたことがわかりました。
――根治が難しいと言われているその病名を聞いてどう思いましたか?
もともとその病気の事は知っていたのですが、ふうすけが病名を宣告されたとき、「この子との運命を受け入れるしかない」と覚悟をしました。獣医から治療は対症療法しかないと言われ、「もしかしたら明日死ぬかもしれない」と思いながら過ごしていました。
何が正解だったのか いまだわからない
――発症してから亡くなるまで、どのような対症療法をしていましたか?
最初の病院では、インターフェロンとコンベニアという抗生物質の投与でした。でも、ふうすけの高熱は下がらず食欲も出ず、体力も落ちていきました。
当時かかっていた動物病院には4人の獣医師がいて、あるとき、ひとりの先生に熱が下がらないことを言ったら、その先生がぼそっと「インターフェロンって体に悪いんやけどな」と言ったんです。その時に頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。
――それで対症療法をやめたのでしょうか?
「対症療法をやめたい」と保護主に伝えたところ、同じ動物病院の他の先生の意見を聞いた方がいいと言われたのですが、勤務獣医師達の方針のズレがあるような医療機関にふうすけを任せておけないと思い、他の動物病院に行く事を決めました。そちらの先生が「抗生物質だけで」と言い切ってくれたので、抗生物質だけ続けることにしました。
抗生物質だけに変えてから、熱が少し下がり、体も少しですが動かしやすくなったからか、食事の量が元気なころの半分くらいまで戻り、だるそうな格好もしなくなっていきました。でも進行の早い病気なのでまた食事の量が減ってしまい、強制給餌(きゅうじ)を始めました。以前テレビで強制給餌の様子を観て「つらいな」と思ったことがあったので抵抗感があったものの、一日も長く生きていてほしいと願って、亡くなるまで強制給餌をしていました。
ペットロス? 聞こえないはずの鈴の音が聞こえる
――亡くなったときのことを教えていただけますか?
引き取ってから7カ月、それまで毎日2階に上がって来るはずのふうすけが来ないので、おかしいなと思い見に行ったら、ふうすけの部屋でぐったりしていました。すぐに病院へ連れて行ったところ、極度の貧血でした。
病院から自宅に戻りしばらくして、「クックッ」と鳴いていましたが、少ししてから息を引き取りまた。
――ふうすけくんが亡くなって、ペットロスになりましたか?
自分はペットロスとかにはならないだろうと思っていました。ふうすけが亡くなったときもすぐに涙は出ませんでした。
「これだけ苦しんだ子をこのまま家にいさせたらダメだ、早く空に返してあげないと」と、泣く暇なく、すぐに火葬してくれる場所を探して、その日の夜に火葬をしました。苦しんだこの現実世界から、早く次の世に旅立ってほしいなと思ったんですよね。
そして、次の日が土曜日だったのですが、1日何をすることもなくベッドでぼーっとしていたら1階からふうすけが来る気配と鈴の音が聞こえて、無意識に「ふうちゃん、寝よか」と言っていました。その時「自分はなんてことを口走ったんやろう」と、初めて涙があふれました。これがペットロスかなと感じました。
――現在のお気持ちは?
ふうすけが亡くなったあと、ふうすけのいない家にいるのがつらくて、大阪府の保護猫の譲渡会に行ってみたんです。そこで猫を見ていたら気持ちが少し落ち着きました。翌週も譲渡会に行ったところ、たまたま大人猫でどてっとしていた子がいて、その子をとんとん拍子に迎え入れることになりました。その後3匹目もお迎えしたのですが、彼らがまた手がかかる子たちなんです。今は彼らがいてくれているから気持ちが沈むことがありません。
でも、私は「ふうすけの病気を発症させてしまい、救えないうえに苦しめただけではないのか?」という後悔と自分への嫌悪感、彼を失った喪失感をいまだに拭いきれないんです。この気持ちは自分が次の世に行くまで持ち続けるのだと思います。
保護猫を迎え入れて、7カ月でみとったかずみさん。わずか2歳8カ月という年齢で旅立ったふうすけくんの死を、6年経った今も深く心に刻み、日々を過ごしていらっしゃいます。インタビューの中で、「人間の医療は進歩しているけれど、猫の病気の治療は進歩していない、日本はペットの医療がすごく遅れているように感じている。また、患者の家族の気持ちを理解してくれる獣医師がひとりでも増えてほしいと願っている」とお話してくださいました。
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