「寂しさよりありがとうの気持ち」 18年間一緒に過ごしてくれた愛犬に感謝

白柴「ペットの死に向き合う」
寒いときでもマフラーを巻いて毎日海までお散歩をしたおここちゃん(写真提供:幸子さん)

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 2021年10月に柴犬のおここちゃん(享年17歳11カ月)をお見送りした幸子さん。2年間の介護の末、おここちゃんは眠るように静かに旅立ちました。優しくおとなしく、子供が大好きだったおここちゃんのお話をお聞きしました。

(末尾に写真特集があります)

悲しみに暮れていたときに来てくれた「おここ」

――おここちゃんはどのような経緯で、幸子さんのお宅で飼われることになったのでしょうか?

 18年前、東京に引っ越してきた当日に、当時飼っていた甲斐犬と紀州犬のミックスの先代わんこの「信玄」を悲しい事故で亡くしました。引っ越してきたその日に出て行ってしまい、後日、踏切で跳ねられて亡くなったことを知りました。ポスターなどを貼ってずっと探していたのですが……。跳ねられて亡くなった信玄を見つけて駅に連絡しました、という方がポスターを見て教えてくれたんです。

――それはとてもショックなことでしたね……。

 はい、あまりのショックで、毎日、毎日泣きながら歩いていました。あまりに私が泣いているので、娘が「お母さん、そんなに泣いていたら信玄が悲しむよ、またワンちゃんを飼おう」と言ってくれて。それで、静岡のブリーダーから、亡くなった信玄と同じ真っ白な柴犬をお迎えすることにしました。それが今年10月に亡くなったおここです。

白柴「ペットの死に向き合う」
幸子さんのお宅に来て間もない、生後3カ月頃のおここちゃん(写真提供:幸子さん)

近所のアイドルだったおここちゃん

――おここちゃんはどんな子でしたか?

 とても優しくて、おとなしくて、子供が大好きな子でした。東京から茅ヶ崎に引っ越し、自宅が小学校の通学路に面しているのですが、登校時間に毎朝子供たちが頭を撫でて「おここ、行ってきます!」と声をかけてくれるのが日課で、おここもその時間を楽しみにしていました。

 また、お散歩へ行くと、近所の釣り舟屋さんの方から毎日ジャーキーをもらうのも日課でした。まわりの犬友達にも人気で、おここは本当にいい子でした。

白柴「ペットの死に向き合う」
朝のお散歩コースで船をお見送り(写真提供:幸子さん)

亡くなる2年前から認知症、そして寝たきりに

――そんな元気で優しいおここちゃんの晩年を教えてください

 亡くなる2年くらい前から認知症がはじまり旋回をするようになり、前庭障害と肝機能障害も患っていました。

 最期の半年は自力で起き上がれなかったんです。でも、目が覚めると起きたがるので、歩行器に乗せてあげるのですが、そのまま寝てしまうという状態でした。

――介護は大変でしたか?

 12時間おきに外に連れて行って、膀胱(ぼうこう)を押して排尿させ、肛門(こうもん)を刺激して排泄(はいせつ)させるような日々でした。下痢をしてしまうと、お尻がただれてしまいますし、洗ってあげないといけないので、下痢をさせないように食べものには気をつかっていましたが、介護が大変だったと思ったことはありません。

――最後はどのように亡くなったのでしょうか?

 10月16日に亡くなったのですが、亡くなる1週間前から尿に血が混ざるようになり、2日前に病院に連れ行き、薬をもらったら出血は止まりました。でもその翌日から食べ方を忘れたかのように、ごはんを食べなくなり、水も飲まなくなりました。普段は食欲のある子だったので、いよいよだなと。今日でも明日でもおかしくないと心の準備はできていました。

 亡くなった当日の午前中、毎日ジャーキーをもらっていた釣り船屋さんのところまでカートに乗せてお散歩へ行き、かわいがってくれていた方に抱っこしてもらいました。その後、いつもの散歩コースをずっと歩いて、海まで行って、大好きだった岸壁に寝かせたら、頭をむくっと上げて海をしばらく見ていました。何かわかったんでしょうね……。帰り道では犬友達に会ったりして、あいさつをしながら帰宅しました。

 そして、帰宅して少しして「あれ」と思って見たら、眠るように亡くなっていました。

 私が願っていた「亡くなるときは苦しまず眠るように」という、その通りの亡くなり方でした。

白柴、歩行器「ペットの死に向き合う」
腰が立たなくなってからは老犬施設から借りた歩行器を使って歩いていた(写真提供:幸子さん)

なぜだか寂しさは感じない、まだ近くにいるようで

――おここちゃんが亡くなってまだ1カ月ですが、今のお気持ちは?

 それが、なぜか寂しくないんです。近くにまだいるように思うんです。いつもおここが寝ていたところに今はお骨かあるのですが、外から帰ってくると「ただいま」と、おここと目があってあいさつしているような感じです。

 寝るのは二階なので、お骨も持って行くのですが、おここを抱っこして連れていく気分です。

 正直、この2年間の介護生活でやれることは全部やったなと思います。

 床ずれして、毛も抜けて、これ以上生きていてもかわいそうだっただろうし、お互いつらかっただろうと。ほどほどのところで逝ってくれたと思います。

 今は一緒に過ごしてくれた18年間に感謝の思いでいっぱいです。

「ペットの死に向き合う」
今もおここちゃんのお骨と一緒に。18歳になる1カ月前の17歳11カ月で亡くなった(写真提供:幸子さん)

 インタビューの最後に「今後また犬を飼いますか?」とお聞きしました。

「人間、何歳になってもできないことは何もないと思っています。だけど犬を飼うことだけはもうできません。自分の年齢を考えて10年、15年先を考えると、無責任に飼えないですよね。生き物ですから。自分がどうなるかわからないし、散歩も連れて行ってあげられなくなるかもしれない。人間と同じような手厚い施設や、老犬専門のペットシッターさんなどが増えてくれば、老犬たちはもっと幸せに過ごせるかもしれないですけれどね」とお話してくださいました。

【前の回】生きて欲しかったから延命を選んだが、愛犬はどうだったのか?今も答えはわからない

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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