看取りは慣れないし毎回悲しい、それでも共に暮らしたい 高齢の保護犬を家族に

 いつか来るペットとのお別れの日――。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。

 今年1月に20歳の保護犬の「みねちゃん」をお迎えした和香子さん。その直前には元保護犬の愛犬・楽(らく)ちゃんをお見送りしました(享年推定年齢17歳)。今まで高齢の保護犬を5匹引き取り、お見送りをしてきた和香子さんに、その理由や思いを伺いました。

(末尾に写真特集があります)

快適な環境で天寿を全うさせてあげたい

――和香子さんは、動物保護団体から老犬を家族として迎え入れているそうですが、若い犬ではなく、なぜ老犬を引き取っているのですか?

 老犬って引き取り手が少ないんです。殺処分まで至らなかったとしても、保健所の冷たいコンクリートの上など快適とは言えない環境で、犬が最期を迎えることがないように願っているからです。

 老犬には老犬ならではのかわいさがあります。私が最初に飼った雑種の「さくら」は、生まれてすぐから飼いはじめたので、そのとき十分に若い元気な犬と過ごす時間を満喫しました。そして20歳20日まで生きてくれたさくらの看取(みと)りを通して、老犬のかわいさを知ったんです。

――「老犬のかわいさ」はどんなところですか?

 老犬になると、優しい顔になって、ぼんやり立っていたり、じっとこっちをみてぼーっとしていたり、時間がゆっくり流れる感じがするんですよね。また、若いころと違って頼ってきてくれる感じで、受け身になっていくんです。若いころのかわいさとは別のかわいさがある。それを説明しても、理解してもらえないことが多いのですが……。

老犬介護
楽、2019年10月。徘徊が止まらないけれど、プールの中はぶつかったり挟まったりしないので安心

老犬の介護は簡単なことではない

――私も経験したことがありますが、老犬介護って大変ですよね……。

 認知症になりずっと徘徊(はいかい)しているような子や、夜中にほえ続ける子などの介護は非常に大変です。夜は看病で眠れない日が続きます。今年の1月に亡くした楽のような認知症の子は本当にハードです。

 老犬専門のデイケアもあるけれど、「一度連れてきてください」と言われるんですよね。でもそこへ認知症が進んだ子を連れていくこと自体が難しい。じっとしていないので、車に載せてひとりで連れていくということができないし、ケージなどに入れると頭が変な方向に向いてしまったり。

 ペットシッターを頼んだりもしたのですが、老犬介護専門のペットシッターでないと難しいと正直感じました。

――楽ちゃんは薬などに頼る状態だったのでしょうか?

 私がいつも楽を連れて行っていた獣医さんは、安定剤などを使うことに積極的ではない方なので、サプリメントを3種類と漢方薬を使っていました。

 今はSNSなどで多くの方が情報を発信しているので、いろいろな情報を知ることができて便利ですが、下手にまねしたらいけないと思う事もありました。精神安定剤を飲ませてペットが亡くなってしまったというような話も聞いたからです。SNSの情報だけを信用せず、獣医さんに相談し、セカンドオピニオンも聞いたほうがいいと思います。

老犬介護
楽、2020年1月。かわいい絵柄の腹巻で介護を楽しく!

何度経験しても看取りはつらく、悲しい

――子犬の頃から飼っていた最初の犬と、老犬になってから引き取った犬たちと、亡くしたときの悲しみに違いはありますか?

 1匹目のさくらは十分世話をし尽くしたという思いがあったので、後悔はほとんどありませんでした。でも私は1カ月くらいぼーっとして、“心ここにあらず”な状態になっていました。

 その後の子たちでは、そういう状態にならなかったのですが、悲しいのは一緒です。老犬を引き取ると、一緒にいられる期間が短いので「もうちょっといてくれたらよかったなー」といつも感じます。

 4匹目のココアは2年ちょっと一緒にいたのですが、お散歩が好きな子だったので、毎日2時間くらい一緒にお散歩をしていたんです。その道を自転車で通ったりすると、今でも思い出して泣いちゃいますね。

――それでも老犬を引き取り続ける気持ちに、変わりはありませんか?

 看取ることは悲しいことですが、それ以上にその子の天寿を全うさせることができてよかったと毎回思います。“自宅で亡くなる”という当たり前のことが、当たり前にできなかったかもしれない犬たちだったので。

 まわりからは、看取りのボランティアのように見られることがありますが、そうではなく、老犬を家族として引き取っています。一緒にいられる期間が短くても、どの子に対しても愛情を持って飼ってお見送りしていますし、今後も老犬を引き取り続けると思います。

老犬
現在一緒に暮らしている、みね(21歳)。サロンできれいにしてもらったときの1枚

 現在21歳のみねちゃんは、和香子さんにとって6匹目の愛犬とのこと。今まで看取った5匹の犬たちにも愛情を持って向き合い、自宅で看取ってきたそうです。和香子さんのお話を聞き、保護団体にいる老犬を引き取ってくれる人が増えるといいなと思いました。

【前の回】愛犬の突然死 「体は小さいが存在は大きかった」今も家族であることは変わらない

岡山由紀子
某雑誌編集者を経て、2016年からフリーのエディター・ライターとして活動。老犬と共に暮らす愛犬家。『人とメディアを繋ぎ、読者の生活を豊かに』をモットーに、新聞、雑誌などで執筆中。公式サイト: okayamayukiko.com

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この連載について
ペットの死に向き合う
いつか来るペットとのお別れの日。経験された飼い主さんたちはどのような心境だったのでしょうか。みなさんの思いを伺います。
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