初めての猫との暮らし、マイペースな甘えん坊にメロメロ 夫婦関係にプラスの変化も

白黒猫
きょとん顔が可愛いぱと

 それぞれ実家で犬を飼っていた30代夫婦が、結婚9年目に、初めて猫を迎えることにした。すると、それまで思い描いていた猫のイメージが一変。ツンツンしない、よく甘える、犬みたいにボールをくわえてくる。猫ってこんな感じ?気づけば猫に癒やされ、夫婦もよりいい関係に……。二人と一匹の素敵な“新生活”を訪ねてみました。

(末尾に写真特集があります)

初めての猫はパトカー柄

 隅田川を望む東京都中央区のマンション。ここに、猫と初めて暮らす夫妻がいると聞いて訪ねてみた。

「今、ビビッて隠れてしまいました」

「出てきてくれるかな」

ひざに乗る白黒猫
「お客さんが来ても、ひざの上にいれば安心なんだ」

 謙太郎さん(36歳)と妻の愛子さん(37歳)が、筒形のハウスをのぞき込むと、窓から、マスクをかぶったよう可愛いお顔が出てきた。口の横に印象的なほくろ模様がある。

「この子がぱと、1歳4カ月の男の子です。パトカーみたいな柄なのでそう名付けました。真っ黒でなく(ツートンの)スモークグレーで、獣医の先生も毛をかきわけて、『珍しい毛だねえ』とおっしゃってました」

 優しく話す愛子さんの顔を、ぱとがじっと見つめる。愛子さんが手を伸ばすと、そのまま静かに抱かれてひざの上に。どうやらママっ子のようだ。そんな姿に謙太郎さんが目を細める。

「雄だから女性の方が好きかもねっていつも話しているんです(笑)。でも、僕は、ぱとと同じ場所(口の横)にほくろがあって、運命を感じたんですよね」

譲渡会前にアレルギー検査を受けて

 夫妻がぱとを迎えたのは昨年12月19日。年の瀬が近づくさなかだった。8年前に結婚したふたりだが、猫を飼うのはこれが初めて。愛子さんが説明する。

「私たちはお互いに実家で犬を飼っていました。いつかまた犬を飼いたいと思ったんですが、マンションなので、猫もいいかもと思うようになって。私の実家では保護犬を愛護団体から直接譲り受けていたので、サイトを探すうちにボランティアさんが集まって行う『ゆめネコ譲渡会』のことを知りました」

 しかし夫の謙太郎さんは、幼い頃に猫アレルギーでぜんそくを起こしたことがあった。以来30年くらい、猫から遠ざかった生活をして不安があったので、譲渡会に行く前にアレルギー検査を受けた。

 結果は、猫を飼っても問題ないとのことだった。それで自信を持って、会場に向かったそうだ。

白黒猫
家になれてきた頃。今より少しあどけないお顔(愛子さん提供)

 そして出会ったのが、ぱと。ぱとは銚子の民家の庭にきょうだいと住み着き、家の人から連絡を受けた東京のボラティアが車で迎えにいった子猫だった。「雰囲気が気にいった」がその場では決めず、1週間後にまた同じ譲渡会に出向き、申し込みをした。

「我が家に来てもらえると決まってからボランティアさんにいろいろ聞いて、ケージやトイレやごはんを用意しました。猫のために模様替えもして、粗大ごみもたくさん出して、まさに暮れの大掃除(笑)。環境を整えてその日を心待ちにしました」

 ふたりのわくわくに反し、ぱとは初日から隠れてしまった。シャーはしないものの、心を閉ざしたように隅から出てこない。そんなぱとを見て、愛子さんは、「抱っこなんてもう一生できないかも」と焦ったそう。

「初めてなので、性格によるものか、それとも猫はそういうものなのか、わかりませんでした。夜になるとずっと鳴いていたので、ふたりではらはらしながら見守っていました」

年が明けて猫も心機一転

 ところが、年が明けて間もなく、ぱとの態度が一転したという。ふたりが当時の感動を振り返る。

「急に心を開いたので、僕らもびっくりしました。新年になって、ぱとも『そろそろいいかな』と思ったのかな。あの時期を越えてからは、ぱとは何しても、されるがままでした」

「居間の椅子に座ったら自然な感じで乗ってきたので、あの時は狂喜乱舞だったよね(笑)。もともと、ボランティアさんの紹介メッセージに『マイペースな甘えん坊』と記してあって、『どこが甘えん坊なんだろう?』と思っていたのだけど、結局、その通りでした」

 家に来た時は3.2㎏で、手足や体がひょろっとしていたぱとだが、今は体重5キロ。獣医師に「フードの量を少し減らして」といわれるほど立派に育った。

「表にいたので、最初は条虫が出たり、目やにが出たり猫風邪の症状があったけど、すっかり元気になりました。ただ、誰かそばにいないと排泄(大きい方)ができず我慢するので、そこが心配。今は夫が主に在宅ワークで、私は外で仕事していますが、夫が出勤の日は、私が早めに帰るようになりました」

夫婦と猫
謙太郎さんと愛子さんの間で、「この家のお宝だい!」とちょっとどや顔

猫の魅力と生活の変化

 猫との生活は「とにかく新鮮」と愛子さんがいう。

「うちの実家の犬はできなかったけど、この子は投げたボールをくわえて人間の前に持ってくることができるんです。行動がわんちゃんぽいし、はっきりいって賢い(笑)」

 一方、謙太郎さんは、猫のデレデレとした姿に骨抜きにされた感じだ。

「犬はしっぽを振ってくるけど、猫はクールなものだと思いこんでいた。そうしたら違う面もあった」

 もちろんいろいろなタイプがあるが、ぱとは、「ツンツン感」がないそうだ。夜寝る時も、夫妻とぺったり一緒。

「もう、おじにゃんとおばにゃんは、完全にぱとさんの使用人と化しています(笑)、生活のリズムも変わりましたね」

 ぱとが来て、愛子さんは「かなり健康的」になった。ぱとに合わせ、朝起きるのが早くなったのだという。

「午前4時台に私の体の上に乗って、“ごは~ん”と起こすんです。最近は5時頃に落ち着きましたが、そのまま起きると時間があるので、朝活で勉強しようかなと。でも続かなかったのでひとりでお散歩してます(笑)。ぱとさんはぱとさんで、朝のちょい食いをした後は、隅田川の鳥や走る車や歩く人をニャルソック。工事作業の進捗(しんちょく)状況もくまなくチェック。外を眺めるのが好きですね」

眠る猫
ベロだし寝顔とピンクの肉球「僕にメロメロになっていいよ」(愛子さん提供)

夫婦間にも変化が

 謙太郎さんと愛子さんは結婚9年目。謙太郎さんの仕事の都合で4年間東北に住み、その後、東京に戻って4年。日ごろから仲はよいが、たまにぶつかったり、互いにむっとすることも。でも、ぱとが来てから変わったという。

「一緒に生活していると、気になるところが出てくるけど、ぱとさんが来てから緩和されました。たとえば夫の仕事が遅くなった時、前はひとりでさみしくなったけど、今は気にならならない。ぱとさんが話を聞いてくれるし」 

 愛子さんの言葉に、謙太郎さんもうなずく。

「お互いにカーとなっても、そこにぱとさんが(何も知らず)にゃーっと近づくと、それでクールダウンするよね。ぱとさんに悪いから、これ以上やめようってね」

 ぱとは、確実に夫婦間の緩衝材になっている。しかし、「まだまだ未知の部分もある」という。

「猫は犬に比べて少し複雑だけど、その複雑さが奥深さになっている。どう考えてるかわかっていくのが面白いけど」

「この子の考えていることを、徐々に知っていく楽しみがあるよね」

 こんな風に猫に魅了されたふたりは、最近、「もう1匹、猫がいてもいいね」と話しているのだとか。これからボランティアさんに相談をしてみるという。

「もし、雌の子猫とか迎えたら、ぱとはいいお兄ちゃんになりそうだよ」

「女の子の猫だと、おじにゃんも振り回されそうだけどね(笑)」

 笑顔のあふれる部屋で、ぱとが満足そうに、うーんと伸びをした。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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