猫ロスになった夫婦が迎えた兄弟猫 長女が生まれ、「3きょうだい」ですくすく成長
たまたま預かった猫がきっかけでペットロスになったことから、妻の妊娠中に2匹の雄の保護猫を迎えた夫婦がいる。やがて娘が生まれると、猫たちを「きょうだい」だと教えて、互いを尊重するように育ててきた。1匹の猫は片方の目が無いが、そんなことにもこだわらない。おおらかな愛にあふれる家を訪ねてみた。
妹の猫が帰国してキャットロスに
「こちらの目の悪い長男がナチョで、少し小柄な次男がニモ、ともに推定3歳。長女は世名(せな)で、1歳8カ月。大事なうちの“3きょうだい”です(笑)」
東京・世田谷の閑静な住宅地にあるタウンハウスを訪ねると、高橋玄さん(36歳)と妻の真矢さん(34歳)がヤンチャそうな兄弟猫と、可愛い盛りの世名ちゃんを紹介してくれた。
高橋さん夫妻が、ナチョとニモを迎えたのは、2019年5月。“猫がすごく欲しくなった”理由があったと、玄さんが教えてくれた。
「もともと僕は実家でも猫を飼っていたのですが、3年前、アメリカにいた僕の妹がスカイという猫と共に日本やってきて、この家に1年くらい一緒に住んでいました。その後、妹が都合でアメリカに戻り、スカイと僕らでしばらく暮らしていたんです」
スカイはカリフォルニア州で保護された雑種の猫だった。大柄だが臆病な面がある。だが高橋さん夫妻に心を許し、寝室でも一緒に寝ていた。
「そのままスカイをうちで飼う話も出たのですが、結局、妹が飛行機で引き取りにきました。スカイは、はるばるサンフランシスコからきて、今はロサンゼルスに住んでいます(笑)。いなくなったら、僕らが急にすごくさみしくなってしまって……」
存在感が大きかったために、生き別れのキャットロスになってしまったのだ。
片目のナチョがTV出演
そんな時に、横浜市のIKEA港北で保護猫の譲渡会を行う情報を聞きつけ、「猫を飼いたいね」と夫妻で見に行った。共働きのため、1匹で留守番をしていたスカイが時折さみしそうに見えたため、「猫だけで遊べるように」と2匹飼いを希望していた。
真矢さんはその時、妊娠5カ月だったがつわりもなく、猫と生まれてくる赤ちゃんとの共生にも大きな不安はなかったという。
「夫も私も主だったアレルギーがないし、赤ちゃんの時から一緒だとアレルギーを発症しないという話も聞いていたので、前向きに捉えていました」
譲渡会で夫妻が興味を持ったのが、1歳弱のナチョとニモの兄弟だった(当時の名は茶助と一茶)。騒がしい会場でも、2匹は動じない感じで好印象だったという。兄弟なら「仲良く留守番もできそうだな」と気にいった。
「ナチョは目が片方だけでしたが、ボランティアさんによれば、保護時におそらく猫風邪などの炎症のためすでに眼球を失っていて、目の中をきれいにして手術でまぶたを縫い合わせたそうです。ケージのそばにはテレビカメラがあり、何かと思ったら、ナチョの行き先をテレビ番組が追っていて……」
ちょうどその時、ある動物番組が、母と一緒にボランティアをする女の子を取り上げ、「片目を失った猫に、はたして引き取り手が見つかるのか」というテーマで密着取材をしていたのだ。夫妻がナチョとニモの申し込みをして正式にトライアルが決まり、猫たちが高橋家に届く時、自宅にクルーがやってきたそう。
「僕らはナチョの顔がまったく気にならなかったし、目が悪いことを特別だとも思っていなかったので、これってそんな大変なこと?と少し驚きました。ナチョは、両目のあるニモよりもむしろ活発だしね(笑)」
夫妻のおおらかでニュートラルな考えは、その後の子育てにもプラスになったようだ。
子供に伝えたい大事なルール
ナチョとニモを迎えて5カ月後の10月、真矢さんが無事に出産した。
家に赤ちゃんが来た時、2匹は「さほど関心を示さなかった」と、真矢さんが振り返る。
「猫が、赤ちゃんが寝ているベビーベッドに入ることがあるという話を聞いていたので、ごく最初の頃は、(猫の引っかきなどを防ぐため)世名が寝る部屋のドアは閉めていました。でも大丈夫でしたね。猫は遠巻きに、別にという感じで見ているだけだったので」
それでもナチョは昼間、世名ちゃんのベッドにそーっと近づき、寝ていたこともあった。ちょっとツンデレだったのかもしれない。
世名ちゃんの成長とともに、その関係性は少しずつ変化していったようだ。
「世名がまだ小さく寝ているだけの時は、そばに寄り添っていました。でも世名が動けるようになると、猫のほうから少し距離を置くようになりましたね。ナチョは静かな場所をうまく探して移動し、ちょっとシャイなニモは、ベッドの下に入ったりして」
世名ちゃんはつかまり立ちをする前、ハイハイをせずに、座りながらお尻で床を移動した。世名ちゃんが猫に近づき、体にぺたぺた触れたり尾をぱっと持っても、2匹は怒ったり引っかくことはなかったという。
そんな姿を見て、玄さんは「猫は我慢強く耐えているのかな」と感じることもあったという。そのため世名ちゃんが言葉を発する前から、こんな風に言ってきかせてきた。
「猫は『ユアブラザーズ(君の兄弟)』だよ、なでる時には『ジェントル(優しく)』と世名に話してきました。これは今も続けています」
夫妻は共にインターナショナルスクール(大学はアメリカ)出身なため、家の中での会話はほぼ英語。猫と付き合うルールも、娘に英語で教えている。
この夏にまた家族が増える
大きくなる妹を見守ってきたおにいちゃん猫と、その存在を当たり前のように感じ慕ってきた妹。
ここまで、心配ごとはすべてクリアして、猫も子どもも順調に育ってきた。
「今は猫も15歳とか20歳とか長生きするようだし、娘の中学、高校時代にもそばに猫がいると考えると楽しみですね」
じつはあと1カ月ほど経つと、もうひとり家族ができるのだと、真矢さんが教えてくれた。
「今日も病院にいきましたが、たぶんおなかの子は女の子。そう、8月になると、ナチョとニモにもうひとり、妹ができるんです。おにいちゃんたちにストレスがかからないよう十分に気を付けて、みんなで仲良く暮らしていきたいです」
そういって優しい笑顔を浮かべた。
新たな夏が、もうそこまで来ている。
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