22歳になった猫「はるまき」 2番目の家族と幸せな日々「出会うべくして会った」

茶白猫
茶白模様の可愛いはるまきくん。16歳の頃(上村雄高さん撮影)

 元の飼い主が1歳で手放し、新たな家族のもとにいった猫が、4月末に22歳を迎えた。年下猫との出会いと別れを越えて、生きる気力が失せた時もあったが、その後、また仲間を迎えて元気を取り戻した。優しい夫妻に見守られて生きてきた、猫の半生を振り返る。

(末尾に写真特集があります)

初めて心を許したあの夜

「あっという間に時間が経った感じですが、はるは、すごく元気です」

 都内に住む道弘さんが、うれしそうに愛猫はるまき(22歳)の頭をなでる。

 妻の明日香さんも、笑顔で話す。

「触った感触は前より少し痩せたけど、今も体重が5.4 ㎏あるんですよ」

 確かに、見かけは8歳の同居猫、福多朗とそう変わらない感じだ。「内臓も年齢より若い」と獣医さんに言われたという。

茶白猫
22歳になりたて。お誕生日おめでとう(明日香さん提供)

 道弘さんがはるまきと出会ったのは、2000年4月、まだ独身で、一人暮らしをして9年経った頃だった。「猫を飼いたい」と口にしていた道弘さんに、話がきたという。

「知り合いの知り合いが結婚することになり、“結婚相手が猫を好きでないから、誰かに譲りたい”というんです。その子を迎えたいと思いました。見せてもらった写真は小さな子猫でしたが、実際に会うと、4㎏を越えていて驚いたのを覚えています(笑)」

 道弘さんは子どもの頃から実家で猫と暮らしてきたため、はるまきともすぐに仲よくなれる、と思っていた。だが、はるまきが心を許すには少し時間がかかった。

「家に来た瞬間からベッドの下に隠れて、顔を見せてくれなかった。1歳になってから急に家と家族が変わり、戸惑ったのかもしれませんね。僕が留守の間に置いてあるごはんを食べて、帰宅すると、ささっと逃げるという暮らしがずっと続きました」

 いつか慣れてくれるだろうか……。少し不安に思っていた道弘さんだが、2カ月目、「その時」はとつぜんやってきた。

「僕が寝ている時に、ごそごそとベッドの下から起きてきて、急に“遊ぼうよ”みたいな感じで飛びかかってきた。びっくりしたけど、そこから少しずつ触れるようになったので、あの晩が転機だった。勇気を振り絞ったのかな(笑)」

彼女と女子猫を大歓迎

 そうして家になれて半年した頃、道弘さんは明日香さんと交際を開始した。はるまきは、明日香さん対して「はじめから心を許した」そうだ。

明日香さんが振り返る。

「人見知りと聞いていたので隠れると思っていたのですが、はじめて遊びにいった時に『おかえり~』という感じで、いきなりスリスリ!私も実家で猫を飼ってきたけど、はるまきと気があったのかな……。交際してすぐ、留守の彼の家の固定電話から私の携帯に無言の留守番電話が入っていたのですが、はるまきが(電話を踏んで)リダイヤルしたみたい。可愛いなと思いました(笑)」

 ふたりははるまきを大事にし、その後、少し広い家に引っ越して入籍。はるまきが6歳の時にメスの保護猫ちまきを、8歳の時には、体に障害のあるオスの大吉を迎え入れた。

3匹の猫
大吉と、はるまき(真ん中)にくっつくちまきちゃん。12年前の幸せなひととき(明日香さん提供)

 はるまきは、そんな新生活を楽しんでいるようにみえた。

「年下の女の子(ちまき)が来た時、よほどうれしかったのか、いつもくっついて寝ていました。はるは、ひとりがいいのかなと思っていたけど、猫好きで、面倒見もすごくよかった」

 大吉は道弘さんが仕事中に道で保護した猫だが、交通事故で頭を打ったせいで、目や耳に障害があり、猫同士での意思の疎通が難しく、寝ているはるまきの上をずんずん踏んで歩いたりした。はるまきは、怒ることもなく受け入れたという。

 穏やかで楽しい暮らしがしばらく続いた。だが、2011年、はるまきの寿命を左右するような最大の“ピンチ”が訪れることになった。

仲間を失い衰弱して

 2011年1月、元々弱かった大吉が亡くなった。その年の7月に、元気だったちまきが突然、体調を崩して入院した。検査をしても原因がよくわからないまま、ちまきは衰弱していき、旅立ってしまった。

 すると、ちまきと仲良しだったはるまきが「がくっ」となった。

猫
いとしきちまきが旅立つとはるまきに異変が……(明日香さん提供)

 道弘さんと明日香さんが当時を思い出して言う。

「急に弱って食欲をなくして、粗相をして。よほどショックだったんだろうね」

「当時はるまきは12歳だったけど、顔がおじいちゃんみたいになって、生命力がなくなって弱っていったのよね」

 ちまきが亡くなった時、さいごのお別れだからと、はるまきにちまきの遺体を見せた。その瞬間、“はっ”という感じで、あとずさりしたという。そして猫とは思えないとても悲しい顔を見せ、そのまま部屋から出ていった。それからはるまきは気力を失い、一時は、命を失うのではないかと思うほど衰弱した。

 だがその後、福多朗がやってくると、みるみる元気になっていったという。

「ちまきが旅立った2年後、福多朗を迎えたのですが、一緒に暮らすうちに、気力や体力がよみがえっていきました。やっぱり仲間の存在は大きいんですね」

くっつく2匹の猫
8年前に福多朗(左)を迎えると、はるまきは再び元気になりました(明日香さん提供)

 福多朗は、事故で後脚2本を失った猫だ。だが家に来た時から障害もなんのその、素早く走り回り、キャットタワーにも前脚の力だけでパワフルによじ登った。

 その若いパワーに背中を押されるように、はるまきも再びタワーに乗りはじめた。

早期発見で今も元気

 福多朗との出会いで“止まった時間”が動き出したはるまきだったが、福多朗が来た翌年の2014年、15歳の時に、前脚に腫瘍(線維肉腫)が見つかった。

 明日香さんが体をなでている時に、「なんだろう?」と気づいたのだという。

「少し硬い小さなしこりに気づき、病院の先生に『よくこんな小さいの見つけたね』と言われました。細胞診をしたら悪いものだったので切除をしたんです。脚ごと切断する獣医さんも多いようですが、その先生は、広めにえぐるように肉腫だけ切って、脚を残してくれました」

 放っておくと骨にまで浸潤するがんで、再発したら断脚するといわれていた。

「5年経った時の検査で、『この病気だと(5年は)もたないかと思っていた』と先生に言われました。再発もせず、手術から7年経つ今も元気でいてくれて、うれしいです。早期発見は大事ですね」

茶白猫
背中の白いラインがチャームポイント(明日香さん提供)

 じつは7年前、線維肉腫の手術前の検査で、はるまきはもうひとつ、早期に発見されたことがあった。それは腎臓の変化だ。

「エコーで内臓を見たら、腎臓の動きが悪いことが判明したんです。血液検査で数値の変化がわかる時はかなり進んだ時のようですが、かなり早い時期に腎臓のための投薬をはじめることができました。薬はそれ以来7年、続けています」

 はるまきは前脚の手術の後に少し体重が減ったが、その後、療法食の内容やあげ方を見直すと、また体重が戻った。いつの間にか、腎臓の数値もよくなったという。

「一昨年5月のクレアチニンは3でしたが、昨年の同月は2.2になりました。BUNも、一昨年の38から34に下がって、先生も奇跡的と。はるまきはすでに人の年齢で100歳を超えているけど、先生によれば、“内臓が60歳くらい”だそうです。薬も合っているのかも」

 血液検査は年1度だが、2カ月に一度は定期健診で通院している。胃が弱っている時には、胃腸の動きをよくする注射をするそうだ。 

ずっとサポートするから

 4月末に22歳になったはるまきくん。5月に誕生日を迎えた明日香さんと合同で誕生会を開いたそうだ。

「迎えられてよかった」「ひたすら甘やかす日だった」と笑いながら、夫妻が長寿に至った理由について話してくれた。

「ごはんの管理なんかはしてるけど、うちで特別なことをしてるつもりはないんです。いっぱい触ったり、思いを言葉にして伝えることは毎日自然とやっています」

「そうね、可愛いとか好きとかいうとのどを鳴らすし、“伝わってるんだな”と実感する。だから一日のうちに“大好き”と何度もいってしまう(笑)。ずっと一緒だよ、この先も楽しいことしかないよ、一生安泰だよ、としつこいくらい言ってる。ここまできたら、30歳くらいまで生きてほしい。ずーっとサポートするから、健康に長生きしてほしいな」

 明日香さんの言葉に、道弘さんも大きくうなずく。

「僕らは2番目の飼い主だけど、出会うべくして会ったのかなと縁を感じる。考えてみると、自分の親よりも長く一緒に暮らしてるわけで……はる、本当にいくらでも面倒をみるよ。息子であり友達であるので、できるだけ長く一緒にいたい。30といわず40でもいいよ!」

 最初の飼い主がつけた名を受け継いだ夫妻は、この上ない愛情で、はるまきを包みこんでいた。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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