ルーツ、性格、オスとメスの違い 知っておきたい柴犬の基礎知識

 かつて番犬として飼われることが多かった柴犬ですが、近年ではSNSでかわいい一面を見かけるようになり、身近な家庭犬として人気を集めています。実際に柴犬を迎えてから、想像どおりの楽しい生活を送っている飼い主さんもたくさんいますが、一方で「こんなはずじゃなかったのに……」と悩みを抱える方も少なくありません。

 日本犬に詳しい獣医師の山下國廣先生に、柴犬のルーツや性格の違いなどをうかがいました。すでに柴犬と暮らしている方、これから柴犬を迎えようと思っている方も、犬への理解を深めるきっかけにしましょう。

柴犬はオオカミと遺伝子が近い

 近年は犬の遺伝子の研究が進み、柴犬のルーツや特性が明らかになってきました。柴犬は原始的な犬(プリミティブ・ドッグ)に分類され、オオカミに近い遺伝子を持っています。数万年前にオオカミと共通の祖先の中から人に慣れた個体が犬になったと考えられ、日本犬には祖先の遺伝子が残っている可能性もあります。

 柴犬を含む日本犬のルーツは、約1万年前にユーラシア大陸から縄文人が連れてきた縄文犬と、約2000年前には朝鮮半島を経由して弥生人が連れてきた弥生犬です。縄文犬をベースに弥生犬などが交雑し、現在の柴犬を含む日本犬になったと考えられています。柴犬の姿形や気質はオオカミと似ている原始的な犬から受け継いだのでしょう。

オオカミ
犬とオオカミに関する研究が進められている

日本のあちらこちらにいる柴犬の仲間たち

 柴犬は狩猟採取の縄文時代から猟犬や番犬として重宝されましたが、農耕稲作の弥生時代になると役割が徐々に減っていきます。平安時代には上流階級の人に大切にされた記述もありますが、鎌倉時代には犬追物として武士に騎射されたことも。室町時代から江戸時代にかけては将軍や大名の間で欧米の犬がもてはやされ、それ以外の犬は村や町で野良犬のように暮らしたり、猟犬として働いたりしていたようです。

 日本古来の犬が見直されたのは明治や大正時代に入ってから。全国から集めた小型の犬をまとめて柴犬という犬種にし、1936年に国の天然記念物に指定されました。主に日本犬保存会や一般社団法人ジャパンケネルクラブが登録管理しています。柴(しば)の意味は「小さいもの」という古語、枯れ草の色などの説があり、昔から呼びならわされていた名前です。

 洋犬との交雑をまぬがれて各地に残っていた地犬(じいぬ)から、小型犬が柴犬、中型犬が北海道犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬、大型犬が秋田犬として国の天然記念物に指定されました。その他の地犬の中では、岐阜県の美濃柴犬、山陰地方の山陰柴犬、長野県の川上犬、沖縄県の琉球犬などが愛好者の努力によって保存され、都道府県の天然記念物に指定されている犬種もいます。

 また、祖先の縄文犬の姿を再現したとする縄文柴犬もいます。近年は柴犬の中の特に小さい犬を豆柴と呼ぶこともあります。

美濃柴犬
岐阜県原産の美濃柴犬の親子(画像提供:@yosshy77)

柴犬は家庭で飼える野生動物

 野生動物は自然界で生きる力を身につけたら親元を離れて自立します。柴犬も同じように身体的にも精神的にも“おとな”へと成長します。飼い主さんを悩ませる警戒心の強さ、そっけなさ、飽きっぽさは、すべて成長した動物として当たり前の特性です。

 一方、トイ・プードルやラブラドール・レトリバーなどの人為的に改良された犬種は“子ども”らしさを残しています。飼い主さんにも甘えて片時も離れない性格の犬も少なくありません。毛の短いトイ・プードルのつもりで柴犬を迎えると、想像と現実のギャップに驚くことになります。

 例えるなら柴犬は「家庭で飼える野生動物」。“普通の家庭犬”の枠には収まらない特性をもっています。そのため「柴犬はしつけが大変」と言われてしまうことも……。柴犬の特性やしつけについては、「柴犬のしつけは難しい!? 柴犬ならではの特性を知って、適した接し方をしてみよう」をご参考にしてみてださい。

柴犬は小型犬?中型犬?

 柴犬は日本犬の中では唯一の小型犬ですが、体重が10 kgなので小型犬か中型犬か分類に迷うところ。迎えるときは「ちょっと大きくなるかもしれない」と思っておきましょう。体高(地面から肩までの高さ)も合わせて確認しておくと成長したときの大きさを想像しやすいですね。

・オスの大きさ
体高:39.5cm (38~41cm)
体重:9~11kg
・メスの大きさ
体高:36.5cm (35~38cm)
体重:7~9kg

 毛色は赤(茶色)、黒、胡麻、白です。赤が80%を占めていますが、近年は黒も増えてきました。いずれの毛色も濃淡があり、深みを感じさせてくれます。

柴犬
日本犬保存会とジャパンケネルクラブのサイズは共通

柴犬はオスとメスの性格がはっきり分かれる

 最後に、柴犬のオスとメスの違いについて紹介します。野生動物の場合、オスは自分の遺伝子を残すため、メスは自分や子どもを守るために行動します。野生に近い原始的な犬種の柴犬も同様で、生物学的な行動の違いが性格の違いにつながります。

「メスのほうがやさしい」「オスのほうがりりしい」というイメージをもたれがちですが、実際の性格や行動を知っておきましょう。柴犬は頭数が多いため、個体差の幅も広い傾向にあります。

柴犬
メスはやさしくてオスはやんちゃ、と単純ではない

・オスの性格、行動
 人に対しては好き嫌いが単純明快で、根に持ったりひねくれたりすることは少ない。ライバルとなる同性の犬を見かけると威嚇するが、誰に対しても攻撃するわけではない。メスに比べて家族から離れて行動することをためらわないので、ドッグランに放すと呼んでもなかなか戻ってこない犬もいる。メスより自己主張の強いタイプが多い。

 マーキングで家を汚される心配をする人もいるが、柴犬は性別を問わず成長すると住まいの近くでは排泄したがらなくなるので粗相の問題がかなり少ない。メスより力が強いため、散歩のときにしっかり制御する必要がある。去勢手術によってオスらしい行動は減ることが多い。

・メスの性格、行動
 観察力に優れていて、家族の気持ちを察したり、自分にとっての損得を見極めたりする。飼い主の気を引くために、オスより複雑な方法でアピールをする犬が多い。メスにやきもち焼きが多い理由は、自分を守ってくれる飼い主を独占するための行動と考えられる。家族の近くにいたがり、隣で寝たがる犬もよくいる。性別を問わず気に入らない犬を威嚇するタイプも少なからずいる。

 メスのほうが飼い主に対する共感力が高いという研究結果があり、性格がやさしいというイメージにつながっているのかもしれない。繊細な部分があるので苦手意識を持たせないことが大切。不妊手術を行っても行動はほぼ変わらない。

 柴犬を迎えてから、しつけやコミュニケーション、お手入れなどに悩んだら、柴犬のルーツを思い出してみましょう。柴犬は姿形や気質にオオカミと共通点をもつ「家庭で飼える野生動物」。“普通の家庭犬”の枠からちょっとはみ出すことがあっても、互いにうまく付き合いながら幸せに暮らす方法があります。

金子志緒
ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになり、動物に関する記事、雑誌、書籍の制作を手がける。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。www.shimashimaoffice.work

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