柴犬のしつけや問題行動に困ったら? 相談先の選び方とメリット・デメリット

柴犬に向いているのは「訪問指導」(gettyimages)

 柴犬のしつけや問題行動に悩んだとき、まずは自力で対処を試みる飼い主さんが多いのではないでしょうか? インターネットの情報や口コミを参考にすることもありますよね。それで解決できない場合は、早めに専門家に相談することが大切です。

 ところが日本犬に詳しい獣医師の山下國廣先生によれば、「柴犬の特性に詳しくない専門家の指導を受けて、問題が悪化するケースも少なくない」と注意を促します。しつけ方教室、訪問指導、預かりトレーニングなどのなかから、柴犬と飼い主さんに合う専門家の選び方を伺いました。

柴犬の飼い主の多くは悩んでいる

 柴犬は人気犬種ということもあって、飼い主さんからしつけや問題行動の相談が多いですね。たとえば、子犬の時期の悩みは、元気すぎとじゃれがみ(遊びたい気持ちの表れ)。成犬になるとかみつきやほえの悩みに変わり、ときには深刻な問題行動に発展します。今は穏やかに暮らしていたとしても、柴犬を飼って1回も困ったことがない飼い主さんは少ないと思います。

 欧米では犬を飼ったらしつけ方教室に行くのは当たり前ですが、日本ではまだ浸透していません。飼い主さんは柴犬のしつけや問題に困っても、ドッグトレーナーや行動診療を行う専門家を尋ねるケースは少なく、だましだまし工夫したり自力でなんとか対処したりしているのが現状です。

 そのまま数年、十数年を過ごすのはお互いに大変ですよね。自力では解決できない問題もあるので、早めに専門家に相談してくださいね。

困りごとが小さいうちに対処したほうが解決も早い(提供:つむぎちゃん)

柴犬の問題を相談できる専門家の選び方

 柴犬のしつけや問題行動の解決には、日本犬のキャラクターを理解したうえで指導できる専門家を選ぶことが重要です。柴犬や動物の学習理論に詳しくない専門家に相談すると、かえって問題が悪化することが多いからです。

 また、体罰を使う方法は厳禁。犬が体罰でおとなしくなるのは、暴力によって「うつ」に近い「学習性無力感」の状態にさせるからです。じつは問題行動だけでなく、すべての行動(散歩、遊び、食事、コミュニケーションなど)や、感情のレベルが低下しています。

「とにかくおとなしくなればいい」という考え方は新たな問題を生みます。飼い主さんだって本当は、柴犬と楽しく暮らしたいはずですよね。しつけや問題行動の解決には、犬の心身にダメージを負わせない方法を選んでください。

[柴犬に合う専門家を選ぶポイント]

  • 日本犬(柴犬)を飼育、指導した経験がある(特性やキャラクターを理解している)
  • 犬を服従させる方針ではない(威圧的な方法を使わない)
  • チョークチェーンなどの道具を使わない(専門家でも使いこなせる人は少ない)
  • 飼い主が実践できる方法を教えてくれる
  • 「1回で簡単に解決!」という方法を押し付けない(魔法のような方法はない。たとえ専門家にはできても飼い主にはできない)
  • 犬の学習理論に基づく指導を行える(たとえばJAHAやCPDT-KAなどの信頼できる資格を持っている)
  • 飼い主にわかりやすく説明する目的以外では「かみ癖」「ほえ癖」「無駄ぼえ」という表現を使わない(これらは癖でも無駄でもないため)

しつけ方が合わないと思ったら、別の専門家に相談してみよう(提供:なっちゃん)

ネットの情報やしつけ方教室、メリットとデメリット

 犬のしつけや問題行動の相談先には、手軽なオンライン相談をはじめ、しつけ方教室、訪問指導、預かりトレーニングなどがあります。それぞれのデメリットとデメリットを知っておきましょう。

(1)ネットの情報、飼い主の口コミ

メリット:しつけ方の情報や相談サイト、口コミは玉石混交だが、愛犬に合う方法を選択ができる人には向いている

デメリット:よくある「簡単に解決!」という方法は信用できない。誤った方法では問題が悪化する。

(2)かかりつけの動物病院(獣医師)

メリット:おそらく犬の問題を真っ先に相談できる専門家。獣医師の間で評判のよい専門家やしつけ方教室の紹介を頼みやすい(山下先生に相談する飼い主は動物病院からの紹介が多い)

デメリット:動物行動学(しつけ方や学習理論)に詳しくない獣医師もいる。誤った指導を受けると問題が悪化する

(3)しつけ方教室(ドッグトレーナーが複数の飼い主と犬のグループを指導する)

メリット:通える距離だけでなく、指導内容や方針を確認し、犬の個性を尊重して指導できるところを選ぶ。社会化トレーニングやおすわりなどの基本的なしつけを教えたい場合や、人に飛びついたり散歩中に引っ張ったりする軽い悩みの相談ならまずは選択肢に入る。

デメリット:柴犬は同じことを繰り返す状況に、退屈してあきやすい。これは柴犬の判断力の表れで長所だが、柴犬を理解していない専門家には短所と思われ、飼い主も自信をなくしてしまうことがある。かみつきなどの深刻な問題行動に対応できないケースもある。

(4)訪問指導

メリット:家庭犬には日常生活そのものがしつけなので、専門家が普段の暮らしを確認できる訪問指導が向いている。犬の問題行動は生活環境や飼い主の接し方が原因であることが多いため、別の場面で特別なトレーニングを行うよりも根本的な解決に結びつきやすい。

デメリット:飼い主が接し方や生活環境を変える必要があるため、手間と感じるかもしれない。

(5)預かりトレーニング

メリット:犬を専門家に預けるので飼い主が楽をできる。人間に不信感がある保護犬を人間に慣らす社会化トレーニングには、向いているかもしれない。

デメリット:飼い主と犬の基本的な関係をつくる犬の社会化期(生後12週齢ころまで)に預けるのはおすすめしない。預けると専門家を飼い主だと思うかもしれないため。家庭内の問題行動が家族以外の人、自宅以外の場所では出ないこともあるので、解決にはつながらないことがある。飼い主が専門家と同じ対応ができない場合、問題が再発することが多いので、基本的にはおすすめしない。

(6)幼稚園、定期的な集まり

メリット:定期的に集まる場があれば、犬や場所に慣れるための社会化トレーニングの一環として有効。家庭とは別の群れという感覚になり、仲間が増える楽しみができ、ストレスがやわらぐかもしれない。飼い主同士が悩みを相談したり楽しく交流したりする場としても役立つ。

デメリット:さまざまな場所でさまざまな犬に会うのが、本来の社会化トレーニング。決まった場所で、決まった犬と会うだけでは、十分ではない。しつけや問題行動の解決にはつながらないことが多い。

 私はおもに「(4)訪問指導」を行っています。トレーニングに詳しく目標が高い人、問題をとことん解決したい人、工夫して暮らせれば十分という人……など、スキルや希望に応じて、飼い主さんが実践できることを提案。飼い主さんに接し方や環境を見直すポイントを伝えたあとは、電話やメールでフォローしています。

親しい仲間ができればコミュニケーションが豊かに(提供:@yuririn1025さん)

脱・問題児 柴犬と飼い主に合う専門家に相談を

 現在、学習理論と行動学をベースにした「ほめるしつけ(正の強化)」が広まりつつあるのは喜ばしいことです。ただし、柴犬は食べ物だけで行動をコントロールしようとしても反応が悪く、問題行動が改善できないこともあります。

 たとえば、飼い主さんにかみついたり、他の犬に向かってほえたりしている柴犬におやつを出しても、おそらく見向きもしないでしょう。私は犬の行動を的確にコントロールするために、犬に嫌悪感を与えない(飼い主に強制されたという感覚を持たせない)ように、リードで操作する方法も必要だと考えています。

 最近は、柴犬が問題児のように扱われることが多いのを残念に思っています。それは柴犬に適さないしつけ方や方法で、問題が解決しなかったことも一因ではないでしょうか。柴犬との暮らしで悩みごとがあれば、愛犬と飼い主さんに合う専門家に相談してくださいね。

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監修:山下國廣(やました・くにひろ)
獣医師、軽井沢ドッグビヘイビア主宰。科学的なアプローチと犬の立場に立った発想で人と犬のコミュニケーションをサポート。家庭犬の問題行動治療、しつけ方指導、トレーニング指導のほか、里守り犬(モンキードッグ)など野生動物対策犬の育成指導も行う。愛犬のすぐり(甲斐犬)を日本犬初の救助犬に育てて多くの現場に出動した。

金子志緒
ライター・編集者。レコード会社と出版社勤務を経てフリーランスになり、動物に関する記事、雑誌、書籍の制作を手がける。愛玩動物飼養管理士1級、防災士、いけばな草月流師範。甲斐犬のサウザーと暮らす。www.shimashimaoffice.work

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