柴犬にもっと甘えてほしい! なでられるのが好きな犬にできる?
「柴犬ってそっけない!」と感じている飼い主さんは多いですよね。子犬のころは無邪気に甘えていても、成犬になればすっかり落ち着いた“おとな”に大変身。ところが家族にはそっけない態度でも、近所の人には大喜びで愛敬を振りまく柴犬もいます。
なんだか報われない気持ちになる飼い主さんもいるのではないでしょうか? そこで日本犬に詳しい獣医師の山下國廣先生に、柴犬にちょっとだけ甘えん坊になってもらうコツを伺いました。
柴犬は成犬になったら甘えない?
じつは柴犬も飼い主さんに甘えます。柴犬は精神的に自立して“おとな”へと成長する犬種なので、子どもっぽさを強く残すトイ・プードルやラブラドル・レトリバーとは甘え方が異なるだけです。人間だっておとなになっても家族や親しい人に甘えることはありますよね。子どもが保護者に飛びつくように甘える態度とは違って、話しかけたり寄りかかったりするようなさりげないしぐさを使うのではないでしょうか。まさに柴犬の甘え方と同じです。
とはいえ、生まれ持った性格によっては成犬になってからも子犬のように甘える柴犬もいるので、甘え方の違いには血統の要素が強いと思います。性別も多少関係しますが、メスのほうが距離が近くて甘えると言う人もいれば、オスのほうが単純で甘えん坊だと言う人もいるので、飼い主さんの見方による違いかと思います。
柴犬とコミュニケーションを取らずに育てたり、一方的な要求ばかりで我慢を強いたりすれば、飼い主さんに対して心理的な交流を求めなくなってしまいます。そのような場合には、本当の意味で甘えない犬になるかもしれません。
柴犬が甘えるしぐさ10選
日々愛情を注いでお世話をしている飼い主さんとしては、もうちょっと甘えてほしいと思うことがありますよね。柴犬が信頼している家族に見せるリラックスした態度や愛情表現は、甘えるしぐさの一種です。飼い主さんには柴犬のさりげない甘え方に気づいてほしいと思います。
(1)笑顔を浮かべる
犬がリラックスしているときは口元がゆるむので、口を軽く開けて笑っているような表情に見えます。
(2)ヒコーキ耳になる
耳をペタンと倒して甘えるしぐさ。子犬のころにウレションをするような感激しやすいタイプに見られます。人間で言えばすぐうれし泣きをするようなタイプです。
※怖いときに耳を倒す犬もいるので、全身がリラックスしているかどうかを確認しましょう。
(3)しっぽを振る
相手に対する好意や期待でしっぽを振ります。家族に心を開いている柴犬は「お互いに愛情があることはわかっているから」といちいちしっぽを振らないこともあります。
※全身が緊張している状態でしっぽを振っていたら警戒のサインです。
(4)眼をキラキラさせる
飼い主さんに何か期待したときには、いつもより眼を開いてじっと見つめてくることもあります。
(5)背中を向ける
少し離れたところでこれみよがしに背中を向けるしぐさ。そっけないふりをすると飼い主さんがかまってくれると学習したのかもしれません。
(6)おしりをくっつける
おもむろにおしりをくっつけるしぐさは、柴犬の最上級の甘え方。「わーい!」と飛びつくよりも心を許してくれているサインです。
(7)小声でも名前を呼ぶと振り向く
柴犬との関係もコミュニケーションもうまくいっているサインです。小声で呼んで振り向いたらほめて、犬が喜ぶことをしてあげましょう。可愛いからと無意味に呼んでいると反応が鈍くなるので注意。
(8)飼い主の顔をなめる
子犬が母犬に甘えるしぐさで、生まれながらに備わっている愛情表現です。成長してからも親しい相手(人や犬)の顔をなめます。やめさせていれば次第になめなくなります。
(9)飼い主の足元にまとわりつく
子犬や若い犬は飼い主さんに飛びつくこともありますが、柴犬は猫のように足元にまとわりつくことが多いと思います。
(10)飼い主の足や体を踏む
敏感な足の裏で大好きな家族を感じていたのかも。踏んだら良いことがあったと学習した可能性もありますが、ひとつの愛情表現でしょう。
柴犬が飼い主さんに求めるのも同じようにさりげない愛情表現です。スキンシップを求める飼い主さんに付き合ってくれる柴犬もいますが、よく見ると「はぁ……」という顔で我慢していることも。飼い主さんが柴犬に甘えすぎて気を使わせていませんか?
柴犬は営業スマイルで要求していることもある
柴犬の甘えるシーンを思い返してみて、家族の食事のときや散歩に行きたいときだけであれば、甘えというより要求行動かもしれません。もともと甘えるしぐさだったとしても、意図的にするようになったら要求行動に変わります。うれしくて期待していることには変わりはないものの、営業スマイルの一種になってしまいます。
柴犬に本心で甘えてもらうコツは、飼い主さんが日常生活の中に小さなうれしいサプライズを取り入れることです。犬との暮らしはパターン化しがちで、おもちゃを見せる→おもちゃで遊ぶ、散歩の用意をする→散歩に出かける、おやつの袋を開ける→おやつをあげる、といったように予測できるほど犬の要求行動が増えます。これらをランダムにするだけでも犬にとってサプライズになり、飼い主さんへの期待感も高まります。
飼い主さんが思いがけないタイミングでうれしいことを提供していれば、柴犬は「いつどんな楽しいことがあるのかな?」とワクワクしながら甘えてくれるようになるものです。飼い主さんは演出家になり切ってください。
柴犬をもっと甘えん坊にするコツ
さりげない愛情表現も柴犬の魅力。わかってはいるけれどもっと甘えてほしいと思う飼い主さんもいるでしょう。柴犬を甘えん坊にするトレーニングも可能ですが、「人間の感情を満足させるために柴犬に我慢させるトレーニング」になってしまいます。
たとえば、いつでもなでてかわいがりたいということであれば、なでるときには手からフードを与え続けて、なでるのをやめたら(犬が立ち去ろうとしたら)持っている食べ物を握り込んで与えなくする、というトレーニングが有効です。しかし、飼い主さんが望んでいるのはそういうことではないですよね。
人間の考えでは「これだけの愛情を注いでいるから」「いつも世話をしてあげているから」と見返りを求めたくなりますが、犬にとって飼い主さんからの「世話」はうれしいだけとは限らず、たとえば足拭きなど窮屈に感じていることもあるはず。「食事を与えて世話をして“養って”あげている」というのは人間側の考えなのです。
柴犬は信頼している相手には甘えて愛情を伝えてくれます。飼い主さんも柴犬の愛情表現を読み取り、柴犬が喜ぶような愛情表現を心がけ、期待感を高めるサプライズを提供してあげてください。それが柴犬を甘えん坊に変える早道だと思います。
【前の回】「保護犬」の柴犬の迎え方 安心できる場所を提供し、見守ることから始めて
- 監修:山下國廣(やました・くにひろ)
- 獣医師、軽井沢ドッグビヘイビア主宰。科学的なアプローチと犬の立場に立った発想で人と犬のコミュニケーションをサポート。家庭犬の問題行動治療、しつけ方指導、トレーニング指導のほか、里守り犬(モンキードッグ)など野生動物対策犬の育成指導も行う。愛犬のすぐり(甲斐犬)を日本犬初の救助犬に育てて多くの現場に出動した。
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