猫連れキャンプで猫が脱走! 真っ暗なうえ雨も降り・・・ さあ、どうする!?
犬猫たちを連れてキャンピングカー旅をしていると、トラブルにあうこともあります。今までに起きた中で、一番大きな事件は、キャンプ場で梵天丸が脱走! という一件でした。
あんなに怖がってたのになぜ?
すっかり猫連れキャンプ(キャンピングカー旅)にも慣れた頃。それは起きました。
場所は、私たちが何度も利用しているいつものキャンプ場。東北の、美しい湖畔にたたずむのどかなキャンプサイトです。
今から14年前のこと。キャンピングカー仲間たち数台(6家族)で集まって、夏のキャンプを楽しんでいました。
持ち寄ったタープを連結して、大食堂スペースを作ります。
子どもたち(8人)のにぎやかな夕食が終わり、大人たちの宴会タイム。女性陣もようやく一息ついて、井戸端会議に花を咲かせていました。そんなとき。
「うわあっ!梵!?」
夫の悲鳴が聞こえました。うちの車の、居室のドア(車外から出入りする玄関)が開けっ放しになって、夫がぼうぜんとしています。
「ごめん、緊急事態。梵が逃げた!」
当時生後8カ月だった梵天丸が、ドアが開いたタイミングで突然、脱走したのでした。
窓から外を眺めるのは大好きだったけれど、それまで決して出ようとはしなかった梵。むしろ連れ出そうとすると怖がって私にしがみつく子だったのに。急にどうしたのでしょう?
騒ぐほど逆効果なんです
何やってんのよ! あれだけ、ドアの開閉には気を付けてって言ってあったでしょ! 瞬時に、頭に血が上る感覚と、血の気が引く感覚を同時に味わいました。
どうしよう、どうしよう。こんな旅先で脱走なんて……。わなわなとひざが震えますが、びびってたって解決にはなりません。
旦那を責めたい気持ちも沸き上がりますが、責めたところで梵天丸は帰ってきません。もめていても始まりません。とにかく捜索です。今出て行ったばかり。そう遠くへは行っていないはずです。
ですが、何しろキャンプ場は暗い。ライトで照らしながら、自分の車はもちろん、周辺の車の下を、丹念にチェックして回ります。まったく知らない土地で、さぞ怖い思いをしているに違いありません。
こんな時、慌てふためいて大声を出したりしちゃいけない。それは私もわかっていましたが、私の声に、少しでも反応してくれたら。そんな思いで、極力小さな声で「梵天~。梵天丸~」と呼びながら歩きました。
もちろん、仲間たちも心配してくれています。が、普段と違う気配を感じただけでも、猫は警戒してしまう。どうか気にせず、今まで通り楽しんでいて、とお願いしました。が。そうはいかないのが子どもたちです。
「え? おばちゃん、梵ちゃんいなくなっちゃったの?」
「可哀想だよ! 探さなくちゃ!」
口々に梵天丸を心配してくれます。そしてちびっこ捜索隊が結成されるまでに。親御さんたちは慌てて「いいのよ、梵ちゃんはそのうち帰ってくるから」。わが子を引き戻して阻止してくれますが、子どもたちは不満顔。中には親の手を振りほどいてついてくる子もいます。
「梵ちゃ~ん!どこーー?」(ああ、そんな大声で……)
気持ちはうれしいけど、お願いだからやめて! 頭を掻きむしりたくなる焦燥感。元気な坊やは何とかなだめて、キャンピングカーに戻ってもらいました。
夜明けの雨、そして出てきた梵天丸
探し始めて数時間が過ぎました。時刻は深夜。周囲のテントも寝静まり、足音さえ迷惑な雰囲気です。私たちはといえば、数百メートル歩いては、もしや、と思って車に戻る、の繰り返し。
気づけば深夜2時。私もクタクタです。とにかくいったん、車で休むことにしました。車のベッドに横になっても、目がさえて寝付けません。夜が明けるのを待って、もう一度捜索に出ることに。もう懐中電灯は不要ですが、今度はしとしとと雨が降り出しました。
「猫、みつかりましたか?」
我が家の車の真後ろにテントを張っていた男性が顔をのぞかせ、声をかけてくれました。
「お騒がせして本当にすみません。まだ戻って来ないんです」
見知らぬ人の気遣いに、不覚にも泣きそうになった、その時「なぁぅぅ……」
え? 梵?? それは車の後ろ5メートルのところ。私の背丈ほどのブッシュが茂っている、その中に、梵はうずくまっていました。
「梵、おいで。怖かったね。もう大丈夫だよ」
声をかけながら近づき、すくんでいる梵を抱きしめます。良かった。もう会えないかと思った! 一晩中、ここにうずくまっていたのでしょうか。体は冷え、夜露と雨でびしょぬれです。
車に戻り、夫に梵を渡すと、彼はただ黙って梵を抱きしめたきり、その場にへたり込みました。私が責めない分、余計にプレッシャーだったことでしょう。
とっておきの猫用おやつをもらって、大好きなクリス兄ちゃんにもたれかかって、梵はぐっすり。その横で、私たちも安心して、昼過ぎまで寝ぼけたのでした。
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