犬は喜び、猫は丸くなった キャンピングカーで行ったスキー旅行

いまも我が家の猫たちは、キャンピングカー旅には同伴(付き合わされているだけ?)します。ふかふかの布団があって、飼い主がずっとそばにいてくれる。そう思ってくれていたら、うれしいのですが。

 犬猫たちがすっかりキャンピングカーに慣れてくれたおかげで、ずいぶんあちこちに、一緒に旅をしてきました(20年経った今も続いています)。その中でも印象的だったのは、スキー場への旅でした。

動物と一緒にスキーには行けるのか?

 雪の便りが聞こえ始めると、カレンダーを眺めてはソワソワ。スキー好きの私たちは、冬が来るたびにスキーの話題で持ちきりになります。

 結婚して数カ月で私の両親が他界。

 両親が飼っていた犬猫を引き取り、我が家の猫たちと合流して犬1匹、猫4匹の多頭飼育に。大所帯でどこへも行けない悩みを解決するべく、キャンピングカー購入に踏み切った、最初の冬。

 夏から何度もキャンプに出掛け、怖がることもしなくなったころ、思い切ってスキーに挑戦してみることにしました。

 あちこちのゲレンデ情報を集めては、キャンピングカーで行くのに適した場所を捜します。

 そもそも、どこのスキー場もスキーバスが発着するため、大型車両が通れる幅の広い道路やバスが停められる駐車場はあるので、到着までの道のりはあまり心配していませんでした。

 それよりも、駐車場に宵越しで停めていいものか。夜の食事はどうするか? お風呂は? 雪深い中での滞在なので、夏のキャンプのように身軽には動けません。

 そんな中、ゲレンデのふもとにお風呂も食堂もあるスキーセンターがあり、その目の前に広い駐車場があるスキー場をみつけました! 問い合わせると、リフトやスキーセンターの営業時間後も、停泊していて構わないとのこと!

 さあ、動物連れでのスキー旅のはじまりです!

この雪深さ!それでも車内は半袖でいられるほど暖かです。仲間とよくスキー場で落ち合って、互いの犬同士も一緒にお散歩したものです。

キャンピングカーの暖房は?寒さ対策は?

 自分たち人間はスキーウエアもあります。羽根布団も積みました。

 問題は猫たちです。昼間、私たちが遊びに行っている間、暖房をつけっぱなしにするのは危険なので、その間の暖房対策をどうするか。あれこれ調べ、相談を重ねました。

 まず用意したのは、ふかふかのペットベッド。そして、コンセントを差し込むだけでほんのり暖かくなるペット用ヒートマットでした。

 我が家のキャンピングカーは壁面に断熱処理がされているので、テントで寝泊まりするような暑さ・寒さはないはず。ですが、窓ガラスは壁のようにはいきません。実際、室内の温度のほとんどは、ガラス部分から放熱されてしまいます。

「結露防止もかねて、断熱用のエアキャップを買っていこう」

 運転席のフロントウインドーには、目隠しを兼ねた断熱シェードを用意。運転席・助手席のサイドウインドーや、居室部分の窓ガラスには、両面テープのついたエアキャップ(通称:プチプチ)を貼ることに。

「それでももし、どうしても寒くていられないとか、動物たちが寒がるようだったら、即予定を切り上げて帰ろう!」

 宿の予約も、電車やバスの予約もいらないキャンピングカー旅。その自由さが何よりのメリットです。

「ゲレンデに寝泊まり」で犬は大喜び

 さて、実際出かけてみてどうだったか。

 結論は、「最高に快適で楽しい!」でした。

 キャンピングカーの暖房はプロパンガスを使ったガスFFヒーターなので、予想した以上に暖かでした。

 猫たちは三々五々、ソファやベッドにもぐりこみ、体を寄せ合って暖をとっています。

 犬(柴系の雑種)はベッドに上がれませんが、暖房の吹き出し口が床についているので、床全体が床暖房並みにあたたか。寝そべって、くつろいでいます。

「……言いたくないけどさ。キャンピングカーって、うちよりあったかいね」

 夫の言葉に思わず笑いましたが、事実そうだったのです。

 心配していた「人間不在の時間」ですが、お昼に車まで帰ってみると、思っていたほど室内は冷えていませんでした。

 猫たちは布団に潜り込めば十分なようなので、ペットヒーターは犬のネネちゃん専用に。それでも体を震わせるような寒さはありません。

 そして夜。ほとんどの車が宿に引き上げて空っぽになった駐車場に、私たちとあと数台、キャンピングカーが残されています。昼間はあんなに混雑していたゲレンデも、ナイター照明を落として、BGMもなし。ただただ、しんしんと雪が降っています。

 スキーセンターのお風呂を使いに私たちが乗り降りすると、猫たちは慌ててドアから遠ざかり、吹き込む冷たい風に当たらないように逃げています。

 一番好奇心旺盛なディーナさん(アビシニアンの女の子)だけは、遠巻きに雪景色を眺めては、頭から雪をかぶっている私たちを「信じられない。わざわざ寒い中へ出ていくなんて」という冷ややかな目で一見します。

 大喜びしたのは犬のネネちゃんです。

 夫がリードをつけて、散歩に連れ出しました。冷たい雪も何のその。ワンワンとうれしそうにほえて、ひたすら駆けずり回ります。

 付き合わされていた夫は、玉の汗をかいて必死についていきます。私はその様子を、猫を抱っこして暖かい車内から眺めるだけ。

 たっぷり30分は駆け回ったでしょうか。真っ黒なネネちゃんが、雪まみれの真っ白になって戻ってきました。

「急に我に返ってさ。寒かったみたい。帰る!って突然言い出して(笑)」

 雪でびしょびしょのネネをタオルで拭いていると、ディーナさんがイヤそうな目で眺めています。今にも「バカじゃないの?」と言いそうな冷たい視線が刺さります。

「犬は喜び庭駆け回り、猫はこたつで丸くなる…歌の通りなんだね」

 あんなに駆け回っていた犬は今、ガスヒーターの吹き出し口に陣取って、冷え切った体を温めています。

「犬も結局、こたつで丸くなるんだよ」

現在の我が家の長男・梵天丸。キャンピングカー雑誌の仕事で出かけた、三重県で出会った子です。これは梵を連れて初めてスキーに行ったときのもの。しっぽが心なしか、膨らみ気味です(笑)

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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この連載について
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猫と暮らし始めて、気が付けば40年! 保護猫ばかり6匹と暮らすライターの、まさに「カオス」な日々。猫たちとの思い出などをご紹介します!
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