犬が嗅覚を使って楽しめる「ノーズワーク」のやり方とメリット 脳トレにもぴったり!
犬の嗅覚は人の数万から1億倍といわれるほど優れています。このすごい能力を使う宝探しゲームが「ノーズワーク」です。トレーニングの必要がない気軽な遊びから、ルールを設けたドッグスポーツとしての競技まであります。「鼻があればできる」といわれるほど、あらゆる犬が楽しめるゲームなんです。
NACSW(全米ノーズワーク協会)認定インストラクターの古本優子先生によれば、ノーズワークは子犬や成犬には心身のエクササイズになるほか、老犬の脳トレにぴったりだとか。愛犬のトイ・プードルは15歳を迎えても元気に過ごしているそうです。さっそくノーズワークの遊び方やメリットを紹介しましょう。
ノーズワークはどんな遊び?
「ノーズワーク」は、犬が鼻を使って食べ物やにおいを探し当てるゲームです。もともと保護犬のストレス解消を目的に考案された遊びから発展したもので、特別なトレーニングをしなくても十分楽しめます。日本でノーズワークと呼ばれているのは、おやつやおもちゃを探す宝探しゲームなどの気軽な遊びと、警察犬や探知犬と同じくにおいを探し当てるドッグスポーツです。
まず気軽にできる遊びは、隠れた飼い主さんを探すかくれんぼ、部屋に隠したフード・おやつ・おもちゃを探す宝探しゲームなど。食べ物を入れられる知育トイや「ノーズワークマット」などのおもちゃを使った遊びもノーズワークの一種です。特別なトレーニングの必要がなく、自宅で楽しめるのが特徴です。
次にドッグスポーツは、室内や屋外でアロマオイルのにおいを探させる競技。警察犬が犯人を追跡したり、麻薬探知犬が麻薬を探し当てたりする作業をアレンジしたものです。
2006年にアメリカ・カリフォルニア州の探知犬訓練士が考案した「K9 ノーズワーク」がベースになっていて、団体によって多少ルールや実施方法が異なります。
ノーズワーク以外にも嗅覚を使うドッグスポーツは古くからあり、日本では災害救助犬競技、臭気選別、足跡追求などの競技があります。
ノーズワークのメリットは脳トレや関係づくり
現代の家庭犬の多くは一日の大半を家の中で過ごし、時間になればリードにつながれて散歩に行き、何もしなくて食事が出てくる状態です。優れた嗅覚を活用することもなく、刺激も十分に得られていません。ノーズワークで能力を発揮する機会をつくると、脳トレやストレス解消、良好な関係づくりなどに役立ちます。さまざまなメリットを知っておきましょう!
(1)脳トレ
人と犬の脳が同じ大きさだとして比較すると、犬の脳の中で嗅覚処理に使われる部分の割合は人間の40倍。嗅覚を使えばそれだけ多くの部分が活性化するので、よい脳トレになります。
(2)心身のエクササイズ
若い犬や活発な犬は、身体的なエクササイズ(散歩や運動)では体験できない心身共にバランスのよい刺激をノーズワークで得られます。
(3)生きる意欲の向上
自力で食物を得ることと生きる意欲は強く結びついています。シニア期以降の老犬にとって嗅覚を使って食べ物を得ることは、生きる力を刺激することになります。
(4)落ち着きやすくなる
視覚的な刺激に過敏な犬や興奮しやすい犬は、ノーズワークを通して興奮の抑制を学べるようになります。
(5)食欲が安定する
健康であるにもかかわらず食べムラがある犬は、自力で食べ物を得る喜びを覚えて食欲が安定しやすくなることも。
(6)関係づくりにプラス
飼い主さんが愛犬を観察することで理解が深まり、今まで気づかなかったしぐさや新たな一面を発見できます。ノーズワークは良好な関係づくりにもプラスです。
これらのメリットを最大限得るためには、部屋などの広さのある場所にある食べ物やおもちゃ、においを探し当てるノーズワークがおすすめ。また、問題行動を本格的に直したい場合は、ノーズワークとは別にトレーニングが必要です。知識のある専門家に相談しましょう。
気軽に遊びたいなら…知育トイやノーズワークマットを使う
犬の嗅覚を刺激する知育トイを活用しましょう。食べ物を隠して探させるタイプならなんでもOK! たとえば天然ゴム製のかじって遊ぶ「コング」や、プラスチック製の「ニーナ・オットソン」を試してみましょう。(参考「犬が頭を使って夢中になる「知育トイ」もっと活用しよう! 愛犬の脳トレにもオススメ」)
雨で散歩に行かれないときや、散歩の時間が長くとれないときなどは、退屈しのぎにノーズワークマットでごはんをあげてもよいかもしれません。
競技に挑戦したいなら…箱に入れた食べ物のにおいをたどる
ドッグスポーツとしてのノーズワークの初歩は、食べ物を段ボール箱などの箱類に隠して、犬に鼻でにおいを探させることから始める方法が主流です。箱を使う理由は、においが拡散しないで中にたまるから。ここでは大まかな方法を紹介しましょう。
まずは犬をクレートまたはケージなどに入れて待機させ、5〜7個の箱を部屋のあちこちに置きます。その箱の1個ににおいの強いおやつ(チーズやレバーなど)を入れたら、犬をクレートから出して探させます。オヤツを入れる箱を1個に決めて、ふたも開けておきましょう。
犬がオヤツを食べ終えて箱から離れたら、オヤツを使ってクレートに誘導して入れます。再びオヤツを隠してから箱の位置を変えて、犬をクレートから出して探させます。この流れを3、4回セットで始めましょう。
犬が慣れてきたらおやつを入れる箱を変える、箱を横にして置く、床ではなく高いところ(犬の鼻が届き、探し出せた食べ物を自分で食べられる高さ)に置く、といった方法で難易度を上げていきます。
犬が探し出せないときには
ノーズワークは犬が嗅覚を使って自力で探知することが重要! 飼い主さんがヒントを出さないことが理想です。私たちは課題を解いて答えを得ることで達成感や充実感を味わいますよね(答えを得るまでの過程も含めて)。それは犬も同じだからです。
探し出せない場合でも、犬を一旦クレートに戻して再スタートさせるだけで見つけられるケースが大半。それでも探し出せないなら、隠し方が難しすぎるのかもしれません十分な練習を積んでいないのに、箱をふさいでにおいを閉じ込めたり、鼻より高い位置に置いたりしていませんか?
犬を一旦クレートに戻して、隠し方を変えてから再挑戦させましょう。難しくしすぎると、犬が自信をなくす、フラストレーションを感じてほえる、すぐにあきらめる、飼い主さんに頼る……と、デメリットばかりになってしまいます。少しずつステップアップしていくのがコツ。
飼い主さんはリードを持って犬についていくだけですが、犬がにおいをキャッチしたサインを知っておくと楽しめるうえ、犬の能力の素晴らしさを発見できます。
初心者でも比較的気がつきやすいサインは、方向転換(まっすぐ進んでいたのが急に方向を変えるなど)、鼻を少し上に向けて空中のにおいを嗅ぐしぐさ。慣れてくるとにおいの流れる方向もわかってきます。
犬が楽しみながら自信をつける
気軽な遊びもドッグスポーツのノーズワークも一番大切な目的は、犬が楽しみながら自信をつけること。ノーズワークはとても楽しい遊びなので、始める前に過剰に興奮したり要求ぼえをしたりするようになる場合も。ある程度落ち着いてからスタートする習慣をつけましょう。
ドッグスポーツとしてのノーズワークをもっとレベルアップしたい方は、ノーズワークを教えているインストラクターの経歴や得意とする分野を踏まえて、ご自分と愛犬の目的に合った方法を選んでくださいね!
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- 監修:古本優子(ふるもと・ゆうこ)
- CCPDT認定プロフェッショナル・ドッグ・トレーナー(CPDT―KA)。「K9ノーズワーク」の統括団体 National Association of Canine Scent Work (NACSW、全米ノーズワーク協会)認定ノーズワーク・インストラクター。ポジティブ・ドッグ・トレーニング主宰。NACSW主催のK9ノーズワーク競技会に愛犬のマノン、フィービー(共にトイ・プードル)と参加し、優れた成績を収めている。現在は日本とアメリカを行き来しながらノーズワークの普及に努める。
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