愛犬「福」のくんくん散歩 においのサインを嗅ぎ取って犬にだけ見えている世界がある

森の中を散歩する犬
この季節は草むらに顔を突っ込んで、くっつく草の種だらけになることもしばしば

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんこと「とーさん」は、元保護犬「福」と暮らしています。今回は、散歩とにおいについてです。

(末尾に写真特集があります)

一緒に森の中を歩くこの時間

 すっかり秋の色が色濃くなり、朝晩が冷え込むようになってきました。とはいえこの原稿を書いてる今は暑くてTシャツで過ごせるくらいなんですけどね。

 とーさんはこの季節に福と一緒に散歩をするのが大好きです。寒かったり、眠かったりするとちょっと面倒だな、なんて思うときもないことはないんですが、それでも福を連れて歩き出してしまえば、ああ気持ちがいいなあ、散歩は楽しいものだなあとしみじみと感じます。

森の中を散歩中の犬
いつもの散歩道。朝日が気持ちいい。今日はどんな発見があるかな?

 福がどんな気持ちで歩いているかはわかりませんが、リズミカルに歩調を合わせて森の中を歩くこの時間は、僕がもっともリラックスできるときです。仕事のアイデアなんかも、こんなときにポロっと降りてきたりするから不思議です。なんなんだろう、この現象は……だれかこの現象に名前をつけてほしい。

 ずっと散歩が苦手だった福ですが、最近はすっかり慣れてきて、以前のように人やほかの犬の気配がない深夜にこっそりと歩くこともなくなりました。

 むしろコロナ禍によってリモートワークが増えたせいもあって、すっかり朝が遅くなったとーさんですから、それに合わせて福の散歩時間もずいぶんと変わりました。朝は遅く、夜は早くと。

福だけに見えていたもの

 それでもやっぱり根が臆病な福ですから、いつもは嬉しそうに歩く道で急に立ち止まり、突然家に引き返そうと身をひるがえすこともあるのです。

 だからいつもリードを持つ手を緩めることはできません。当初はこうした行動が理解不能で、いったいなぜ?なにを怯えてるの??と頭の中は疑問符だらけになりました。

ドアの前の犬
お散歩に早く行こうよ。よくぞここまで、、とーさん涙がでるよ

 しかし、グイっとリードを引いて「ノー!」とその行動を制し、散歩を進めていくと、じつは散歩ルートのその先に、子供たちの集団がいたり(福は子供が苦手です)、イベントの準備をしていたり、たまに道すがらに出会うちょっと苦手なわんこが歩いていたり……。福にだけは見えていた、感じていたものがその先にあったのかと感心するのでした。

 人間の僕にはまったくわからない、犬にだけ見えている世界がある。いつか、海外の放送局が制作した犬にまつわるドキュメンタリーを見たときに、犬にとって「におい」は、文字通り「におい」としてだけでなく、そこからもっと立体的に「時間」や「空間」などを認識することができるサインになっているというような話を知って驚きました。

 散歩中に出会う電柱や植え込みにマークされた「ほかの犬のにおい」からは、その犬の大きさや性別、さらにその犬が発しているサインを嗅ぎ取ります。「友達になろうよ」「恋人募集中」「近寄るなよ!」などなど。それはまるで犬にとってのSNSのようなものなのかもしれません。投稿されたのは今日なのか、昨日なのか、あるいはずっと前なのか。

歩く楽しさを知った

 いったい福はなにを嗅いで、なにを感じているのかなあ。そんなことを考えながら散歩をするとまた違った楽しみが生まれます。散歩中、右に左に、突然立ち止まったり、引き返したり。

 そんなとき、以前はきちんと歩くことを覚えさせたいと思うばかりに、ついつい行動を抑制しがちでした。しかし、これは散歩ではなくて訓練です。

散歩中の犬
福にだけ見えている世界が確実にあるんだなあ

 長い1日のうちでほんのひとときとーさんとのんびり歩く時間をつらい訓練にしたくない。いつしかそう思うようになりました。なので、できるだけこの犬のくんくん散歩に付き合うようにしているのです。だって、ついこの前まであたりのにおいを嗅ぐ余裕も福にはなったのですから。

 我が家にきて4年。ようやく外を歩く楽しさを知った福。そしてその福と歩く楽しさをしったとーさんなのでした。

◆小林さんが発行人を務める月刊誌『天然生活』のサイトはこちら

【前の回】保護犬を迎え入れて幸せな時間が増えた! 犬はどんな種類でも、雑種でもかわいい

(次回は12月19日に公開予定です)

小林 孝延
福井県出身。編集者。月刊誌「天然生活」創刊編集長、「ESSE」編集長を経て現在は(株)扶桑社執行役員兼編集局長。

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この特集について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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