ボビ・サビ大脱走の巻 やっぱり猫は室内飼い!

寝るときはいつも一緒、のエンマ(左)とサビの母子。エンマはこのとき、外に出る気なんてさらさらなかった様子。
寝るときはいつも一緒、のエンマ(左)とサビの母子。エンマはこのとき、外に出る気なんてさらさらなかった様子。

 猫のエンマもすっかり大きくなったころ、家の中では栄町ビリビリ団が旋風を巻き起こしていました。そろそろエンマが1歳になろうかというある日、事件は起きました。

(末尾に写真特集があります)

深夜の土砂降りの中 声をかけてきた猫は?

 その頃私は、都心の広告制作プロダクションで働いていました。動画編集の会社で徹夜で作業。その徹夜明けから静岡へ日帰り出張。帰ってきてから事務所で業務。なんとか終電に駆け込み、最寄り駅まで夫に迎えに来てもらって帰宅したのが深夜1時。天気は土砂降りの雨。

 ボロボロに疲れて玄関のカギをごそごそ探していると、足元から「にゃーお」。玄関先の植栽の影から、白三毛さんが遠慮がちに声をかけてきたのです。(ああ。ボビ、サビのお母さんだ)

 ボビ、サビのお母さんは、ボビさんそっくりの白三毛ちゃんでした。あの2匹と違って、毎日ご飯はもらいに来るのですが、決して捕まえさせてくれません。ボビと違うところはしっぽが長いこと。

「三毛母さん、こんばんは。今夜はご飯、まだなの?」

 後半は夫に話しかけていました。私がいないとき、外猫の三毛母さんにご飯をあげるのは彼でしたから。

夫 「いや? 夕方あげたよ。いつも通り」

私 「ほらあ。そうだってよ。今夜はもうおしまい!」

と、三毛母さんに声をかけて……ん?

私 「ちょっこれ、三毛母さんじゃないよ! ボビだよ!!」

 顔を上げると、暗がりの中にサビの顔も! もっと向こうには梵天丸も!

「えええええーっ??」

この脱走騒ぎを境に、がぜん甘えん坊に変貌したボビ。抱っこが大好きで、すぐに人の手足や顔をぺろぺろ舐める子になった。
この脱走騒ぎを境に、がぜん甘えん坊に変貌したボビ。抱っこが大好きで、すぐに人の手足や顔をぺろぺろ舐める子になった。

古い日本家屋ならでは? サッシの鍵がゆるい!

 当時住んでいた家は、築50年近い日本家屋。あまりにもボロボロで、大家さんも「3年後には建て替えるから、それまで自由に住んでいいよ」という条件で借りていました。おかげで猫がたくさんいてもOKだったのです。

 それにしても、どこから? どうやって? 玄関を開けるとヘタレ小僧の梵天丸が びゅんっ! と一目散(いちもくさん)に家の中へ。大粒の雨がたたきつける中、外にいるのが嫌だったのでしょう。やつがヘタレで本当によかった!

 家の中にはエンマとディーナとユーリが。よかった。全員脱走したわけじゃなかった! とすると、あとはボビとサビ。元々、この家の庭にいた子たちです。かつて知ってる庭先で、梵天丸のように怖がることもありません。

 まず、家の中のどこが開いているのか探索です。すると、庭に面したサンルームの古いアルミサッシが10センチほど開いていました。

 引越しして1年半ほど。普段使わないものは段ボールに入れたまま、サンルームに山積みにしてありました。それがちょうどいいキャットタワーになって、猫たちの遊び場になっていたのですが、一部が崩れ、古くてゆるんでいたサッシの三日月錠を回してしまったのが原因でした。

ドアが開くと同時に、帰宅した梵天丸。どのぐらい外にいたんだか、寒いのがいやだったのでしょう。帰宅後は温めたミルクを少しもらって、ぐっすり。
ドアが開くと同時に、帰宅した梵天丸。どのぐらい外にいたんだか、寒いのがいやだったのでしょう。帰宅後は温めたミルクを少しもらって、ぐっすり。

帰りたい・帰りたくない 葛藤する2匹

 帰りたい気持ちがあるのか、家の周辺をうろうろするボビとサビ。声をかけたり、ごはんの皿にフードを入れて差し出そうとすると逃げてしまいます。周囲は似たような一戸建てばかり。大声で呼ぶわけにもいかないし、人の家の庭に入るわけにもいきません。雨はますます強まり、夜は更けてゆくばかり。

「いったん戻ろう。明日になったらお腹を空かせて出てくるよ」

 夫の言葉にも一理あります。後ろ髪を引かれながら戻ります。夕食がまだだったのを思い出し、ありあわせを温めて食卓に並べました。もちろん落ち着いて食べる気になんてなれません。

「こうしてる間にも帰ってくるかもよ!」

 家にいる猫たちを全員、エンマの育児部屋だったところに隔離して、逃げたときのサッシをふたたび開けておくことに。

 これが正解でした。食卓からのおかずのにおいが漂ったのでしょうか。

「なーーーぅ」

 ちょっとしゃがれた、この声はサビです。(帰ってきた!)(こんにゃろー!)と湧き上がる気持ちを抑えて、努めて平静に。

「おや? サビちゃん。おかえりー」

 ゆで卵で気を引いて、そのすきにサッシを閉める! 仕事部屋に逃げ込もうとするところを、はっし! と確保。ぎゃーぎゃー暴れるのを抱きしめて「お帰り」とハグ。びしょ濡れで、草の種をびっしり体につけて。まったく!

 さあ、あとはボビです。今夜、このままサッシを開けとく? 不用心だし、雨が降りこむかもしれないし。どうしようねえ……。

この頃はまだ、多少なりとも触らせてくれていたサビ。なぜだかその後、触れない「家庭内野良」に(涙)
この頃はまだ、多少なりとも触らせてくれていたサビ。なぜだかその後、触れない「家庭内野良」に(涙)

「明日も仕事なんだし、とにかく君は寝たまえよ」と夫を寝室へ送り出します。せめてお風呂に入っている間だけでも、開けておこう。洗面所で髪をとかし、メイクを落としなんてやっていたら、背後でガタッと音が。

 そーっと脱衣所から様子をうかがうと、尻尾のない、白三毛が抜き足差し足で仕事部屋へ入っていくのが見えました。

(ぼ、ボビだぁぁぁぁっ!)

 そーっとサンルームへ行ってサッシを閉める! やった! 全員確保!!

 時刻は深夜3時。びしょびしょのボビを捕まえると、ぎゃあぎゃあ鳴きながら、それでも子どものように私の首に両腕を回して抱きついて、顔をぺろぺろと犬のようになめまわします。元野良猫で、こういう愛情表現をめったにしない子だったのに。帰ってきてほっとしたんですね。

 翌朝、いつも通り、猫の重さを感じながら目覚めました。それまで絶対に布団の中まで入ってこなかったボビが、私の腕にしがみついて寝ています。反対側には甘えん坊のディーナが。足元にはツンデレ母さんのサビと息子のエンマ。お腹のあたり、掛布団と毛布の間には梵天丸。全員集合。

 重たくて身動き取れなくて、体の節々が痛くて、最高に幸せな朝でした。

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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