怖がりで怒りんぼうな猫「ディーナ」 ウナギの頭に猫パンチ
ペットショップで「売れ残り」扱いされていたディーナ。今から20数年前のことでした。数々の暴れん坊伝説を残した小娘のエピソードです。
自転車にも「シャーッ!」
このまま私たちが知らん顔したら、この子はどうなっちゃうんだろう…。そんな思いで、某地方都市のデパートのペットショップから彼女を迎えました。我が家に来た時点で妊娠していたというびっくりなニュースとともに家族の一員になったディーナ。
とにかく気の強いお嬢さんでした。そして、その怒りんぼうぶりも、よくよく見ていると、根底に「怖がり」が潜んでいることに気づきます。そう、ディーナが怒るときは「怖いとき」。
ケージに入れて、車で獣医さんへ向かう途中。信号待ちをしていると、傍らを自転車が通り過ぎました。
「シャーッ!」
(動いてんじゃないわよ!怖いじゃないのっ!)
なぜかチェーンのラーメン屋さんのそばを通りがかると、決まってうなります。
「うぅぅ~っ!」
(看板が赤いのよ!気に入らないのよ!)
(犬や猫の色覚では赤は認知しないと言われています。上のカッコ内は飼い主の勝手な解釈です)
ウナギの頭に猫パンチ連打
ウナギの頭と大喧嘩したこともあります。
めずらしく頭から尾っぽまで丸ごとのかば焼きが手に入ったので、魚焼きグリルでじっくりと温めて、うな丼の準備をしていました。猫たちはソワソワ。ディーナも虎視眈々と、何かかっぱらえないかと狙っています。
まな板の上で、頭と尾を落とし、盛り付けていたところ、ディーナが「たん!」と作業台に上がり、ウナギの頭をくわえて逃げました。
「あっ、こら!ディーナ!」
次の瞬間。
「ギャァッ!」
不用意にがっつりと歯を立てたものの、ウナギの頭はアツアツだったのです。ディーナにしてみたら反撃されたとでも思ったのでしょう。床に降りるやウナギを吐き出し、パンパンパンッとものすごい猫パンチの連打。
「うぅぅ~っ!」
(ウナギのくせに!生意気!!)
怒りに任せてどつき回すもんだから、床はタレでべたべたです。
おかしいやら困ったやら。とにかくディーナをつかまえて脚をふいてやり、ウナギの頭にはゴミ箱へ行ってもらいました。
脱走!ノラボスに説得されて戻る
怖がりのくせに、外への好奇心は人一倍でした。初めて脱走したときは、近所のノラボスに説得されて帰還しました。
いつも家の外の路地で会う、顔の大きな、ハチワレキジトラのオス猫がいました。近所の人が「くぅちゃん」と呼ぶので私もそう呼んでいました。耳がカットされていて、近所で可愛がられている地域猫でした。
ディーナが脱走した翌朝。徹夜で探しても出てきません。鈴の音がするし、気配もあるので家の周囲にいることは間違いないのに…。
ふと、玄関外でくぅちゃんに会いました。
「ねえ、くぅちゃん。うちのディーナ見かけたら伝えておいて。お父さんもお母さんも心配して待ってるよ、って」
お願いね、と頭をなでて別れた、その日の夜。
「うゎぅぅぅ~っ! しゃーっっ!!」
外からディーナの声がします。そっと見ると、庭石の上にくぅちゃんがゆったりと座り、その前でディーナがしっぽを太くして怒っています。
くぅちゃんは何か小さな声で話しかけています。優しい声が聞こえてきますが、ディーナはぷんすか、怒るばかり。
(脱走したんだって?お母さんが心配してたよ)
「うぎゃぅぅぅ~ぅ!」
(そう怒るなって。この辺は車も多いし危ないよ。お家へお帰りよ)
カラカラ…とベランダのサッシを開けて、ディーナに呼びかけました。
「ディーナ。おいで。帰っておいで」
くぅちゃんがちょい、とディーナに前脚を差し出しました。ディーナは攻撃されるとでも勘違いしたのでしょうか。ぎゃっ!と飛び上がって、一目散に部屋の中へ…。
後日、くぅちゃんに会ったときには、ちょっといいカリカリをお礼に差し上げました。そのくぅちゃんも、数年後には老猫に。近所のどなたかが引き取って、家猫にしたと聞きました。
くぅちゃん。その節はありがとうね。
おかげでディーナ、その後しばらくは脱走しませんでした。
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