怖がりで怒りんぼうな猫「ディーナ」 ウナギの頭に猫パンチ

寝るときはいつも手足を投げ出して「伸びーっ」。本当に天真爛漫な小娘でした
寝るときはいつも手足を投げ出して「伸びーっ」。本当に天真爛漫な小娘でした

 ペットショップで「売れ残り」扱いされていたディーナ。今から20数年前のことでした。数々の暴れん坊伝説を残した小娘のエピソードです。

(末尾に写真特集があります)

自転車にも「シャーッ!」

 このまま私たちが知らん顔したら、この子はどうなっちゃうんだろう…。そんな思いで、某地方都市のデパートのペットショップから彼女を迎えました。我が家に来た時点で妊娠していたというびっくりなニュースとともに家族の一員になったディーナ。

 とにかく気の強いお嬢さんでした。そして、その怒りんぼうぶりも、よくよく見ていると、根底に「怖がり」が潜んでいることに気づきます。そう、ディーナが怒るときは「怖いとき」。

同じアビシニアンのアーサー兄ちゃんが大好き。いつもそばにいました(右がディーナ、左がアーサー、奥にいるアメショがクリスです)
同じアビシニアンのアーサー兄ちゃんが大好き。いつもそばにいました(右がディーナ、左がアーサー、奥にいるアメショがクリスです)

 ケージに入れて、車で獣医さんへ向かう途中。信号待ちをしていると、傍らを自転車が通り過ぎました。

「シャーッ!」
(動いてんじゃないわよ!怖いじゃないのっ!)

 なぜかチェーンのラーメン屋さんのそばを通りがかると、決まってうなります。

「うぅぅ~っ!」
(看板が赤いのよ!気に入らないのよ!)

(犬や猫の色覚では赤は認知しないと言われています。上のカッコ内は飼い主の勝手な解釈です)

ウナギの頭に猫パンチ連打

 ウナギの頭と大喧嘩したこともあります。

 めずらしく頭から尾っぽまで丸ごとのかば焼きが手に入ったので、魚焼きグリルでじっくりと温めて、うな丼の準備をしていました。猫たちはソワソワ。ディーナも虎視眈々と、何かかっぱらえないかと狙っています。

テーブルの上だろうとどこだろうと、気が向けば「ごろん」。「なぁにお母さん。まさかどけっていうんじゃないでしょうね?」
テーブルの上だろうとどこだろうと、気が向けば「ごろん」。「なぁにお母さん。まさかどけっていうんじゃないでしょうね?」

 まな板の上で、頭と尾を落とし、盛り付けていたところ、ディーナが「たん!」と作業台に上がり、ウナギの頭をくわえて逃げました。

「あっ、こら!ディーナ!」

 次の瞬間。

「ギャァッ!」

 不用意にがっつりと歯を立てたものの、ウナギの頭はアツアツだったのです。ディーナにしてみたら反撃されたとでも思ったのでしょう。床に降りるやウナギを吐き出し、パンパンパンッとものすごい猫パンチの連打。

「うぅぅ~っ!」
(ウナギのくせに!生意気!!)

 怒りに任せてどつき回すもんだから、床はタレでべたべたです。

 おかしいやら困ったやら。とにかくディーナをつかまえて脚をふいてやり、ウナギの頭にはゴミ箱へ行ってもらいました。

脱走!ノラボスに説得されて戻る

 怖がりのくせに、外への好奇心は人一倍でした。初めて脱走したときは、近所のノラボスに説得されて帰還しました。

 いつも家の外の路地で会う、顔の大きな、ハチワレキジトラのオス猫がいました。近所の人が「くぅちゃん」と呼ぶので私もそう呼んでいました。耳がカットされていて、近所で可愛がられている地域猫でした。

 ディーナが脱走した翌朝。徹夜で探しても出てきません。鈴の音がするし、気配もあるので家の周囲にいることは間違いないのに…。

 ふと、玄関外でくぅちゃんに会いました。

「ねえ、くぅちゃん。うちのディーナ見かけたら伝えておいて。お父さんもお母さんも心配して待ってるよ、って」

 お願いね、と頭をなでて別れた、その日の夜。

我が家に来て間もないころ。若くして妊娠したせいか、小柄な子でした
我が家に来て間もないころ。若くして妊娠したせいか、小柄な子でした

「うゎぅぅぅ~っ! しゃーっっ!!」

 外からディーナの声がします。そっと見ると、庭石の上にくぅちゃんがゆったりと座り、その前でディーナがしっぽを太くして怒っています。

 くぅちゃんは何か小さな声で話しかけています。優しい声が聞こえてきますが、ディーナはぷんすか、怒るばかり。

(脱走したんだって?お母さんが心配してたよ)

「うぎゃぅぅぅ~ぅ!」

(そう怒るなって。この辺は車も多いし危ないよ。お家へお帰りよ)

 カラカラ…とベランダのサッシを開けて、ディーナに呼びかけました。

「ディーナ。おいで。帰っておいで」

 くぅちゃんがちょい、とディーナに前脚を差し出しました。ディーナは攻撃されるとでも勘違いしたのでしょうか。ぎゃっ!と飛び上がって、一目散に部屋の中へ…。

 後日、くぅちゃんに会ったときには、ちょっといいカリカリをお礼に差し上げました。そのくぅちゃんも、数年後には老猫に。近所のどなたかが引き取って、家猫にしたと聞きました。

 くぅちゃん。その節はありがとうね。

 おかげでディーナ、その後しばらくは脱走しませんでした。

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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