ブリーダーから犬33匹保護 命を守るため、動物のプロたち活躍
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。今回は、関西のブリーダー3カ所から33匹の犬がレスキューされる現場のレポートです。ブリーダーとは、犬や猫等のペットの交配や出産、繁殖をし、ペットショップなどに流通させる(もしくは直接飼い主に販売)ことをしている方々です。なぜブリーダーから犬をレスキューしなければいけなかったのか、レスキューはどんなやり方で行われるのか、レスキューされた犬たちはどんな犬たちなのか、をレポートしました。
(末尾に写真特集があります)
レスキュー車の荷台には人気犬種ばかり
レスキューをしたのは、アニドネの支援団体のひとつである一般社団法人アニマルハートレスキュー さんと他協力保護団体さん。33匹のうち20匹はアニマルハートレスキューさんで保護し、13匹は他の団体さんがレスキューしました。
早朝に横浜を出発し関西方面に向かったレスキュー車。昼頃に現地で保護犬を載せるとそのまま横浜へ。なぜなら犬の負担を最小限にしたいから。それでも途中の渋滞もあり、到着予定の18時から1時間おくれの19時に到着しました。
今回保護に乗り出したアニマルハートレスキューの保護シェルターは、運営母体は動物病院です。ですので、待機していたスタッフは、いわば動物のプロ。獣医さんやトリマー、トレーナーさんたちが今か今かと待っていました。
バンの荷台にぎっしりと積まれていたのは、ペットショップでよく見る人気犬種ばかりで、コーギー、チワワ、トイプー、柴、ヨーキー達。荷台から手際よく運び出され、あっという間にシェルター併設のセンター南動物病院のテラスが、大小さまざまなケージでいっぱいになりました。
33匹の犬たち、お疲れ様、無事到着してよかった!ここからのスタッフの活躍ぶりはさすがプロ、でした。
24時までかかって健康診断とシャンプー
アニマルハートレスキューの代表の山本さんに、なぜレスキューをしたのか、を聞いてみました。
「私たちはパピーミルのようなひどいブリーディングをしているブリーダーからのレスキューはしない、と決めています。ブリーダーレスキューと聞くと、多くの方は劣悪な状況から致し方なく保護をしている、と思うことでしょう。しかしすべてのブリーダーがそうではないのです。
ブリーダーの中には高齢化し、後継ぎもいない、行政はブリーダーからの受け入れをしてくれない。それでも犬や猫の命を預かっているという現実問題が目の前にあって、悩んでいるブリーダーも多くいます。そんな自分の置かれた状況を理解し、悩んで、助けを求めてきた人には手を差し伸べて、犬や猫を救いたいという気持ちもあるんです。犬や猫には罪はない。
犬や猫たちの命で商売をしてきたブリーダーを救うという考え方に賛否はあるのかもしれないけれど、アニマルハートレスキューは保護を求める犬猫を選ばないという考え方に変わりはないんです」
山本さん自身も悩みながら、大切な命を守りたい気持ちを優先させ活動をしているのだと感じました。今回のように一気に20頭をレスキューするのは相当な覚悟が必要だともおっしゃっていました。
ケージから出された犬たちは、まずはとシャンプーとブローをしてもらいます。トリミングルームの扉は脱走防止で閉めるため、部屋全体に犬の毛が舞いますが、払う間もなく次々と犬たちをきれいにしていきます。
同時進行で健康診断です。今日のところは簡単なチェックのみ。体重、性別、目や歯、皮膚の状態などを確認していきます。慣れないことで騒ぐのでは!?という予想に反し、犬たちはおとなしくしています。みんな良い子です。シャンプーを嫌がることもなく、静かに受け入れている様子でした。
そして、全頭終了したのはなんと24時。スタッフのみなさま、本当にお疲れさまでした!翌日からはより詳しい健康チェックや治療、避妊去勢手術、人慣れなどの譲渡にむけた準備が始まる、とのことでした。
救助から数日 ぎこちなく甘える犬達
怒濤のレスキューから数日後、再度取材に行きました。その時点で、預かりさん(自宅で保護犬を預かるボランティア)宅にいる犬たちが多かったので、保護施設にいたのは4頭でした。
山本さんいわく「下半身がホッソリしている子たちが多いから、やはりあまり運動はさせてなかったと思う。ただ、人を怖がる様子はないので虐待などはされていないのでは」と。アニドネスタッフも犬たちにごあいさつしました。
確かに、下半身や太ももはほっそりしてます。そして人間に興味はあるのでしょう、近寄ってきます。ですが、甘え方はとても控えめ。どう接していいのか、わからない様子でした。でもしばらく同じ空間にいると、警戒が薄れたようでそっとすり寄ってきて触らせてくれました。
私が飼っている愛犬トゥルー(トイプードル14歳)は、人間に対して恐怖やイヤな思いをしたことがありません。誰に対しても(相手が犬嫌いでなければ)迷うことなく近寄り堂々とコミュニケーションをします。そんな愛犬と比べるとなんと控えめなこと!年齢的にはそう若くはないようです。これまでどのような生活を長くしてきたのか、毎日どんなことを感じ生きてきたのか、いろいろと考えてしまいました。
山本さんによると譲渡に出すまでに半年はかかりそう、とのことでした。環境の変化から下痢をしている子がいたり、お散歩も上手にできない子も多いと。手厚い保護ののち、どうか素敵な家族に譲渡され、第二の犬生を明るく楽しく過ごしてほしい、と心底思った取材でした。
動物福祉のレベル引き上げを目指して
今回、2回目の取材は日曜日だったため、私の息子を連れていきました。小学校2年生になった息子は、生まれたときから犬と育ちました。一人っ子のため犬が兄貴です。犬の兄貴は見事なまでに弟をしつけ、今でも厳格な兄貴っぷりを示します。気軽にさわらないこと、背中を向けたらなでてもいいということ、ママの腕枕は兄貴優先であることなどのルールを教え込みました。
息子は取材した当日、印象的だったのでしょう。日記に「はじめてのしゅざい」と題し、素直な気持ちを書きました。『さんぽをさせてもらってない犬たちなのに、にんげんのことが大すきでよってきました。犬はやさしいなぁとおもいました。』と。脚がほっそりしていてあまり歩かせてもらっていない、という話を聞いて彼なりに思うところがあったようです。
動物福祉を世界トップレベルに引き上げることをミッションとして活動している私たちアニマル・ドネーション。まだまだやらねばならないこと、やれるべきことが山積み、ですね。自分の子供たち世代に、動物が大事にされる国に変わったことを示していかねばならない、と強く思いました。
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