犬つながりの音楽家たち 犬連れライブは優しい音から始まった
公益社団法人アニマル・ドネーション(アニドネ)代表理事の西平衣里です。今回は記念すべき連載12回目、アッという間の1年間「犬や猫のために出来ること」をテーマにつづってまいりました。さて、あなたは大好きな犬や猫のためになにか始めましたか?まだ迷っていますか?少しは、私の連載がお役に立てているとうれしいのですが。
(末尾に写真特集があります)
さて、今回は、犬²楽² presents 『今宵は犬と』をご紹介します。犬好きの音楽家が集まって『犬を愛するひとと、ひとを愛する犬のためのライブ』を開催しました。集った犬たちの多くが大型犬というライブ。ボルゾイやサルーキなど美しい犬達が約20匹以上集まり、すばらしい音楽を楽しみました。
犬想いのアナウンスに心を射抜かれて
初夏の夜、場所は代官山。nego のΣKIYM(エキーム)さんのトークからライブは始まりました。その内容が、私の心を射抜きました。「ライブ中は暗くなるので、床に座っている犬たちのしっぽや脚を踏まないようお気をつけてください。犬たちがトイレに行きたい場合はどうぞ曲の途中でもお外に行ってください。お互いのワンちゃんに触るときは配慮して触りましょう」と。
なんとも犬想いのアナウンスじゃありませんか!主催者の並々ならぬ深い犬愛が会場全体を包み、ライブは始まりました。
犬たちを驚かせないように優しい音から
さらに犬想いは続きます。最初はキーボードのみの優しい音から始まったのです。なぜなら、犬たちを驚かせない配慮から。今回の出演者は、キーボード、シンガー、バイオリニスト、サックスと皆がそろえば迫力のサウンドです。いきなり大きな音ではなく、徐々に犬の耳を鳴らす工夫をドッグトレーナーさんのアドバイスのもと行ってくれたのです。
私は、初めて会う犬達だから多少ガウガウがあったり、音にびっくりしてしまう犬たちもいるであろう、けれどそんなハプニングもみなで楽しめる懐の深いライブに違いない、という想像をしていました。しかし、全くほえ声はなく1曲目が終わり、次は朗読「ダーシェンカへ」。チェコの作家、カレル・チャペックが愛犬への思いをつづった名作「ダーシェンカ」にささげる井上鑑さんが作った詩です。
そのあとは、レッド・ツェッペリンの楽曲である「ブラック・ドッグ」 (Black Dog) 。こちらはタイトルが犬由来。福山雅治さんの楽曲「最愛」を、シンガー・ソングライターのやまがたすみこさんが歌いあげました。会場にいた誰もが、最愛の対象を愛犬に置き換えて聞いていたのではないでしょうか。
ドッグランの出会いから誕生したライブ
実はこのライブ。演者の多くはとあるドッグランに集まるドッグオーナーたち。お互いが音楽に関わる仕事をしていると知らずに、愛犬のパパママとして出会ったそうです。そして、ひょんなことから飼い主同士がお互いの仕事を知り、ならばなにかご一緒にしましょう、と2年越しの計画だったそう。
今回のリーダー井上鑑さん。日本が誇る音楽プロデューサーであり、キーボーディスト、作詞家、作曲家、編曲家です。寺尾聰さんの「ルビーの指環」の編曲、最近では福山雅治さんの楽曲のほとんどを編曲しバンドのキャプテンでもあります。
奥様であるシンガーソングライターのやまがたすみこさんと一緒に、ライブ開始直前にお話を聞きました。
「僕が仕事でよく行くロンドンやアムステルダムは、地下鉄や路面電車にも普通に犬連れが乗っています。日本でもペットを多く見かけるようにはなりましたが、まだ社会的には受け入れられていないと感じますね。進んでいる国との違いは何かというと、犬との対峙の仕方が違う気がします。犬はリーダーである人間にしたがう存在であるものの、一方で人間側は犬を個としても尊重していると感じます。
飼い主も犬も社会に受け入れられるような成熟した社会にしたいと考え、今回のライブを考えたんですよ。犬と好きな音楽を楽しむことは特別のことではない、犬を抱きしめながら一夜を楽しむ、そんな成功事例が作れればと思っています。今後はいい季節に屋外ライブもいいですね。コンスタントに素敵な場を作っていきたいと思っています。」
井上鑑さんとやまがたすみこさんご夫婦。今まで6頭の犬たちと暮らしてきたそう。奥様にもお話を聞きました。
「今日歌うCome Home To me Nowは、一昨年天国に行ってしまったゴールデンのショーンを思い出す歌なんです。私にとって犬はなくてはならない存在です。今日のこの場も犬たちが作ってくれたことだと感じます」
他の出演者の方にもお話をお聞きしました。
今回のまとめ役であるnegoのΣKIYM(エキーム)さん。「ライブ中、犬が落ち着かなくなったらすぐ外に出られる環境で、貸し切りにできる会場を探していたんですよ。仕事で何度かお世話になった代官山のWeekend Garage Tokyo だったら可能じゃないかと考え、今日にいたりました」
ボーカルの田中雪子さん。「どんなところにでも犬と一緒に行きたいんです。だけど日本でそれができないのは飼い主のマナーが出来てない部分もあると思うんですよ。でも、知らないだけで情報を得ればみな変わると思います」
サックスの辻勇大さん。「小学生のころからサルーキと暮らしてきました。サルーキの魅力は周りに左右されない冷静さですね。音楽が好きな方は動物が好きな方が多いですよ。犬からインスピレーションを受け作られた曲も多いと思います」
自分の得意なフィールドでできることを
今回はすばらしい音楽家たちが集まったからこそ、大成功をした犬連れライブだったかもしれません。
そうそう、ガウガウしちゃうのでは、と心配していた犬たちですが、途中井上さんが「えーっと、犬たちいますか?」と会場に投げかけるほど静かでした(信じられない!)。人の感情と同期する唯一の動物と言われている犬。飼い主が大好きな音楽に身をゆだねることが判り、そのキモチは犬たちも安心させたのでしょうね。
大成功のライブ終了後、ΣKIYM(エキーム)さんに話を聞きました。「感動しすぎてうまく言葉に表せない」と一言!私も犬達のハプニングを少し期待していたことをこと申し訳なく思いました。ゲストのひと同様、犬たちも素晴らしいマナーだったのですから。
さぁ、愛する犬や猫のために、あなたは何かできるでしょうか。勤めている会社やお店に募金箱を置くことはすぐできる身近な社会貢献、犬猫の知識を得るためにセミナーに行くことから始めるのもいいですよね。最近は犬猫のためにボランティアを始める方も多いです。ちなみに以前sippoで書いたアニドネボランティアの記事はたくさんのお問い合わせをいただきました。
先日TVで海外の12歳の少年の行動がオバマ大統領に称賛されている映像が流れていました。保護施設にいる犬猫たちのために、自分で蝶ネクタイをつくって贈り続けているのです。それは、蝶ネクタイをつければよりかわいく見えて、早く素敵な家族に出会えるに違いないという少年の優しいキモチからの行動でした。
犬や猫のためにできることは、自分の得意なフィールドで探すとよいと思います。そして、仲間を募りアクションしましょう。周りを巻き込むのもとても大事。素敵なアクションスパイラルがいつしか「私の住む日本は動物に優しい国」と誇れるほどにしたい、できるはず、と思わせてくれたライブでした。
【前の回】保護犬や保護猫という選択 受けとめる勇気と、変化を見守る喜び
【次の回】ブリーダーから犬33匹保護 命を守るため、動物のプロたち活躍
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。