「犬との暮らしは最高だよ」 旅立つ愛犬のために、最後に出来ること
「公益社団法人アニマル・ドネーション」(アニドネ)代表理事の西平衣里です。sippoで過去、介護の様子を紹介していただいた我が愛犬「トゥルー」。昨年末に19歳半年で天国へと旅立ちました。
今回は、トゥルーの最後の時期を改めて振り返りながら、飼い主として準備できることや、シニア犬と過ごす日々の大切さについて共有したいと思います。
階段を下るように、急激に表れた愛犬の変化
トゥルーの場合は、14歳ぐらいから耳が遠くなり、ドアのピンポンで吠えなくなりました。完全に聴力を失ったと思われるのは18歳頃です。ご近所では「奇跡の18歳」と拝まれることもあるほど元気でしたから、老化によるさまざまな変化も、出るのは遅い方だったと思います。それでも、飼い主的には「急に老けた」と落ち込むことが多々ありました。
犬は人間よりもずっと速いスピードで老化が進みます。そこに対して先回りして準備をしておくことが、飼い主として必要だと思いました。
●シグナル
耳が聞こえなくなった場合を想定して別のシグナルを早めにトレーニング。ハンドシグナルは元気なころから習慣に。そして耳も目も機能しなくなることを想定して、身体を触って意思を伝えるシグナルも有効。
●食事
「食べてさえくれれば」と思うことが続くこともあるでしょう。私は強制給餌(きょうせいきゅうじ)まではしたくなかったので、愛犬の胸元を触ると口をあけるシグナルを覚えてもらい、シリコンスプーンで口に入れてあげていました。もちろん、食べるものは愛犬の状態合わせて、常によいものを探しました。
●介護日記
食事・排泄(はいせつ)・水分量・投薬・睡眠時間などを記録しました。そうすると、ちょっとの変化でも気づきやすくなり、原因がわかることもあって、獣医師にも伝えやすくなります。
愛犬のために周囲の力を借りよう
人の言葉はしゃべらない犬。だけど、どんなに認知症が進んでも、彼らには意思があります。トゥルーはそうでした。
もちろん、元気な頃のようなアイコンタクトも、かわいいしっぽ振りもできなくなります。だけど、風や太陽を感じることを好み、飼い主の愛情を求めてくれます。だから、なるべくトゥルーの変化に対応できる飼い主でありたいと思いました。
犬と暮らしはじめるときも勉強することはたくさんありますが、シニア期に改めて学ぶことは本当に多かったです。腰を支える器具や滑り止めシールなどのシニアグッズはまだ早いとためらうこともありましたが、愛犬が楽になるならどんどん導入すべきだと思いました。
●ペットシッター
シニア犬に慣れているシッターさんのサポートは心強かったです。寝かせ方、水を飲ませるときのスポイトの入れ方、おむつの仕方、などなど。
●獣医師
私の場合は恵まれていたのかもしれません。主治医は夜でもLINEで対応してくれる方でした。自宅への往診は心強かったです。愛犬が元気な頃から、自宅からなるべく近くに、信頼できる獣医師さんを見つけておくことをお勧めします。
●頼れる犬友
毎日点滴をするのですが、ワンオペでは無理でした。なので入れ替わり立ち代わり犬友に来てもらいました。本当に助けられました。遠い親戚より近所の犬友、ですね。
思い出をたくさんつくる
愛犬の状態にも寄りますが、可能な限り日常を変えない、というのも大事だと感じました。昨年の夏は暑かったので、大好きな散歩も控え、外に出られませんでした。やっと涼しい秋を迎えても、すでにその時、トゥルーは歩くことはできませんでした。芝生の上におろしても立っているだけ。けれど、彼にとっては大好きな外の芝生。外に行けた日は満足そうに夜もぐっすり寝てくれました。
実は思い出をたくさん作ることは、飼い主のペットロスを軽減することにもつながると感じます。愛犬とできる限り大事な時間を過ごせたことは、自分自身への癒やしになっています。
●写真・動画
常日頃たくさん撮っているかもしれませんが、残していきましょう。
●愛犬グッズ
存在がなくなっても愛犬をずっと感じていたいもの。私はステロイド治療で抜け落ちた毛を残しています。羊毛フェルトに織り込んでもらおうと思っています。
最期をシミュレーションしておく
これは、私が出来なかったことです。年齢から病理検査まではしていないものの、獣医師さんの見立てでは、トゥルーは鼻腔がんでした。それを踏まえ、どのように旅立つ可能性が高いのかを獣医師さんに聞いていました。今思えば、本当に聞いた通りの旅立ちでした。
しかし、どんな状態であっても「まさか今日じゃない」と飼い主は思いたいもので、恥ずかしながら私はトゥルーの最期に大変動揺しました。どんなにシミュレーションをしてもその通りにならないと思いますが、少しでも愛犬が楽になるよう行動するために、あらゆる想定はしておくのがよいと思いました。
●家族と連携
最後の数か月間は介護が続く可能性があります。人間であれば、介護施設やデイケアもあります。救急車も呼べばすぐに来てくれます。ですが犬は、飼い主さんがそのすべての役を担います。私も寝られない日々が続き、体力的には本当につらかったです。かわいい愛犬のため、家族一丸となって愛犬をサポートしましょう。
●夜間病院
かかりつけ医に連絡できない時間帯にその時がきてしまうかもしれません。近所の夜間病院はチェックしておくべきです。
●安楽死
とても難しいですが、安楽死のポリシーを決めておくのがよいでしょう。私は選択できませんでした。今はそれでよかったと思っています。正解はありません。
●お葬式
考えたくもない、と思います。検索することも心がチクリとなりました。私の場合は知り合いがいて、お葬式も大変思い出深い、いいセレモニーとなりました。火葬までの安置をどのようにするのか、もイメージしておきましょう。
そしてまた犬や猫を愛する
「つらすぎて二度と飼えない」とよく聞きます。私もいま、まさにこの心境。過去たくさんの鳥や猫を見送ってきましたが、慣れることなんてなく、ますますつらくなるばかり。
けれど、そのつらさや寂しさを凌駕(りょうが)する幸せが、ペットとの暮らしにはあります。うちの子はかなり認知症も進んでいましたが、それでも懸命に生きようとする愛犬の姿から学ぶことが最後の最後までありました。どんな状態でも自分にできることは頑張ろうとする姿、うれしいことがあれば感謝を伝える姿、いまも全部目に焼き付いています。自分の一生をかけて人に大切なものを教えてくれるのが犬や猫だと思います。
なので、どうか二度と飼わないなんて言わずに、大切な存在を見送った経験者だからこそ、「犬や猫との暮らしは最高だよ」と伝道していってほしいと思います。これは自分にも言い聞かせています。一緒に暮らすことで得られる喜びを、ぜひ次の世代にも伝えていってください。
私の連載は、今回が最後となります。犬猫を深く愛する読者さんがいるsippoさんで、6年以上も書かせていただき感謝しております。記事を読んでくださりありがとうございました。愛犬の旅立ちを経験し、さらに日本の犬猫の状況を良くしていきたいと心から思っています。

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