あえて譲渡されにくい猫を引き取る 保護団体スタッフの選択

 保護団体にはたくさんの子猫がいるが、どうしても「もらわれやすい子」から譲渡先が決まっていく。猫は毛色も違えば、性格も違い、引き取り手がなかなか決まらない猫もいる。スタッフだった女性は、あえてそんな猫を自宅に迎えた。

(末尾に写真特集があります)

 立石さんは当時、保護団体「ARK」のスタッフとして勤務していた。ARKは大阪府能勢市の山の中にある。近くの寮に住み、動物の健康管理を仕事にしていた。

 「いくら山中にあるシェルターといっても、収容できる動物の数には限界があります。誰かが猫を引き取れば、スペースが空くので野良猫や捨て猫を収容することができます。それで子猫を2匹引き取って、育てることにしたんです」

 立石さんが選んだのは、あえて譲渡が決まりにくい2匹だった。

怖がりなゴマくん(上)とイヴちゃん
怖がりなゴマくん(上)とイヴちゃん

譲渡されにくかった理由

 イヴちゃんは三毛のメス。野良猫で生後4カ月の時に捕獲器でARKに保護された。

 イヴちゃんは両目が白濁している。野良猫時代に猫風邪をひいて結膜炎になり、瞬膜(しゅんまく)が出て眼球にかぶさってしまった。目が白濁しているように見えるので、健康上問題がなくても見栄えが良くなく、他の猫に比べてもらわれにくくなるという。

 もう1匹のゴマくんは白黒のオス。やはり野良猫で、6カ月の時、粘着タイプのネズミ取りにひっかかり、自力で脱出したが、毛が抜けてしまっていた。放浪中にARKに保護された。極度の怖がりで、こうした性格の子も譲渡が決まりにくい傾向にあるそうだ。

 立石さんは、その2匹を選んだ。2匹同時に引き取ったのには理由がある。留守番が多い環境の場合、子猫は、遊び相手がいないとストレスがたまる。猫の社会化のためにも、多頭飼いするのが望ましいという。「人が十分に遊んであげられるのならいいのですが、そうでない場合、子猫を飼うなら、多頭飼いするのがおすすめです」という。

怖がりで逃げ腰のイヴちゃん
怖がりで逃げ腰のイヴちゃん

新居で快適な生活

 2匹とも野良猫出身で、怖がりだった。最初はケージ越しに近づいてみたり、ワァーっと叫び合ったり、牽制し合ったりしていたという。立石さんはケージの外に出して、少しずつ距離を近づけるカップリングをしてみた。そのかいあって、やがて2匹はケージがなくても仲良く一緒にいられるようになった。

 猫が3歳になった時に、立石さんは結婚して、新居にやってきた。2匹は最初こそ馴れない環境にとまどい、ベッドの下に潜ってしまったというが、今では2階に専用スペースを設けてもらって自由気ままに暮らしている。

 専用スペースの壁面には猫が乗れる棚が取り付けられていて、上下運動ができるよう配慮されている。それによって尿の病気になりにくいのだという。

 立石さんは元保護犬も飼っており、3匹の世話と子育てに奮闘している。

〈イヴとゴマの出身団体〉
アニマル・レフュージ関西(ARK)
さまざまな理由で保護した犬や猫の心身のケア、社会化トレーニング、里親探しなどを行っています。
住所:〒563-0131 大阪府豊能郡能勢町野間大原595 アニマルレフュージ関西
HP:http://www.arkbark.net/
営業時間:10:00~16:00
Tel:072-737-0712/Fax:072-737-1886
E-mail: ark@arkbark.net
渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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