長寿猫を撮り続けるカメラマン 「高齢な猫にはすごみがある」
15歳以上のご長寿猫を訪ね歩くWeb連載『猫又トリップ』が100回を超えた。撮影・文を担当するのは、カメラマンのケニア・ドイさん(46)。猫の取材にのめり込むきっかけをくれたのは、結婚当時、妻が連れてきた猫たちだった。
「猫又トリップ」は、フェリシモ猫部のサイトで、2015年1月から隔週で連載。毎回、高齢な猫とは思えない美しい写真に、軽妙な文章が付けられている。
「気付けば、この秋に連載が100回を迎え、会った猫が116匹を越えました。最高齢は24歳です。長寿猫たちに会うと、なにが長生きに繋がるか勉強になるし、特に人に換算すると100歳を越えるような猫たちにはすごみがあり、そこから佇まいというか生き方も学ぶんですよね」
連載から一部を抜粋した「ご長寿猫がくれた、しあわせな日々~28の奇跡の物語~」(祥伝社)も書籍化された。「猫カメラマン」のようだが、もともとは人物や風景、料理などの写真を撮ってきた。猫にのめり込むきっかけをくれたのは、妻の“連れ子”の猫2匹だった。
2匹の“連れ子”にゾッコン
ドイさんは12年前、結婚と同時に、奥さんが独身時代から飼っていた猫2匹と同居することになった。
「『ぶんた』と『こじろう』という2匹のオス猫でした。会った時、すでに7~8歳のおとなでしたが、一緒に暮らしてみると、行動やしぐさが面白いし、可愛くて。何より猫ってこんなにも甘えるのかとビックリ。一緒に住み始めた頃から『猫なつくわー』が口癖です(笑)」
猫と暮らし始めると、外の猫も気になるようになった。30代後半から地域猫などの写真を熱心に撮り始めた。猫を撮っていると、餌やりや保護活動をしている女性に話しかけられるようになった。
「ある日、『あなた子猫を飼わない?』と声をかけられて。それが今いる三毛猫の『れい』なんです。『れい』は譲り先から何度か出戻ってきた子で、『それはかわいそう』と妻と相談して、引き取ることにしました」
子猫は落ち着いたおとなの猫と違い、よく動き回った。「こじろう」は10歳以上年下のギャル猫「れい」に寝込みを襲われても、“まあいいや”という感じに優しく受け入れたという。
外の猫にも関心が向く
そんな猫のやりとりを見ていて、ドイさんの胸の中に好奇心がわいた。
「よそのお宅はどうやって猫と暮らしているのかな」「ご長寿猫の暮らしが見ていたい」
そんなことを思い、“15歳以上の猫とひとの暮らし”を探求する連載『猫又トリップ』を始めた。
「妖怪やお化けではなく、長生きして僕ら人間を惑わして欲しいという願いを『猫又』に込めています。長生きの猫の秘訣を探る取材旅行(トリップ)です」
高齢猫の看取りと若い猫
当時、家猫の「こじろう」は16歳だった。仕事で高齢猫に会って“猫道”を学びながら、糖尿病と慢性腎不全を患っていた「こじろう」の介護をした。毎日自宅で2回のインシュリンや輸液を施し、動物病院にも頻繁に通った。
「晩年は世話のかかるじいちゃんみたいでした。でもそんな中で子ども返りをして甘えたりして可愛かったですよ。嫁とふたりで見送りました」
その悲しみを癒やしてくれたのが、三毛猫の「れい」だった。
「『こじろう』を思いながら、『れい』を撫でて、癒やされて、ずいぶん救われました。『れい』は仲間がいなくなったとたんに急にニャーニャーと鳴いて、前以上に甘えん坊になりました。その後、友人が譲渡先を探していた『あお』を迎えたら、『れい』はおねえさんらしくなりましたよ」
そんなふうに猫との出会いや別れを体験しながら、ドイさんは長寿猫の取材に没頭した。
今では「もうすぐ15歳になります」「ドイさんに撮ってもらうため15歳を目指します」と、ご長寿猫を飼う家族からの「予約」の連絡が次々に入る。
すっかり猫の虜になって作品の幅も広がった。これからもご長寿猫の撮影とルポをライフワークにしていくつもりだという。
「取材すると、ご家族が『うちの猫をこんなきれいにとってくれて』と喜んでくれます。ある家では『子どもにかかりきりで猫との時間が持てていなかったことに気づいた、これからもっと大事にする』と仰って、それが嬉しかった。今後、この目で25歳以上の猫に会ってみたいなあ」
今までに3回、外出先で瀕死の野良猫を保護したそうだ。3年前には手に乗るほど小さな茶トラの兄妹を保護し、家で数時間置きに授乳して育て、譲り先に送り出したという。
「みーんな、猫又になるまで長生きしてほしいですね!」
- 「猫又トリップ」(フェリシモ猫部連載)
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