猫だって八つ当たりする?! 原因と無関係な人を攻撃する猫
◆猫は行動のコントロールが苦手
猫は何らかの原因で興奮したとき、原因となる相手ではなく、原因とは無関係な、近くにいる相手に攻撃をしかけることがあります。
たとえば猫同士がけんかしている時に、仲裁にはいった飼い主が攻撃されたり、動物病院で興奮している時に、なだめようとした飼い主が攻撃されることがあります。また窓の外を歩いている野良猫を見て興奮している時に、たまたまそばにいた飼い主が攻撃されたり、大きな物音にびっくりした猫が、そばにいた飼い主に襲いかかることもあります。飼い主が外で他の猫などの匂いをつけて帰って来たことがきっかけになることもあり、時にはその原因となったできごとが何であるかが分からず、理由のない攻撃行動に見えることもあります。
このような猫の行動は我々人間には理解しがたいように思われますが、実際には我々のように理性のある人間でさえ、カーッとなってドアを蹴ったり、イライラしたときに関係のない人に八つ当たりしてしまうことがあります。
自分の行動を制御することが苦手な猫にとって、興奮した気持ちを静めるためのひとつの手段で、「転嫁性攻撃行動」と呼ばれます。
転嫁性攻撃行動では、猫は本気で攻撃をしかけてくるため、けがをする可能性が高く、とても危険です。とにかく猫が落ち着くまでは近づかないことです。どうしても仲裁に入って落ち着かせなければならない場合には、大きめのタオルや布を上からかぶせるなどして、けがをしないよう注意しましょう。
◆猫は何に反応して攻撃している?
多くの場合、この種の攻撃行動はその場限りでおさまりますが、時にはそれが長く尾を引くこともあります。そこで起こったできごとが、ひとつの「事実」として記憶されることによって、持続的な攻撃行動を引き起こしてしまう場合があります。
さらに、そのようなできごとがあった後で、その時と似た状況に直面した時、原因そのものがなくても同じように興奮して攻撃的になる場合もあります。
たとえばバタンと居間のドアが開いた後、犬が入って来たとしましょう。入ってきた犬に驚いた猫が興奮して、そばにいた飼い主を攻撃したとします。この時、バタンと居間のドアが開くことと犬が入ってくることが、猫の頭の中で関連づけされてしまうと、バタンと居間のドアが開くたびに、猫が飼い主を攻撃するようになってしまう、というふうに、原因そのもの(この場合は犬)がなくても、同じような状況(この場合はバタンと居間のドアが開く)に反応してしまうわけです。
このような攻撃行動に関しては、まず猫が反応しているもの(他の猫、攻撃対象となる人、人の動き、服装、音、匂い、場所、状況など)を見つけ、それらに接触しない状況を作ることが大切です。落ち着いてきてから、その状況に少しずつ慣らしていく必要がありますが、攻撃行動が重度の場合には、安全のために、まず猫を人が使用していない部屋やケージなどに隔離した方が良いでしょう。猫の不安を取り除くために薬物投与を考慮した方が良い場合もありますので、猫の行動学に詳しい獣医師に相談されるのがおすすめです。
隔離の際に、無理やりケージに入れるのはとても危険なので、お腹をすかせてケージの中に好物のキャットフードなどを入れ、自分で入るのを待つと良いでしょう。ケージは上下運動ができる高さのあるものを選びましょう。ケージの中には猫の生活に必要なものを一式そろえます。トイレは一番下に置き、高い位置に食事や水を置き、寝るスペースも別に作ってあげましょう。ケージ内の掃除は猫をキャリーに入れるなどして移動させてから行うか、二つのケージを組み合わせて一方のケージを掃除する間はもう一方のケージに入れておくと良いでしょう。その際も、好物などを用いて自分から移動するように誘導しましょう。
攻撃的になるような状況が回避できるのであれば回避し続けますが、回避することができないものである場合には、少しずつ好物などの快い刺激と組み合わせて印象を変えていく「行動修正」を実施します。
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