コロナ禍で犬を迎えた方へ 子犬は最初の1年が肝心 問題があるなら専門家に相談を
コロナ禍でペットを飼い始める人が増えたと言われています。外出でストレスを発散しにくい今、家にいるペットに癒しを求める人が増えたのかもしれません。
犬と暮らすことは間違いなく幸せなことです。しかし、時にはとんでもない重荷になってしまうこともあります。当院に問題行動の相談に来られた方には、まずどのような状態を目指すのかを聞き、治療のゴールを設定します。
その際に、ある飼い主さんがおっしゃった言葉を忘れることができません。その方の目指すゴールは「犬を飼う前の平和な生活に戻ること」でした。犬との生活に疲れきっていらっしゃったのです。癒しを求めて飼い始めた犬の存在が重荷になってしまう……とても残念なことですが、現実にはめずらしいことではありません。
脳が柔軟な子犬期に正しく教育することで人間社会に適応
コロナ禍で時間に余裕ができて犬を飼ったものの、「こんなはずじゃなかった」と感じている人も少なからずいるでしょう。そしてその状態がこれから十数年続くとしたらどうでしょうか? 飼い主にとってはもちろんですが、犬にとっても幸せな状態とは言えません。
犬と暮らす前にぜひ知っておいてほしいのですが、犬の脳は生まれつき人間社会で問題なく生活できるようにプログラムされているわけではありません。犬は最古の家畜であり、長い歴史の中で他のどの動物よりも人とうまくコミュニケーションできるように進化してきました。
しかし、それでも犬という動物種が本来持っている行動パターンを捨て去ったわけではありません。子犬の脳はさまざまな種を含んだ栄養豊かな土のようなもので、成長とともに次々にいろんな芽が出て来ます。
成長してほしい芽には水と光を与え、成長してほしくない芽は小さいうちに摘まなければなりません。脳が柔軟な子犬期に正しく教育することで人間社会に適応し、飼い主といい関係を築いて幸せに暮らすことができるように成長するのです。
犬はたった1年で、人で言うなら高校生ぐらいになります。生まれてから高校卒業までの時間がどれほど大切かを考えれば、少なくとも最初の1年は犬としっかり向き合うべきだと理解できると思います。
もちろんその後も時間をかける必要はありますが、最初の1年(特に半年頃まで)は脳が劇的に変化するため、この間しっかり教育すればお互いにストレスなく生活するための土台が出来たことになります。今後十数年間苦労したくなければ、ぜひ子犬の間に時間を使ってほしいと思います。
優位性理論に基づく方法は問題行動を悪化させる危険性が
もし今すでに犬との暮らしに問題を感じているのであれば、できるだけ早い機会に適切な専門家に相談してください。相談する際に、注意してほしいのは「犬の上に立つ」「上下関係を作る」といった優位性理論をもとに話をする人です。いまだに優位性理論に基づいた方法で犬のしつけをしようとする人は、最新の行動学や科学的なトレーニング方法を学んでいないと考えた方がいいでしょう。
現在ではこの優位性理論に基づく方法は副作用が強く攻撃行動などの問題行動を悪化させる危険性が高いことがわかっています。ぜひ正の強化(望ましい行動を褒めたり、報酬と与えることでその行動の頻度を増やす)をメインにした犬のトレーニングを行っている人を探してください。
コロナ禍で成長した犬たちでもっとも心配なのが社会化不足です。犬は子犬期に出会った相手は受け入れることが多く、この際にいろんな人に慣らしておくことで将来、知らない人に吠えたり咬んだりといった問題行動を予防できます。
出来るだけ多くの人から好物をもらったり、楽しく遊ぶなどしていい経験を積ませましょう。見知らぬ人に声をかけるのが気がひけるのであれば、人と会った時に飼い主自ら褒めて好物を与え、知らない人とすれ違うことはいいことだと教えましょう。
また、できるだけいろんな場所に連れ出し、楽しい経験を積みましょう。近くの動物病院などでパピークラスをしているのであればぜひ参加されるといいでしょう(詳しくは公益社団法人日本動物病院協会のサイトへ)。
残念ながら地域によっては、新型コロナウイルス感染予防の観点からパピークラスやしつけ教室を休止しているところもあります。近隣で相談できる場所がない場合にはパピークラスをWebでも実施していますので、お問い合わせください(詳しくはワンちゃんの学校 イン・クローバーへ)。
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