子猫ストレスで、おじいさん猫の心が壊れた? それへの対策は
14年間、わが家で「一人天下」だったオス猫ソマのもとに突然、子猫のジャッキーがやってきました。若くて元気なジャッキーは、老猫ソマを追いかけ回します。最初はかわいがっていたソマもジャッキーから逃げるように。ソマの心は徐々にストレスにむしばまれていきました…。
(末尾に写真特集があります)
2015年8月、自宅近くの道路で救出したオスの赤ちゃん猫ジャッキー。結局、うちで飼うことにした。
だが、わが家にはすでに先住猫のソマ(ソマリ)がいた。最初は2匹を引き離そうと、ジャッキーをケージの中に「隔離」したが、いつまでもそうするわけにいかず、徐々に対面させて慣らしていくことにした。
ジャッキーは、ソマを親と勘違いしているのか、行くところ、行くところ、あとをついてまわる。ご飯の時、寝る時、時にはトイレにも。まるで孫がおじいちゃんにくっついてまわるように……。小さいジャッキーは、ただぬくもりがほしかっただけなのかもしれない。
最初はソマも、ジャッキーを疎ましく思いながらも「祖父心」が芽生えたのか、それなりに可愛がっていた。しかし、ジャッキーが成長して体力がついてくると、じゃれる相手から、いつしか「兄弟げんか」の相手となった。
子猫にとって、じゃれて遊ぶこともけんかをすることも、「社会性」を身につける大事なこと。じゃれることは獲物を狩るための初歩的な技術の練習。兄弟げんかは自分がかまれた時の痛みや、どれぐらいの強さでかめば相手に痛みやダメージを与えるかを学ぶ機会だ、と知り合いの獣医師に聞いた。
その兄の役目を老猫ソマが担うには、負担が大きすぎる。おじいさんソマはジャッキーから逃げ回るばかりになった。
◆鼻が傷だらけになっても攻撃
あっという間に赤ちゃんから「少年」に成長したジャッキーは、高齢でやせているソマの体を容赦なくガブリ!「ギャー!」。
しばらくすると、また「ギャー!」。あれ? 違う声の悲鳴だ。
やさしいソマも、しつこいジャッキーに堪忍袋の緒が切れたようだ。ついに反撃に転じたのだ。鼻をガブリ、ガジガジ~~! さすが、亀の甲より年の功。
鼻が傷だらけになったジャッキーの顔は痛々しく、日に日に鼻のまわりがピンクに腫れてきた。それでもジャッキーの攻撃は止まらなかった。
ジャッキー登場から1カ月ほどたったある日、ソマについに「異変」が起きた。飼い始めてから粗相を一度もしたことがなかったのに、トイレ以外のあちこちでオシッコをするようになった。至るところに新聞を敷いたが、イタチごっこ。ソマには申し訳ないけれど、オムツをしてもらうことにした。
猫って尿路結石になるとも聞く。もしかして……?
しかし病院に連れていくと、獣医師から「ストレスが原因です。安定剤を少し出しますが、とにかく慣れさせるか、別々の部屋で飼うかのどちらかしかありません」と言われた。明らかに原因はジャッキーだった。
◆愛情たっぷり、「先住猫ファースト」で
その日から家族総動員でソマに気をつかった。
「ソマ、ソマー♪」「ジャッキー、だめ!」
ソマは王様のように大切に扱われ、今まで以上に可愛がられた。そして大好物の缶詰やおやつをいっぱいもらい、ごきげんに。
特に、4歳ごろからずっとソマがそばにいた長女は、彼の気持ちを第一に考えてくれた。学校から帰ってくると、一番に「ソマー」と呼びかけ、抱きついた。次女も、学校に行く前、必ずソマと一緒にソファに寝転びながら、なでなでした。勉強するときも、ソマを呼び寄せた。家族の声かけと愛情たっぷりのスキンシップで、ソマの心はゆっくりと安心感を取り戻したようだった。
たまたまジャッキーも落ちつき始める時期だったのか、戦いを挑むことも徐々に減り、1カ月ほどでソマはオムツを取ることができた。いつしか、ソマがジャッキーを包み込むようにして2匹で眠る光景もみられるようになった。ソマのストレスが完全になくなったわけではないが、徐々にやわらいできたようで、僕らは少しだけほっとした。
2匹がいっしょに暮らしたのは、ほんの1年ぐらい。ソマの最晩年、若いジャッキーがよりそっていた姿が、家族みんなの心に今も残っている。
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