逃げられないと、猫は捨て身の「攻撃」に出る!
猫はもともと、げっ歯類などの小さな動物を捕らえて食べる肉食動物ですが、猫自身も他の肉食動物に食べられてしまう立場の動物です。そのためとても警戒心が強く臆病です。
恐怖を感じたときに動物がとる行動として3つのFと言われる行動があります。それはFreeze(固まる)、Flight(逃げる)、Fight(戦う)です。危険を感じるとまずは捕食者に見つからないように動きを止めます。我々人間は動かないものでもすぐに見つけることができますが、多くの肉食動物は、(動くものには敏感でも)動かないものを見つけるのは苦手。ですので、動きを止めることで難を逃れようとするのは理にかなっています。
また相手に見つかってしまった場合、逃げることができる距離であれば戦うよりも逃げることを選択します。したがって追いつめることがなければ、通常は攻撃されることはありません。道ばたなどで人に慣れていない野良猫に近づくと一瞬動きが止まり、それ以上近づけば逃げてしまいますね。したがって恐がっている猫に近づいたり、無理に触らなければよいわけです。
それができない場合、つまり猫が隠れたり逃げたりすることができないと感じるほど追い詰められると、攻撃に転じることがあります。まさに「窮鼠(きゅう・そ)猫をかむ」というように、勝ち目がないような相手に対しても攻撃的に向かっていきます。捨て身になって激しく攻撃すると、相手がひるんだ隙に運よく逃げることが出来ることもあるからです。
問題は、このような経験をすると、それが成功体験として学習されるため、同じような状況になると隠れたり逃げたりするよりも攻撃することを選ぶようになります。したがって「攻撃するまで猫を追い詰めない」ということが極めて大切です。
しかしながら動物病院ではどうしても必要な検査や処置もあります。猫が動物病院での診察や治療を自分のためだと理解することはできませんし、動物病院では逃げることも隠れることもできない状況なので、攻撃的になるのはある意味無理もないと言えます。これを回避するために、私たちはできるだけストレスの少ない診察を心がけています。
なるべく、「隠れている」という安心感を持たせるためにバスタオルなどで覆ってから、そっと熱を計ったりやさしく体を触ったりするようにしています。幸い、多くの猫は診察の間、緊張してもパニックになるよりむしろ固まって動かない場合が多いのです。それでも猫が追い詰められたと感じるとパニックになることもあるため、少しでもストレスを減らす工夫が必要です。そのためには、動物病院に来た時だけの工夫では限界があります。
第51回 こねこ塾で伝えたいこと⑪(猫の「通院ストレス」、少しでも減らしてリラックスさせる方法は?)を参考に、飼い主さんも協力していただければありがたいと思います。
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