ふるさと納税を活用して資金調達 「犬の殺処分ゼロ」を全国へ

災害救助犬・夢之丞も出席した東京での記者会見。右端がトラストバンクの須永珠代社長、左端は神石高原町まちづくり推進課の小坂依文課長
災害救助犬・夢之丞も出席した東京での記者会見。右端がトラストバンクの須永珠代社長、左端は神石高原町まちづくり推進課の小坂依文課長

 広島県で犬の「殺処分ゼロ」を実現するため、すべての処分対象犬の引き取りを4月に始めてから、半年が過ぎた。この間、広島県神石高原町にあるピースワンコ・ジャパンの保護施設で受け入れた犬は361頭。昨年度の県内の殺処分数は792頭で、それより大幅に引き取りが減ることを期待していたが、残念ながらペースはほとんど変わらない。


 現在、施設で暮らす保護犬は500頭以上。殺処分ゼロを維持するのは、決して生易しいことではない。


 そんななか、私たちは、一つの県での成果(まだ出始めたばかりだが)で歩みを止めることなく、全国での殺処分ゼロの実現に向けていよいよ踏み出すことを、10月4日に記者会見で宣言した。また、そのために、ふるさと納税の最大のポータルサイト「ふるさとチョイス」を通じて1年間で10億円の資金調達を目指すことも表明した。


 10億円という大きな目標額を掲げて支援を募るのは、ふるさとチョイスでも初めてのこと。運営会社であるトラストバンクの須永珠代社長も登壇し、「殺処分ゼロへの大きな流れを作っているのが、ピースワンコと神石高原町。その活動を応援していきたい」とエールを送ってくれた。

 

ふるさとチョイスのキャンペーンページのバナー
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 私は会見で、広島でのこれまでの取り組みを簡単に紹介し、今後の重点課題として①首都圏などで譲渡センターを増やすこと②各地域で保護シェルターを建設したり改良したりすること③殺処分ゼロに取り組む人材の育成を挙げた。


 特に強調したのは、この活動にフレッシュな人や組織を巻き込んでいく仕組みづくりの大切さだ。たとえば、各地で奮闘している保護団体と共同事業を組んでその資金を提供したり、ピースワンコで育てた人材群に「のれん分け」して起業を促したりする。ソーシャルビジネスとして殺処分ゼロに挑戦しやすい環境を整えることで、多くの主体が参入してうねりを生み出し、保護犬や保護猫の新しい「流通」をつくっていけると考えている。


 5日、ふるさとチョイスでの新たなキャンペーン「広島から全国へ!殺処分ゼロにご支援を」がスタート。さっそくたくさんの方が支援に参加してくださっている。制度上、サイトを通じて寄付されたお金はいったん神石高原町に入るが、町の条例により、その95%がピースウィンズ・ジャパンへの交付金となる。


 ふるさと納税による昨年の寄付額の実績は1653億円で、須永さんによれば、想定される市場規模のまだ1割にも満たないという。お礼の品に注目が集まり、自治体間の競争の過熱が批判されることもあるが、社会的な目的をきちんと掲げて支援を募れば、まだまだ伸びる余地は大きい。1年間のキャンペーンで、その可能性にも挑戦していきたいと思う。

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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